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また罪悪感…ストレスで「暴飲暴食」、なぜしてしまう? やめる方法は?

「ストレスがたまるとつい、暴飲暴食してしまう」という人がいます。こうした行動はなぜ起きるのでしょうか。精神科専門医に聞きました。

ストレスで暴飲暴食、なぜ?
ストレスで暴飲暴食、なぜ?

「ストレスがたまるとつい、暴飲暴食してしまう」「仕事でイライラした日は、どか食いしたい衝動に駆られる」。こうした行動に心当たりがある人もいるのではないでしょうか。ストレスの発散方法は人によってさまざまですが、中には食べる量が大幅に増えたり、空腹でないのに何かを食べたい気持ちを抑えられなくなったりする人もいます。

 ネット上では「私もこのタイプ」「むしゃくしゃしているときに暴飲暴食すると気持ちが晴れる」と共感の声が上がる一方で、「イライラするたびに過食する自分が心配」「暴飲暴食をした後、罪悪感を覚えることがある」「やめる方法があるなら知りたい」など、つい食べることに走ってしまう自分を変えたいと考える人も少なくないようです。

 ストレスを感じたとき、暴飲暴食をしてしまうことがあるのはなぜでしょうか。精神科専門医の田中伸一郎さんに聞きました。

自律神経系のバランス取るため?

Q.そもそも、ストレスとは何ですか。また、一般的に人がストレスを感じているとき、どのような精神状態なのですか。

田中さん「ストレスとは、心身に影響を及ぼす『ストレッサー』によって引き起こされるものです。ストレッサーには、外からの刺激である『外部のストレッサー』と体の内側からの『内部のストレッサー』があります。

外部のストレッサーは寒さや暑さ、低気圧、季節の変わり目などの自然現象のほか、能力と仕事のミスマッチ、相性の悪い人との人間関係といったものです。内部のストレッサーには睡眠不足、空腹による低血糖と脱水、慢性疲労、生理前、持病の悪化といったものがあります。

人がこのようなストレッサーを受けると心身にさまざまなストレス反応を引き起こし、『どうにか対処しよう』『何とかして対処しなければ』という精神的なアイドリング状態が出現します。このとき、人間の活動時に働く交感神経が活発化し、イライラすることがあります」

Q.ストレスを感じたとき、暴飲暴食をしてしまうことがあるのはなぜですか。

田中さん「先述の通り、人はストレスを感じると『何とか対処しよう』というアイドリング状態に入り、交感神経が活発化します。このとき、イライラした攻撃的な気持ちを『あまりかまずに食べ物を飲み込む』ことで解消しようとするのだと考えられます。実際、食べ物が口から胃に入ると、唾液と胃酸を出すために副交感神経が活性化します。それによって自律神経系がバランスを取り、ストレス反応を解消しようとしているとも考えられます」

Q.ストレスによる暴飲暴食をしやすいのはどんな人ですか。

田中さん「ストレスを感じたとき、どのような対処行動を起こすかは人それぞれだと思いますが、暴飲暴食をしやすい人は愛煙家や大酒家と同じで、無意識のうちに口に物を持っていきやすいタイプの人に多いかもしれません。また、飲食物が手に入れやすかったり、周囲の干渉がなく自由に好きなだけ飲食ができたりするなど、その人の置かれた環境に問題がある可能性もあるでしょう」

Q.ストレスで暴飲暴食をしてしまう人の中には「暴飲暴食をした後、罪悪感を覚えることがある」という人もいるようです。このときの精神状態はどのようなものだと考えられますか。

田中さん「暴飲暴食をすると胃の中で消化が始まり、副交感神経が活発化した状態に突入します。ストレス反応のアイドリング状態から、急激にリラックス状態に変わってしまうため、身体的には虚脱が生じ、精神的には『やめようと思っていたのに、またやってしまった』という罪悪感が生じます。気持ちが行動に追いつけていない状態といってよいかもしれません」

Q.「イライラするたびに過食をしてしまう自分に対して心配になる」「精神的な病気だったらどうしようと思うことがある」という人もいるようですが、ストレスによる暴飲暴食が何らかの病気によるものである可能性もあるのでしょうか。

田中さん「食べたり飲んだりすることによってストレスを発散している人は特段、少ないというわけではありません。コロナ禍の現在は自粛している人が多いとは思いますが、そうした人たちもコロナ以前は職場の人たちと飲み会を開いたり、プライベートで飲みに行ったり、食べ放題の店に出掛けたりしていたのではないでしょうか。たまに、普段よりもたくさん飲み食いするのは自然なことです。

ただ、それが『吐くまで暴飲暴食する』『1人で毎日のように暴飲暴食をしている』という段階にまでなってしまうと、『摂食障害』という心の病気である可能性があります。一つの目安として、飲食を『制御困難(out of control)』だと感じ、日常生活に支障が出るほどになったら危険信号かもしれません」

Q.ストレス・イライラによる暴飲暴食をやめたり、何かを食べたい衝動を抑えたりすることは可能ですか。

田中さん「可能です。答え自体は簡単で、とにかくゆっくりと、よくかんで食べるようにすることです。実際、時間をかけてそしゃくすることによって暴飲暴食を防止できるという研究も報告されています。ただ、『理屈では分かっていても、なかなか実行できない』という人もいるでしょう。その場合、誰かと一緒に食事をするという方法があります。ストッパーとなる『自分以外の誰か』がいれば、暴飲暴食の回数は減ってくるはずです」

Q.ストレスやイライラを感じるたびに暴飲暴食をしてしまう人の中には「つい食べ過ぎてしまって後悔する」「そんな自分が嫌になる」など、自分のそうした思考や行動に悩む人もいるようです。

田中さん「先述した罪悪感もそうですが、暴飲暴食をしてしまったことで自己評価が低下し、その自己評価の低さによって、また暴飲暴食をしてしまう…という悪循環に陥ると深刻な問題となります。

まずは『自分は暴飲暴食をしていて嫌な気持ちになるけど、今はその方法で何とかストレスを発散して、バランスを取っているのかもしれない』と、今の自分を受け止めることから始めましょう。そうした後に他の発散方法を探してみたり、現状を変えるために専門家に相談してみたりするなど次のアクションを起こすとよいでしょう」

(オトナンサー編集部)

田中伸一郎(たなか・しんいちろう)

医師(精神科専門医)・公認心理師

1974年生まれ。東京大学医学部医学科卒業。赤光会斎藤病院、東京大学医学部付属病院精神神経科、杏林大学医学部精神神経科学教室などを経て、現在は、獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科准教授。「誰もがこころの問題を理解し、互いに助け合うことのできる社会づくり」を目指し、精神医療の最前線で老若男女の患者を日々診療しながら、メディアを通じて正しい知識を普及すべく活動の場を広げている。

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