恥ずかしくて言えないけど…大人の「注射嫌い」、どう克服する?
大人でも「注射嫌い」の人はいますが、病気やけがで、注射が必要な機会はいつ訪れてもおかしくありません。どのようにすれば、注射嫌いを克服できるのでしょうか。

病院などで注射の痛みで泣いたり、注射針を刺されることや痛みへの恐怖心から泣いたりしている子どもを見かけることがありますが、大人でも「注射嫌い」の人はいるのではないでしょうか。しかし、病気やけがで注射が必要な機会はいつ訪れてもおかしくありませんし、新型コロナウイルスのワクチン接種など、人生には注射を打つ機会が何度もあります。どのようにすれば、注射嫌いを克服できるのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
注射の目的を意識しよう
Q.薬を体内に入れる方法には、飲用など痛みや恐怖を伴わないやり方もあります。それなのになぜ、痛みや恐怖を伴う注射が使用されるのでしょうか。
市原さん「痛みや苦しさなどの症状をすぐに緩和させる必要があるとき、注射で薬を体内に入れる方法が、薬を飲むよりも早く症状を緩和させられるからです。飲み薬は胃や小腸で溶けた後、小腸の壁から血液中に移行し、肝臓を経由して全身に運ばれます。薬が吸収されてから全身を巡るので、効果が発揮されるまで短くても30分程度と時間がかかります。
しかし、血管内に薬を直接投与する点滴や注射では血流を通じて、薬がすぐに全身を巡るので効果が出るまでに時間がかかりません。つまり、症状が重く、すぐに薬の効果を発揮させたいときは点滴や注射が適しているのです」
Q.ワクチン接種をするときは症状が出ていないにもかかわらず、なぜ、注射をするのでしょうか。
市原さん「ワクチン接種は効果の速効性を求めていませんが、望ましい免疫反応を体の一部分で引き起こしつつも、血管や神経の損傷が少ない体の部位に接種することが望ましいと考えられています。そのため、日本では一般的に、皮下注射でワクチンを接種することが多いのです。
また、すべてのワクチン接種が注射ではありません。例えば、主に乳幼児の胃腸炎を引き起こすロタウイルスに対するワクチンは薬を飲む内服です。結核の発症を予防するBCGワクチンは皮膚にスタンプのように接種する経皮接種、いわゆる、『ハンコ注射』です。これら以外のワクチン接種は注射となります」
Q.恥ずかしくて声には出さないものの、注射嫌いの大人も一定数いると思います。大人が注射を怖がるのはおかしいことなのでしょうか。
市原さん「大人でも注射が苦手な人はいますね。どうしても痛みを伴うことなので、注射を怖がることは大人であっても、決しておかしなことではないと思います。ただし、大人は子どもとは違い、たとえ痛くても我慢することができます。注射の痛みは皮膚に針を刺すときのほんの短い時間であり、そこは大人として毅然(きぜん)と乗り越えてもらうしかないでしょう」
Q.注射嫌いの大人はどのようにすれば、注射嫌いを克服することができますか。
市原さん「注射をする前に、その注射を何のためにするのかと強く意識することが大事です。必要なワクチンを接種する、体調が悪いので検査や治療のために注射する、手術が必要なので点滴や注射をするなど、人によって注射が必要な理由は異なりますが、その必要性の意識が恐怖心を上回るかどうかだと思います。漠然と注射を受けるのではなく、まずは注射の目的を意識する心の準備をしましょう。
また、針や血液を見ること自体が苦手な人もいますが、そういう場合は注射されている箇所を見ないようにした方がよいです。痛みをこらえようと息を止める人がいるようですが、呼吸を止めるのではなく、大きく深呼吸をしている方が痛みの感じ方が軽減されることもあります」
Q.患者側からすると、若い医療関係者よりも中高年の医療関係者の方が経験値も高く、注射もうまいのではないかという勝手な思い込みがあります。正しいでしょうか。誤りでしょうか。
市原さん「注射の技術は経験数に比例することが多いのは事実です。そのため、中高年の医療関係者に注射が上手な人が多い傾向はありますが、一概にそうと決めつけることはできません。若い医療関係者でもとても上手に注射をする人も多いですし、逆に中高年でも注射が苦手な人もいます。見た目や年齢では分からないと考えていいでしょう」
Q.今後の医療現場でも注射はなくなることはないのでしょうか。そうだとすれば、注射嫌いの大人は注射に慣れていくしか方法はないのでしょうか。
市原さん「今後の医療現場でも注射はなくならないと思います。薬を体内に入れる手段として、注射の有効性は高いからです。生涯、一度も病院にかからない人はいないと思います。医療の恩恵を受けるのであれば、慣れていくしかありません」
(オトナンサー編集部)
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