飲食店の「賄い無料」、適切に処理しないと問題になる? 給与として課税対象に…
飲食店の従業員募集で「賄い付き(無料)」と書いてあるものを時々見かけますが、実は「賄い無料」が問題となることがあるようです。弁護士に聞きました。

飲食店の従業員募集で「賄い付き(無料)」と書いてあるのを時々見かけます。「賄い」、つまり、食事がタダならありがたいことだと思いがちですが、実は「賄い無料」が問題となることがあるようです。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
食事代が給料扱い、課税対象に
Q.「賄い付き(無料)」に問題があるというのは事実でしょうか。
牧野さん「税務処理を店側がきちんとしていないと、問題となる場合があります。まず、『賄いが無料』ということは、従業員への給与の一部として賄いを提供していることになり、その場合、賄いに相当する金額が給与の一部として課税対象となります。
フルタイムで働く人など所得税の課税対象となる従業員の場合、所得税をきちんと計算して源泉徴収しておかないと、税務調査が入った際に申告漏れを指摘される可能性があります。仮に『500円×20日×12カ月』の賄いを無料にしていたとすると、12万円の源泉徴収漏れとして、『源泉徴収分+不納付加算税10%』を支払うことになります。
なお、今回の質問は『賄いが無料』という前提ですが、賄いの費用の一部を従業員が負担している場合は課税対象とならないことがあります。所得税法の基本通達の中に『食事の支給による経済的利益はないものとする場合』という項目があり、『従業員が食事(賄い)の金額の50%以上を負担』、かつ『会社または事業主が負担した金額が月3500円以下』の場合、賄いは給与の一部とはみなされないからです。残業や宿直勤務での食事支給も課税対象にはなりません」
Q.食事が給与扱いになるということですが、給与の支払いについての法律と、どのように決められているかを教えてください。
牧野さん「労働基準法24条では、賃金は現金で支払わなければならないという原則が書かれています。現物(会社の商品など)で払ってはいけませんが、労働協約などで定めた場合は、通貨ではなく、現物支給をすることができます。『賄い』も労働協約などで決めておけば、賃金の一部として扱うことができます。ただし、税務処理の必要があるのは先述した通りです」
Q.賄いについて税務上の問題があり、店が申告漏れを指摘された場合、従業員の側も脱税と指摘されて追徴課税を受ける可能性はあるのでしょうか。
牧野さん「従業員の側も、給与の計算が誤っていたことで納税額が誤っていたのであれば、最悪の場合、修正申告をしなければならない可能性はあるでしょう」
Q.「賄い付き(無料)」と募集することに問題はないのでしょうか。
牧野さん「雇用者は募集の際に提示して、従業員と合意した『雇用条件』を守らなければいけません。そのため、『賄い付き(無料)』という条件で募集したのであれば、従業員に負担が発生しない(実質的に無料になる)よう、全ての追加負担は雇用主が負担しなければなりません。
具体的には、先述した『従業員が食事(賄い)の金額の50%以上を負担』、かつ『会社または事業主が負担した金額が月3500円以下』を満たすような賄い制度にして、従業員負担分に相当する額を給与に上乗せして支払うなどの方法です」
なお、国税庁法人課税課の担当者によると「賄い無料」が税務上の問題なく、可能になるケースもあります。1年を通して、その飲食店からの給与のほかに収入がなく、食事(賄い)分も含めた給与総額が103万円以下の場合、所得税が課税されません。学生アルバイトなどで月々の給与(食事分含む)が8万8000円未満の場合、「給与所得の扶養控除等申告書」を勤務先に提出していれば、源泉徴収の対象にはならず、店側は「賄い無料」にできるとのことです。
(オトナンサー編集部)
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