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文字通りの貧血? 「採血」で気分が悪くなったり、倒れたりする理由は?

健康診断や人間ドックでは「血液検査」がつきものですが、その際の採血で気分が悪くなったり、目まいを起こしたりする人がいます。なぜでしょうか。

採血で気分が悪くなるのはなぜ?
採血で気分が悪くなるのはなぜ?

 血液を調べることで、内臓機能の異常やさまざまな病気のリスクを発見できる「血液検査」。健康診断や人間ドックで実施されることも多いですが、検査にあたって採血を行う際、気分が悪くなったり、倒れたりした経験がある人も少なくないようです。

 ネット上では「採血後に目まいが出やすい」「採血の最中にいつも冷や汗が出て、頭がクラっとする」「昔、採血後に気を失って倒れたことがある」などの体験談や、「あの症状は文字通りの『貧血』なのかな?」「気分が悪くなる人とならない人は何が違うの?」「採血後の症状を軽くする方法はあるのかな」といった疑問の声も上がっています。

 採血で気分が悪くなったり、目まいを起こしたりすることがあるのはなぜでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。

脳神経の一つが興奮状態に

Q.そもそも、「血液検査」とはどんな検査ですか。

市原さん「一般的に病院で行われる血液検査では、肝機能や腎機能、中性脂肪、コレステロール、尿酸値、血糖値、貧血の有無、炎症反応、電解質などを調べます。他にも、さまざまなウイルスに対する抗体や抗原、血液型、ホルモン値など、挙げ切れないほどの項目があり、血液からいろんなことが分かります。

採血をする腕は左右どちらでも構いません。人によっては血管が出にくい場合があるので、血管の見えやすい腕で採るのが一般的です。また、採血をするときに『手をグーに』と指示されることがあると思いますが、これは手を握ることで血管がより見えやすくなるためです。頻度としては、特に病気のない人は年1回の健康診断などでの血液検査で十分と考えられます。持病のある人は疾患にもよりますが、1~3カ月ごとに検査をすることが多いです」

Q.一般的に、血液検査に必要な血液の量はどのくらいですか。採血時、血液の量(瓶の数)を見て、「こんなに採るの?」「血がなくならない?」と感じる人もいるようです。

市原さん「『スピッツ』と呼ばれる血液の瓶は何の数値を測るかによって異なり、また、それぞれのスピッツによって必要な血液の量が異なります。例えば、貧血の数値を見る場合は約2ミリリットル、肝機能や腎機能、電解質などを見る場合は約3~5ミリリットルです。この程度の血液量では、体に必要な量の血液がなくなる、つまり、貧血になる可能性はありません」

Q.採血の最中や終了後、「気分が悪くなる」「冷や汗が出る」「頭がクラッとする」「目まいがする」「倒れる(気を失う)」ケースは実際にあるのでしょうか。

市原さん「採血時、こうした症状を引き起こす人は実際にいます。これは『血管迷走神経反射』によるものです。さまざまな臓器に広く分布する脳神経の一つ『迷走神経』が採血によって興奮状態になることで、血圧低下や徐脈(脈が遅くなる不整脈)、気分不良、意識消失などを引き起こします。血管迷走神経反射は特に若い女性に多いことが分かっています。

ちなみに、ふらふらするときに『貧血』と表現することがありますが、この貧血は俗語的に使われている言葉であり、実際は低血圧が原因のことが多く、医学的な貧血(赤血球や、酸素を運ぶヘモグロビンが不足している状態)とは全く異なるものです」

Q.採血時に気分が悪くなるのを防いだり、軽減したりすることはできますか。採血時に気分が悪くなった経験のある人の中には、前日から緊張したり、不安になったりする人もいるようです。

市原さん「不安が強いと血圧や脈拍が低下し、血管迷走神経反射をより起こしやすくなってしまいます。あまり考え過ぎないようにし、なるべくリラックスして臨むようにしましょう。また、血管迷走神経反射を起こしたことのある人は繰り返すことがあります。横になった状態で採血をすると症状が起きにくいので、実際に横になって採血することも多いです。

採血時の症状を完全に防ぐのは難しいのですが、睡眠不足などでも迷走神経反射が起きやすくなる可能性があるので、前日はしっかりと睡眠を取り、体調を万全にして臨みましょう。ちなみに、血管迷走神経反射は採血時以外でも、点滴前の針の挿入時や針を抜くとき、歯医者さんでの治療中における痛みの刺激などがきっかけで起きることがあります」

Q.採血に対して不安を抱きやすい人に向けて、アドバイスなどがあればお願いします。

市原さん「血液検査は何らかの目的があって行われるものです。『健康診断などで自分の健康状態を知りたい』『具合が悪いので、その原因を知りたい』などの思いや目的がある場合、血液検査は避けて通れないので、心配し過ぎずに採血を受けることです。

また、採血前に『自分はいつも(採血を)失敗される』『血管が細いので難しいと思う』『失敗しないでほしい』などと威圧的に言う患者さんも少なくありません。採血を行う看護師や医師も人間なので、そのような言葉によってプレッシャーを感じ、逆に失敗してしまうこともあります。採血に対する希望があれば、穏やかにお伝えいただきたいと思います」

(オトナンサー編集部)

市原由美江(いちはら・ゆみえ)

医師(内科・糖尿病専門医)

横浜鶴ヶ峰病院付属予防医療クリニック副院長。自身が11歳の時に1型糖尿病(年間10万人に約2人が発症)を発症したことをきっかけに糖尿病専門医に。病気のことを周囲に理解してもらえず苦しんだ子ども時代の経験から、1型糖尿病の正しい理解の普及・啓発のために患者会や企業での講演活動を行っている。また、医師と患者両方の立場から患者の気持ちに寄り添い、「病気を個性として前向きに付き合ってほしい」との思いで日々診療している。糖尿病専門医として、患者としての経験から、ダイエットや食事療法、糖質管理などの食に関する知識が豊富。1児の母として子育てをしながら仕事や家事をパワフルにこなしている。オフィシャルブログ(https://ameblo.jp/yumie6822/)。

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