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厚み増す演技 “役者”としての「新しい地図」に寄せられる期待感

「半世界」で変わった稲垣吾郎のイメージ

 最後に稲垣さんについてですが、役者として最大の魅力は独特のミステリアスな雰囲気を持っていて、それが役になると、彼にしかできない役としてリンクする点です。

 稲垣さんにしか出せない空気感があって、それはどこか異世界に住んでいるような感覚を覚えるほどです。それゆえに、市井に溶け込んでいく役は難しいのではないかと、ある作品に出会うまでは感じていました。

 そのイメージがガラッと変わったのが、映画「半世界」(2019年)での演技です。とある地方都市のさらに郊外に住み、父から受け継いだ山中の炭焼き窯で備長炭を製炭することを仕事とする主人公・高村紘を演じています。

 この役では、幼い頃から友人や町の人々との触れ合い、さらに夫婦や親子関係にまつわるあらゆる人間模様が描かれています。その中で、稲垣さんは等身大の人間味あふれる役で市井に溶け込み、見事に演じ切っていました。同作を見て率直に感じたのは、稲垣さんはこういう役もできるのかという驚きです。

 さらに、稲垣さんの最大の魅力が遺憾なく発揮されたのが映画「ばるぼら」(2020年)です。同作では「半世界」とは打って変わって、ミステリアスな往年の天才小説家を演じています。普段の生活の中では何を考えているのかが分からず、異質な空気感をまとっていて、文学小説を映像化した異世界感が見事に体現されていました。

 それらに加えて、徐々に狂気性を増していき、闇落ちしていく姿までもを演じています。同作のポイントは狂気性と美しさの共存であり、どちらかに偏っていると再現性は低くなっていたと思われます。落ちていく人間の姿がここまで美しいと感じたことはまれで、この役は稲垣さんだからこそ体現できたのではと思いました。

 今後はドラマ「きれいのくに」(NHK総合)への出演も予定されている一方、稲垣さんは舞台での活躍も目覚ましいです。今年4月からは「サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-」の上映が決定しており、死刑執行人であるサンソンを演じる予定で、さらなる飛躍が期待されます。

 それぞれの魅力が光り、年を重ねてもチャレンジをし続ける稲垣さん、草なぎさん、香取さん。3人での活動もそれぞれの個人活動も含めて、今後も「新しい地図」の活躍から目が離せません。

(ライター 岡田拓朗)

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岡田拓朗(おかだ・たくろう)

ライター

大手・ベンチャーの人材系企業を経て、フリーランスとして独立。現在は教育業界やエンタメ業界を中心に広報やライターなどさまざまな仕事をしている。映画とドラマが好きで、SNSや音声配信メディアで作品のレビュー・感想も発信中。

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