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精神疾患で休職、教職員が最多に コロナの中、「働き方改革」は進むのか

大学入試改革など、高等教育を中心にしたさまざまな問題について、教育ジャーナリストである筆者が解説します。

「心の病」による先生の休職が最多に…
「心の病」による先生の休職が最多に…

 学校の先生たちの長時間労働が問題化して久しくなりますが、うつ病などの精神疾患のため、公立学校を休職した教職員の人数が2019年度、過去最多となったことが文部科学省の調べで分かりました。背景には何があるのでしょうか。学校でも「働き方改革」が進められていますが、今後、改善は期待できるのでしょうか。

「管理職以外の教諭」「30・40代」に多く

 精神疾患による休職者数・割合は2009年度に5458人、0.59%でピークを迎えた後、減少傾向にありましたが、2016年度を底として再び増加傾向に転じ、2019年度は割合こそ2009年度と同じ0.59%ですが、数は5478人と上回りました。

 割合を詳しく見ると、校種別では、特別支援学校が最も高く0.72%で、次いで小学校0.64%、義務教育学校(小中9年間一貫)0.62%、中学校0.60%、高校0.42%、中等教育学校(中高6年間一貫)0.34%となっており、高校段階より義務教育段階の方が厳しいことがうかがえます。性別では、男性0.54%、女性0.65%と女性の方が高くなっています。職種別では、校長(0.07%)や副校長(0.26%)といった管理職より、教諭等(0.66%)が高くなっています。

 年代別では、30代が0.76%と群を抜き、40代が0.67%と続いています。この年代は中堅になって、主任を任されたり、主幹教諭や指導教諭に昇任したりするなど、ただでさえ負担の増加が避けられません。しかも、2000年前後に採用が極端に抑制された中で教職に就いた人数的に層の薄い世代です。

成否は「働き方改革」に

 文部科学省が2016年度に行った調査で、小学校教員の約3割、中学校教員の約6割が過労死ラインを超えて働いているという、過酷な勤務実態が明らかになりました。10年前の前回調査(2006年度)と比べても深刻化しています。

 この結果が2018年9月に公表されると、「学校の働き方改革」が大きな課題とされ、中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)が2019年1月に答申をまとめました。それを契機に、各都道府県・市区町村の教育委員会で取り組みが進んだはずです。

 しかし、先の精神疾患による休職者数の推移と重ね合わせると、2016年度は「底」に当たります。その後、教職員のメンタルヘルスをめぐる状況はますます悪化していたと見るべきでしょう。改善に向かうには「働き方改革」が劇的に進むことが不可欠です。

新型コロナ対応で勤務環境が悪化

 2020年は、学校も新型コロナウイルス感染症に振り回された年でした。最長3カ月の全国一斉臨時休校があった一方、休校中のオンライン指導や学校再開後の消毒作業など、対応に追われた一年でもありました。

 文科省が昨年12月に公表した調査(2020年9月1日現在)によると、例えば、小学校では休校中の4~5月こそ、時間外勤務が「月45時間以下」の割合が前年同期に比べ30~40%の大幅増となったものの、学校が再開され始めた6月には6%増に縮小し、7月には逆に前年同期より減少しました。コロナ禍への対応で逆に勤務環境が悪化したわけです。

 2021年は東日本大震災から10年を迎えますが、「3・11」を前にして、福島県沖で最大震度6強の地震が発生するなど、日本は自然災害から逃れられません。コロナ禍も含め、危機に際して子どもの心と生活の安定を図るのも学校と教職員の重要な役割です。

 2021年度から、公立小学校の35人学級化が進められる見通しですが、中学校などは置き去りにされたままです。一方、4月から導入される1人1台端末を使った「ハイブリッド」な授業改善に加え、「個別最適」で「協働的」な学び(1月の中教審答申)へのシフトも学校には求められます。

 今後、ますます忙しくなりそうな学校現場は果たして、持続可能なのでしょうか。

(教育ジャーナリスト 渡辺敦司)

渡辺敦司(わたなべ・あつし)

教育ジャーナリスト

1964年、北海道生まれ、横浜国立大学教育学部卒。日本教育新聞記者(旧文部省など担当)を経て1998年より現職。教育専門誌・サイトを中心に取材・執筆多数。

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