低カロリー? 野菜多め? 「ヘルシー」な食品&料理とは結局何なのか
野菜が多く入っていたり、油分が少なかったりする料理や食品を褒めるとき、「ヘルシー」という言葉がよく使われます。「ヘルシー」に明確な定義はあるのでしょうか。

テレビのグルメ番組でリポートをする芸能人が、野菜が多く入っている料理や油分の少ない料理を食べ、「この料理はヘルシーですね」と感想を述べる場面を見たことがある人は多いのではないでしょうか。料理のレシピでも、「簡単ヘルシー晩ご飯」など「ヘルシー」と名付けられた料理名をよく見ます。
ただ、この「ヘルシー」は直訳すると「健康な」という意味ですが、料理や食品について、何をもって「ヘルシー」なのか、明確な定義もなく多用されているように思います。料理や食品について用いられる「ヘルシー」とは何なのでしょうか。料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。
「高脂肪高カロリー」の対極イメージ
Q.料理や食品について、よく、「ヘルシー」という言葉が用いられます。どのようなときに用いられることが多いのですか。
関口さん「一般的には、低カロリーや低脂肪、野菜が多い、塩分控えめ、砂糖控えめといった食品や料理の場合に多く使われています。例えば、『ポテトチップス塩分控えめ』『ビール30%カロリーオフ』『糖分20%控えめジャム』といった感じです。
また、数字や言葉で明確に示してはいないものの、『健康』をイメージさせる食材が使われている食品や、『健康』イメージの食材を使った料理が『ヘルシー』だと表現されることもあります。オートミール食パン、おからビスケット、野菜カレーなどです」
Q.料理や食品について「ヘルシー」という言葉を用いるとき、何らかの定義があるのでしょうか。ある場合、どのような定義でしょうか。
関口さん「特に定義はありません。一般的なイメージとしては、高脂肪高カロリーの料理の対極に『ヘルシー』があるようです。しかし、本来ヘルシーというのは『健康的である』ということで、どの食品がどのような人にとって健康的であるかは人それぞれ全く異なります。
例えば、体脂肪率が高く、生活習慣病のリスクが高い人は高カロリー食のメニューより、低カロリー食の方がヘルシーですが、逆に、風邪で体力を消耗した人や食が細くなった高齢者にとっては、高カロリーのメニューこそがヘルシーなのです」
Q.定義がないにもかかわらず、「ヘルシー」という言葉が多用されている印象です。なぜ、この言葉が多用されるのでしょうか。
関口さん「世の中が全般的に、健康志向になっていることが大きな理由だと思います。現代では、飽食であることが問題であり、高血圧や心臓疾患、脳疾患、がんなどは生活習慣病といわれ、特に食事による影響が大きいことが分かっています。かつては空腹を満たすのがメインの目的だった食事が今や、エネルギーの過剰摂取を控えつつ、健康を維持できるように意識して取るものへと変わっています。その意識が高まるほど、ヘルシー志向が増えていくのではないでしょうか」
Q.結局のところ、「ヘルシー」とは、料理や食品がどのような状態のときに当てはまるのでしょうか。
関口さん「個々の健康維持や増進につながる食べ物や調理法によって、提供される料理ということになります。一般的には、健康維持や増進のためには、3大栄養素である炭水化物、タンパク質、脂質のバランスと6大栄養素であるビタミン、ミネラル、食物繊維が偏りなく取れる食事をいいます。このような栄養素がバランスよく含まれる食事を物差しとして見た場合、その物差しに見合った料理が比較的『ヘルシー』だといえるのではないでしょうか」
Q.「ヘルシー」という言葉が多用される傾向はよいのでしょうか。あるいは改めた方がよいのでしょうか。
関口さん「多用した方がよいと思います。超高齢化社会を迎えようとしている昨今、国は国民医療費の増大を防ぐため、健康維持増進の施策を打ち出しています。健康を維持するためには、健康管理への意識を高め、特に食べる知恵を持つことが大切です。
ヘルシーブームはそのような背景から高まっており、これからますます拡大すると思います。ヘルシーの概念はさまざまですが、あちこちで耳にするヘルシーという言葉によって、自身の食生活の見直しや気付き、意識が高まるきっかけとなればよいのではないでしょうか」
(オトナンサー編集部)
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