そうだったのか! 武田信玄や真田幸村が兵装に「赤」を採用した理由
戦国乱世を駆け抜けた武将たち。彼らが身にまとう兵装もただ漫然と考えられたものではなく、そこには、人の視覚や心理を巧みに利用し、自軍の軍略を有利に運ぶための「カラー戦略」が存在しました。

織田信長、豊臣秀吉、徳川家康――。テレビドラマや映画で描かれる、戦国時代に活躍した武将たちは、身にまとう甲胄(かっちゅう)や武具、のぼり旗などで、自軍の個性や精強さをアピールしていたとされます。乱世を生きた戦国武将たちの間には、戦況を有利に運ぶためのカラー戦略や、それに基づく流行色がありました。オトナンサー編集部では、カラー&イメージコンサルタントの花岡ふみよさんに聞きました。
進出色であり、膨張色でもある「赤」
花岡さんによると、戦国武将に最も人気があったとされる色は「赤」。そして、赤が持つ色彩効果を最大限に活用するための手法に「赤備え(あかぞなえ)」があります。
「赤備えとは、戦国時代の軍団編成における統一色の一つ。戦国時代の戦法は、槍や鉄砲を携えた歩兵の大群による集団戦であったため、戦場での識別性を高める工夫として甲胄や旗指物(はたさしもの)を赤で統一する部隊が存在しました」(花岡さん)
この赤備えを採用した武将として最も有名なのは、「武田の赤備え」と呼ばれ名をはせた武田信玄。ほかにも、2016年のNHK大河ドラマ「真田丸」で注目を集めた真田幸村や、「赤鬼」と呼ばれる部隊を従えた井伊直政も、赤備えを取り入れていたことで知られます。当時、赤の顔料は高価であったため「赤備え=富と権力を持った有力大名が従える精鋭部隊」というイメージが定着していったそうです。
ではなぜ、信玄をはじめとする戦国武将たちは、兵装に赤を採用したのでしょうか。
「当時は『青備え』や『黒備え』などの部隊も存在していました。赤は、前に出ているように見える『進出色』であり、また、実際よりも大きく見せる『膨張色』でもあるため、戦場において青や黒より非常に目立ち、実数以上に多くの軍勢を率いているように見せる効果があったと考えられます。そして、興奮や士気を高めたり、見る者に注意を促したりする心理効果を持つ赤に身を包むことで、軍の精強さを誇示し、敵を威嚇(いかく)する作用も期待されていたでしょう」
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