どんな動画をサイト投稿すると法的責任を問われる? ドラマやゲーム実況も?
趣味で撮影した動画を投稿サイトで公開する人がいますが、中には、問題のある動画も見受けられます。どのような動画が、法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。

新型コロナウイルスの影響で在宅機会が増える中、ネット上で動画投稿サイトを閲覧している人も多いと思います。近年は勉強の解説動画が人気を博していますが、他にも、電車が走る様子を集めた動画や市販のおもちゃ・テレビゲームを使った実況動画など、特定の分野に特化した動画もあります。
このように、多くの人が楽しめる投稿サイトですが、中には「著作権上問題なのでは?」と思われる動画もあります。動画投稿サイトでは、どのような動画が法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。趣味で撮影した動画を投稿する場合の注意点などについて、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。
複製権、公衆送信権の侵害に
Q.そもそも、投稿サイトでどのような動画を公開すると法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。また、広告収入やチャンネルの登録者数を獲得する目的で動画を公開した場合と、そうでない場合で責任に違いはあるのでしょうか。
牧野さん「著作権法で著作物として保護されている動画を権利者の許諾を得ずに投稿サイトで公開すると、営利目的であるかどうかを問わず、複製権(同法21条)、および公衆送信権(23条)の侵害となり、民事裁判では著作権者に対する損害賠償責任が問われ、公開をやめるように差し止め請求を受けることがあります。刑事裁判では10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらが同時に科される可能性があります」
Q.動画投稿サイトでテレビドラマや映画、ニュース番組の動画が公開されているのをよく見かけますが、やはり、法的責任を問われるのでしょうか。また、それらの動画を編集した場合、罪が重くなるのでしょうか。
牧野さん「テレビドラマや映画、ニュース番組の動画は著作権法で著作物として保護されているため、権利者の許諾を得ずにそれらの動画を投稿サイトで公開すると、著作権侵害、および公衆送信権の侵害に該当します。また、動画を部分的に編集したり、音質を変えたりするなど著作物を勝手に改変した場合、同一性保持権(同法20条)や翻案権(同法27条)の侵害に該当します。改変は罪が重くなるわけではなく、侵害する権利の種類が異なるのです」
Q.著名アーティストの曲を流す動画についてはいかがでしょうか。また、著名アーティストの曲を自分で歌ったり、演奏したりした様子を収めた動画を投稿する人もいますが、その場合は法的責任を問われるのでしょうか。
牧野さん「権利者の許諾を得ずに著名アーティストの曲を流す動画(CDやプロモーションビデオなどから音声や画像を使用した場合)については、著作権法で著作物として保護されている楽曲著作物の著作権侵害および公衆送信権の侵害に当たります。
一方、著名アーティストの曲を自分で歌ったり、演奏したりした様子を収めた動画を投稿するケースについては、動画投稿サイトの『YouTube』と日本音楽著作権協会(JASRAC)が楽曲の利用許諾契約を締結しているため、YouTubeにそのような動画を投稿しても法的責任は問われません。また、YouTube以外にもJASRACと利用許諾契約を締結している動画投稿サイトが複数あり、それらのサイトへの投稿についても問題はありません」
Q.鉄道ファンが駅のホームや屋外の線路脇で電車を撮影しているのを見かけます。このように、公共施設やその周辺で撮影した写真や動画を施設側に連絡せずに投稿サイトで公開した場合、法的責任を問われる可能性はありますか。
牧野さん「施設によっては撮影や動画の公開に許可が必要なケースもあり、無断で撮影したり、許可なく動画を公開したりした場合、法的責任を問われることがあります。この場合、基本的には知的財産権の侵害ではなく施設の管理権の侵害に該当し、公共施設の管理者に対する利用規約違反(契約違反)で損害賠償責任に問われる可能性があります。公共施設周辺で撮影したい場合、または、公共施設周辺で撮影した動画、画像を投稿サイトで公開したい場合、事前に施設管理者に許可を取った方がいいでしょう」
Q.市販のおもちゃやテレビゲームの実況動画が投稿されていますが、問題はないのでしょうか。
牧野さん「被写体を撮影・録画する際のいわゆる『写り込み』(被写体以外の意図しない事物が写ること)については、著作権法の『付随対象著作物の利用』(同法30条の2)に該当するため問題ありません。しかし、市販のおもちゃやテレビゲームの実況動画は『写り込み』の範囲を超えており、著作物を対象として撮影・録画すると解釈される場合、複製権の侵害のほか、ネット上で公開すれば、公衆送信権の侵害に該当する可能性があるでしょう。
YouTubeなどでは、動画の再生前や途中に運営側が広告を挿入して著作権者に広告収益を支払うことで、そのまま動画の公開が認められる場合が多くあります。最終的に、著作権侵害を問われるかどうかは権利者側の判断によるでしょう。つまり、広告を挿入する場合に加えて、権利者側が動画の公開を宣伝と捉えて黙認する場合など、著作権侵害を問われないケースもあります」
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