オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

お祭りや花火の後に! 「浴衣」の洗濯方法を徹底解説

夏はお祭りや花火の季節。これらのイベントに欠かせないのが「浴衣」ですが、着た後の浴衣を普段どのようにお手入れしていますか。ここでは、自宅で洗える浴衣とその方法について解説します。

夏のイベントに欠かせない浴衣

洗える浴衣の見分け方と注意点

 お祭りや花火大会など、夏のイベントにぴったりな装いの「浴衣」ですが、皆さんは浴衣を着終わった後、どのようにお手入れをしていますか。自宅で洗濯してよいのか分からず、いつもクリーニングに出している方も多いのではないでしょうか。今回は、自宅で洗える浴衣の見分け方とその洗濯方法について、東京・旗の台にある三共クリーニングの田村嘉浩社長に聞きました。

 まず、手元にある浴衣をどのように洗えばよいのかは、洋服と同じく洗濯表示を見れば分かります。多くの場合、内側に洗濯表示のタグがあるので、まずはタグを確認し、「手洗い」か「洗濯機OK」のマークがあれば自宅で洗濯可能です。

 自宅で浴衣を洗濯する際の基本的な注意点は以下の通りです。

(1)ポリエステル以外の浴衣は色が出やすく、自宅での洗濯には不向きです。洗う場合は手洗いが基本。色移りを防ぐため「1点洗い」が原則です

(2)「黒」「紺」「赤」「緑」「黄色」などの浴衣は、水(お湯)に浸けると色が出るため要注意です

(3)再汚染防止のため、普段よりも高濃度の洗剤(粉石けんがベスト)を使用します。すすぎは3~5回行います

(4)長時間濡れたままにしておくと、柄同士の色が混ざって色移りすることもあるため(=色なき)、十分に脱水します

(5)濡れているうちに手でよく伸ばします

(6)干す時は、袖をしっかり伸ばせる着物用ハンガーを使用し、風通しの良いところに置くか、扇風機を当ててなるべく早く乾燥させます

(7)乾燥しきる前に、平たいアイロン台(マットが硬い方がよい)の上で浴衣をずらしながらアイロンをかけます。着用中クタクタにならないように洗濯のりを効かせます

浴衣の生地を知る

 ひと口に浴衣といっても生地の素材はさまざま。和装である浴衣は、普通の洋服とは異なる特殊な素材でできている場合も多くあります。洗濯表示は生地の性質も考慮されていますが、洗濯表示がない場合や擦れて読めなくなった場合のために、ここでは基本知識を身につけておきましょう。

【絹(シルク):自宅洗い×】 

 絹や羊毛など、動物性繊維で織られた衣類は非常に縮みやすいため、家庭洗いには不向きです。慣れた人であれば手洗いも可能ですが、高級な生地を傷めないためにもクリーニングをオススメします。

【木綿(コットン):自宅洗い△】

 赤ちゃんにも優しい肌触りの木綿は、日本でも古くから親しまれ、着物にも多く使われています。丈夫で洗いやすい素材ですがシワになりやすいため、脱水して水気をよく切った後、手で軽くたたいてシワを伸ばしてから干しましょう。木綿の浴衣は白地に藍染めが基本で色が出やすいため、白が多い浴衣以外、自宅での洗濯はオススメできません。

【麻(リネン):自宅洗い△】 

 薄く風通しの良い麻も伝統的な浴衣の素材の一つ。速乾性に優れ、洗濯はしやすいですが、こちらもシワになりやすく、生地が毛羽立ちやすいため要注意です。手洗いする際は生地をこすらず、繊維に沿って押し出すように洗います。色も出やすいため注意しましょう。ただし、高価な物も多くクリーニングに出すのが無難です。

【ポリエステル:自宅洗い◎】

 シワになりにくく、吸湿性にも優れたポリエステルは着心地が良く、若い世代でも気軽に着られる浴衣として人気です。乾きやすい素材であるため、手洗いはもちろん、洗濯機でも洗うことができます。アイロンがけも楽です。

【レーヨン:自宅洗い×】 

 光沢があり、おしゃれな印象の強いレーヨンは、ちりめんなど特殊な仕様の浴衣に使われていることもよくあります。色落ちしやすく縮みやすいため水洗い不可。自宅で洗濯せずクリーニングに出しましょう。

【デニム:自宅洗い△】 

 男性用の浴衣や甚平に多く使われているデニム。耐久性が高く楽に洗える素材ですが、初めて洗う場合、色落ちのことを考えると高濃度の粉石けんを溶かした温水で手洗いするのが無難です。すすぎと脱水をしっかりと行い、縮んだ生地を伸ばした上で、色落ちを防ぐために陰干しにします。

手洗いと洗濯機洗いの方法

 ここでは、自宅で浴衣を洗濯する方法について、手洗いと洗濯機に分けてご紹介します。自宅で洗えることを確認したらまずは下準備をしましょう。

【下準備】 

(1)浴衣に汚れがないか確認します。汚れがある場合、乾いた布でふき取ったり、部分洗いをしたりして汚れを取り除きます

(2)湿気や臭いを取るために、ひと晩陰干ししておきます。襟に芯が入っている場合は取り除いて個別に洗います

(3)襟が型崩れしないように、木綿糸でざっくりと縫って襟を仕付けます

(4)浴衣の袖と袖を合わせ「袖畳み」にします

(5)浴衣を畳んだまま洗濯ネットに入れます。浴衣に対して洗濯ネットが大きすぎると洗う際にネットの中で浴衣がずれてしまうため、畳んだ浴衣のサイズに合ったネットを選びます

【手洗いの場合】

(6)大きなたらいに水またはお湯を張り、高濃度のアルカリ粉せっけんを適量入れます。それぞれの素材に適した液温があるので、洗濯表示に従って温度調整しましょう。1点洗いが基本

(7)軽く押すようにしながら浴衣を洗い、表を洗い終わったらネットを裏にして反対側も洗います

(8)洗剤が落ちるまでよくすすぎます

(9)バスタオルで押し付けるようにして水分をよく取ります。洗濯機の脱水機能を使う場合、型崩れを防ぐために脱水時間を1分以内に設定しましょう

【洗濯機の場合】

(6)アルカリ粉石けんを入れ「手洗いコース」で洗います

取り扱い注意の場合

 なお、自宅洗いできる生地であっても以下の場合は取り扱い注意です。不安であれば、無理に自分で洗わずクリーニングに出しましょう。

※藍染めや絞り染めなど

 藍染めは手洗いが適していますが色落ちが激しい場合、自宅で洗うと浴衣自体がダメになってしまう恐れがあるため、クリーニングに出すのが無難です。濡れた白いタオルで染めてある部分を軽くたたき、どの程度色落ちするかをあらかじめ確認しましょう。絞り染めの場合、絞りが取れると復元不可能であり、クリーニング店に相談すべきです。

※ラメが施されている

 最近では、若い女性向けの、一部ラメ加工が施された浴衣が人気です。ラメは洗うと簡単に落ち、ほかの洗濯物に付着してしまうため、洗濯機の場合は単独で洗うことをオススメします。

浴衣の干し方と保管方法

【干す】

 手洗い、もしくは洗濯機の脱水が終わったら、シワにならないようになるべく早く浴衣を干します。袖の部分が垂れ下がると型崩れの原因になるため、干す際は着物用ハンガーを使用するか、物干し竿に袖を通して干しましょう。場所は、洗濯表示の干し方のマークを確認し、日なた、または風通しの良い日陰で。日なたで干す場合、色あせを防ぐために裏返すのがベターです。乾いたら襟の仕付け糸を取ります。

【保管する】

 乾燥しきる前にアイロンをかけます。洗濯表示のアイロンのマークを確認し、適切な温度に調整してください(部位や素材によっては当て布が必要)。浴衣に湿気がないことを確認したら「本畳み」にします。畳んだ浴衣を畳紙(たとうがみ)で包み、防虫剤と共にタンスへ。なお、畳紙は呉服屋のほか、通販や100円ショップでも販売されています。長い間保管してカビや黄色い輪シミが出てきている畳紙は、それに保管するとカビ発生の原因になるため、新しいものに取り替えましょう。

小物のお手入れと保管方法

 浴衣を着る際には、肌着などのインナーや帯といった小物も欠かせません。浴衣本体だけでなく、小物もしっかり手入れして保管しておけば、買い替えることなく来シーズンも使えます。

【肌襦袢(はだじゅばん)】

 汗を吸い取り、シルエットをきれいに見せてくれる肌着は、上半身は綿、下半身は化学繊維でできていることが多いです。絹以外の素材であれば洗濯機で洗濯が可能。アイロンがけは、きれいにした床に平らなアイロン台を置き、その上でずらしながら行います。

【帯】 

 浴衣と一緒に洗える帯も売られていますが、帯は基本的に洗えません。着用後は乾いた布で汚れやホコリを軽く落としてから陰干しにし、当て布をしてアイロンをかけてから、軽く巻くか、大きめに畳んで浴衣と一緒にしまいます。

【足袋(たび)】

 通常、浴衣を着る際には足袋を履きませんが、着物風に改まって浴衣を着る場合は足袋を着用することもあります。最近では、おしゃれのワンポイントとしてレース地の足袋を履く場合も。

 足袋は汚れが落ちにくく、また生地が縮みやすいため、手洗いの方が適しています。洗濯用の固形石けんとシューズ用ブラシ(または歯ブラシ)を使い、汚れを直接こすりながら洗いましょう。汚れが落ちにくい場合は重曹や漂白剤を使うとよいです。なお、木綿の足袋はアイロンがけが難しいため、化学製品のものがオススメ。

【下駄】

 乾いた布で汚れをふき取ってから、風通しの良い場所にひと晩置いて湿気を取り、乾燥剤と一緒に箱で保管してください。鼻緒の根本部分に汚れがこびりついている場合、軽く湿らせてから歯ブラシなどで優しくこすると汚れが落ちやすくなります。

【かごバッグ】

 浴衣によく合うかごバッグも洗うことはできないため、乾いた布で汚れをふき取るだけにします。しまう際は中に詰め物をしておくと、型崩れ防止に。麦わら帽子のような素材は、濡らすと乾いた後に繊維がささくれてしまうこともあるため要注意です。

自分で洗濯すれば愛着も

「年に数回しか着ないからこそ、浴衣は特別感が強いもの。最近は、丈の短いものからドレス風のものまでさまざまなデザインの浴衣が売られています。これから浴衣を買おうと考えている方は、見た目だけでなく洗濯表示にも目を向け、自分で洗えるかどうかという視点から選んでみては。自分で洗濯すれば節約になるだけでなく、より一層愛着が湧きますよ」(田村さん)

(オトナンサー編集部)

田村嘉浩(たむら・よしひろ)

三共クリーニング社長

東京・旗の台で1927年から続く三共クリーニングの3代目社長として、テレビや雑誌など各種メディアで活躍する。クリーニング技術を研究する、NPO法人「日本繊維商品めんてなんす研究会」事務局長も務める。お客さまのファッションケアに関する難問を解決するため、洗濯・クリーニングに関する相談などを受け付け、広くクリーニング技術の啓蒙に力を注いでいる。三共クリーニング(http://www.sankyo-c.com/)。

コメント