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理科の「pH」の読み方、「ペーハー」か「ピーエイチ」かで世代が分かるって本当?

水溶液が酸性かアルカリ性か、その程度を示す「pH」について、「ペーハー」と読むか、「ピーエイチ」と読むかで「その人の世代が分かる」と話題になっています。本当でしょうか。

「pH」は「ペーハー」? 「ピーエイチ」?
「pH」は「ペーハー」? 「ピーエイチ」?

 中学校の理科や高校の化学の時間に「pH」という用語を習った記憶がある人は多いと思います。水溶液が酸性かアルカリ性か、その程度を示す数値ですが、この「pH」を「ペーハー」と読むか、「ピーエイチ」と読むかで「その人の世代が分かる」とネット上で話題になっています。「昭和世代はペーハー、平成世代はピーエイチ」という声も。本当か調べてみました。

1970年代は「ペーハー」優勢?

「pH」は「水素イオン指数」ともいい、0~14で表します。0~7未満が酸性で、7が中性、7より大きい数字はアルカリ性を示します(家庭用洗剤などの表示ルールでは、6~8が中性)。まず、学校で現在、どう教えているかについて、文部科学省初等中等教育局教育課程課の担当者に聞きました。

Q.「pH」の読み方について、現在の学校教育ではどう教えているのでしょうか。

担当者「文科省で出している『学習指導要領』には、中学校理科で『pHについて扱う』旨は書いていますが、読み方には触れていません。ただ、教科書会社各社が出している教科書には『ピーエイチ』、もしくは『ピー・エイチ』と読み方が書いてあります。現行の中学3年生の教科書を調べたところ、すべてそうでした」

Q.公的機関による決まりはあるのでしょうか。

担当者「これは経済産業省の所管になりますが、『計量法』という法律の別表第3というところに片仮名で『ピーエッチ』が書かれています。JIS(日本産業規格)にも『ピーエッチ、またはピーエイチと読む』とあります」

Q.個人的な昔の記憶なのですが、学校で「ペーハー」と習った覚えがあります。なぜ、読み方が変わったのでしょうか。

担当者「文科省の見解としては『学習指導要領には書いていない』としか言えません。ただ、一般社会の流れとしては『pH』はドイツから入ってきたものなので、ドイツ語で『ペーハー』と読んでいたものが、JISや計量法との兼ね合いで『ピーエイチ』に変わってきたのかもしれません。学問の世界では今でも、『ペーハー』と読む人がいると思います」

 ちなみに、JISに英語読みの『ピーエッチ、またはピーエイチ』が登場したのは1958年。すると、かなり昔から、『ピーエイチ』が正式だったことになるのですが…いろいろ情報を探している中で見つけたのが日本語学者、倉島長正さんの著書「正しい日本語101-言葉のセンスを磨く」(PHP文庫)。この本の中に次の記述があります。

「酸性アルカリ性の度合を示すPHはもともとドイツ語読みの『ペーハー』で定着したものであるが、英語化の先取りをしたNHKは、昭和45年に『ピーエイチ』と決めた。これに一般の拒否反応が強かったために翌年には経過措置として『ペーハー』も認めることにしたという」

 昭和45年は西暦1970年です。倉島さんはNHKが「ピーエイチ」とした理由について「国の機関が統一している」ことを同書の中で挙げていますが、JISで「ピーエッチ、またはピーエイチ」と決めてから10年以上たっても、世間では「ペーハー」派が優勢だったようです。

2012年からすべて「ピーエイチ」

pHの読み方の変遷
pHの読み方の変遷

 では、教科書に「ピーエイチ」が登場したのはいつなのでしょうか。図書館で各社の中学理科教科書を調べたところ、2000年ごろまでは「pH」の記述自体ほとんどなく、2001年検定版で「新興出版社啓林館」(大阪市)発行の教科書に、実験器具として「pH(ピーエイチ)計」が登場。同じ年、「大日本図書」(東京都文京区)の教科書にも「pHメーター」が登場しましたが読み方は載っていませんでした。同社の中学理科教科書に読み方が掲載されたのは2005年検定版です。

 2005年には、他に2社が読み方付きで掲載を始め、すべての教科書で「pH=ピーエイチ」がそろったのは2011年検定版(2012年発行、使用開始)のようです。

 大日本図書編集局の中学理科担当者に聞きました。

Q.大日本図書の中学校理科用教科書で「pH」が登場した時期とその理由を教えてください。

担当者「水溶液の酸性とアルカリ性を調べるものとして、1989年改訂検定済みの教科書に『万能pH試験紙』について記載しています。その後、2001年検定の教科書からは『pHメーター』という実験器具を掲載しています。ただし、学習内容としてpHを初めて扱ったのは2011年検定、2012年発行の教科書です。これは、2008年の学習指導要領改訂で、中学校でpHを扱うことになったためです」

Q.「pHメーター」について、2001年版では読み方がなく、2005年版で「ピーエイチ」の読み方が載った理由は。

担当者「当時の担当者がいないため、詳しいことは分かりかねますが、『読み方を示してほしい』との要望があったり、『ルビがあった方がよい』との判断があったりしたものと思われます」

Q.読み方を「ペーハー」ではなく、「ピーエイチ」としたのはなぜでしょうか。

担当者「教科書に掲載する用語の基準となる『学術用語集』(1986年増訂2版)に『pH』の読み方として『pii-eiti』と掲載されているため、『ピーエイチ』としています」

Q. 「pH」はかつては「ペーハー」と呼ばれることが多く、「学校でもペーハーで習った」という記憶がある人がいます。

担当者「一般には、ドイツ語読みの『ペーハー』が広まっていたため、(教科書などに)ルビがついていなかったときは『pH』を『ペーハー』と読んでいたのかもしれません」

 大日本図書の回答にあった「学術用語集」の化学編は1955年初版です。その際は「pH」は記載してありますが読み方は書いてありません。1974年の増訂版から「pii-eiti」という読み方が登場。1986年発行の増訂2版も同様で、この版は大日本図書だけでなく、新興出版社啓林館も表記の基準にしているそうです。

 なお、国語辞典はというと、「広辞苑」(岩波書店)は1955年発行の第1版で「ピーエイチ」と「ペーハー」両方を記載。第2版以降、「ピーエッチ」に表記が変わりますが、「ペーハー」との併存は継続し、説明もほとんど変化していません。ところが、2018年発行の第7版では「ピーエッチ」はそのままですが、「ペーハー」の説明が「水素イオン指数の旧称」となり、ペーハーを「旧称」と位置づけています。

 ここまでに分かったことを時系列でまとめると、表のようになります。「pH」という言葉が日本に入ってきた当時はドイツ語読みの「ペーハー」が主流で、少なくとも1970年代までは優勢だったとみられます。

 その後、2000年代に入り、中学校の一部教科書に実験器具の名称として「ピーエイチ」が登場。2011年には、中学3年用の全教科書に「ピーエイチ」が学習内容として登場し、その教科書の使用が始まった2012年以降に理科を学んだ、現在23歳以下の若者は「ピーエイチ」と習っていることになります。そして、2018年、「ペーハー」は広辞苑によると「旧称」とされ、過去の存在になってしまったようです。

「昭和世代はペーハー、平成世代はピーエイチ」と単純には言えませんが、世代の違いは確かにありました。

(オトナンサー編集部)

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1件のコメント

  1. コロナウイルスの感染力は国家の間、国内でのテロか戦争だと認識してほしい。美容も大事だが、まずは命と健康の維持が緊急要件ですね。この最悪の第三波が襲えば世界経済も人間の生活が崩れるのではないですか?シャツのボタンのかけ方が違うとどうなるのか?軍服ではないから、誰も文句なし、びんたが飛んでくることはないでしょう。