ダウ平均が9日連続最高値 好調な米国株に“死角”はないのか
「○○ショック」で投資家心理一変も
しかし、この両ケースで「ろくな結末」にならなかった原因は、失業率が低水準だったことではなく、それに対応して金融政策が大幅に引き締められたことです。
IT株バブル破裂の直前、FRBは1年間に6回計1.75%の利上げを実施し、政策金利は6.5%まで上がっていました。住宅ブーム崩壊前には、2年間に17回全ての連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定され、政策金利は利上げ前の1%から5.25%に上昇していました。いずれも、インフレ率は2%程度だったので、インフレ分を調整した実質での政策金利はそれぞれ4.5%、3%と大幅なプラスでした。言い換えれば、景気にブレーキをかける強い金融引き締めが行われていたのです。
現在、金融政策は非常に慎重に運営されています。インフレ率は1%台半ば、政策金利は1.0~1.25%で、実質政策金利は小幅マイナスです。前述のように、金融政策見通しは大きく変わりえますが、今のところ景気をオーバーキルするリスクは小さそうです。もちろん、経済ファンダメンタルズの変化よりも先に、投資家心理が一変するケースもありえます。「○○ショック」の類です。投資家が備えていないから発生するショックを事前に想定することは難しいといえます。
ただ、あえて挙げるとすれば、真っ先に頭に浮かぶのはワシントンのゴタゴタでしょう。秋には、予算やデットシーリング(債務上限)に関連して、政府機関の一部閉鎖やデフォルト(債務不履行)が起きる可能性はゼロではありません。難航している税制改革やインフラ投資が白紙となれば投資家心理を冷やしかねず、また、緊張が高まる東アジア情勢の急変などが候補に挙がる可能性もあります。
(株式会社マネースクウェア・ジャパン チーフエコノミスト 西田明弘)
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