「V6」はなぜ、変わらぬメンバーで25年も活動できたのか
ビジネスの現場で組織づくりをする上で、V6の事例が参考になるかもしれません。彼らはなぜ、25年も同じメンバーのまま成長し続けることができたのでしょうか。

男性アイドルグループのV6が結成25周年を迎え、デビュー記念日の11月1日に配信ライブを開催。SMAPの解散、TOKIOの山口達也さんの脱退、NEWSの手越祐也さんらの脱退などジャニーズ事務所の他グループで解散やメンバーの脱退が続く中、デビュー当時のメンバーのまま、目立った不祥事もなく、第一線の人気グループとして25年を迎えたのは偉業といえます。
異なる世代での編成が奏功
企業の組織に置き換えてみると、25年にわたりメンバーが脱落することなく、持続的成長を遂げることは実にまれなことです。多くの企業は組織が停滞しないよう、メンバーを入れ替えたり、組織再編を行ったり、さまざまな手を打ち続けるのが通常ですが、V6はグループを再編することなく、同じメンバーで成長を実現してきたのです。
V6は他のアイドルグループや組織と比べて、何が違うのでしょうか。メンバー一人一人の資質と識見の高さといってしまえばそれまでですが、筆者はV6というチームの属性と組織編成の仕方、メンバーの志向と組織開発の過程に、持続的成長を成し遂げることができた理由があるように思えてなりません。
V6は坂本昌行さん(49)、長野博さん(48)、井ノ原快彦さん(44)からなるユニット「20th Century(トゥエンティース・センチュリー、通称トニセン)」と、森田剛さん(41)、三宅健さん(41)、岡田准一さん(39)によるユニット「Coming Century(カミング・センチュリー、通称カミセン)」とで構成されています。
アイドルグループの打ち出し方として、近い年齢のメンバーでグループを構成して同世代のファンにターゲットを絞る戦略もありますが、V6は異なる世代のメンバーを組み込み、幅広い層にアピールする狙いがあったに違いありません。
それもグループ内にトニセンやカミセンといった2次グループを組み込み、多面性を発揮できる編成にしています。一見、単一の組織の方がパフォーマンスを発揮しやすいと思いがちですが、ファンも多様化し、時代の変化も加速する中では、多面的な組織編成の方が有利で、安定成長に貢献したといえるでしょう。
筆者は企業に対して組織開発のサポートをしていますが、顧客の多様性と加速する環境変化に対応している組織が、構成メンバーの属性が多様で環境変化に柔軟に対応できる組織になっていることに注目しています。V6がトニセンとカミセンという2次グループを組み込んでいることは、この柔軟性を発揮することに役立っているのです。
広い範囲にまたがる専門性
一般的に、企業で多様性のある組織づくりを目指す場合、年齢や価値観などが異なる社員同士が集まるため、人間関係がうまくいかないという問題が発生しがちです。しかし、多様なメンバーが自分とは異なる相手の個性や専門性を尊重し合えるならば、こうした問題は起きにくくなります。
この観点から、V6のメンバーが活躍する領域がそれぞれ、きれいに分かれていることは特筆すべきです。坂本さんはミュージカル、長野さんはグルメ、井ノ原さんはMC、森田さんは舞台、三宅さんは手話、岡田さんは俳優というように広い範囲にまたがっています。
時代の移り変わりとともに、はやり廃りがあるものです。各メンバーがそれぞれ、異なる専門分野を持ち、それも広い範囲に及んでいれば、年を経てトレンドが変わっても、メンバーの誰かがその時々でトップパフォーマンスを発揮できる可能性が高まります。
企業では、同じ専門分野の人たちを集めて、組織づくりをすることがあります。結果として、その専門分野の人たちは近い年齢など同じ属性の人になりがちです。こうした同一属性の専門家集団は短期的にはパフォーマンスを発揮しやすいのですが、中長期的には組織の再編成を余儀なくされます。さまざまな専門を持つ、異なる属性のメンバーで構成されていたからこそ、V6は中長期的に成長できたのです。
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