会社名必要? 個人情報は? 「国勢調査」期間は20日まで、さまざまな疑問を聞いた
「国勢調査」について、「なぜ、会社名を書く必要があるの?」「個人情報の扱いが心配」「謝礼は出ないの?」といった声があります。総務省に取材しました。
5年に1度、日本に住むすべての人を対象に行われる「国勢調査」について、オトナンサーが10月1日に記事を配信した後、ネット上に「なぜ、会社名を書く必要があるの? 業種名でいいのでは」「マイナンバーを勤務先に出してるのに回答の必要ある?」「国は公文書を隠したり、シュレッダーにかけたりする。個人情報の扱いが心配」「お礼をくれるなら喜んで答えるけど…」といった書き込みが相次ぎました。
国勢調査の回答期限は10月7日でしたが、「20日まで延長になった」という報道もあり、調査項目や情報の扱いに関する疑問について、改めて総務省統計局国勢統計課の担当者に聞きました。
業種の正確な把握のため
Q.「20日まで回答期限を延長」との報道がありましたが、その理由を教えてください。
担当者「回答期限を延長したということではなく、元々、国勢調査は9月14日~10月20日を『調査期間』としています。回答期限である『10月7日』までに回答いただけなかった場合、調査員が紙の調査票の回収に伺ったり、回答をお願いするリーフレットなどの投函(とうかん)を行ったりします。その際に、回答がお済みでない皆さんがインターネット回答や郵送提出ができるよう、20日までの調査期間中は回答を受け付けています」
Q.「インターネットでの回答は7日までだったが、20日まで期限延長した」旨をホームページで発表している自治体もあります。元々は7日で締め切る予定だったのではないでしょうか。
担当者「いいえ。当初から、インターネットの回答も20日までの予定でした。『回答期限』を設定しておかないと、仮に回答期間中に調査員が訪問等をするとした場合、『まだ期間があるじゃないか』といったトラブルの原因にもなります。このことから、回答期限を7日とし、その後、調査員がお伺いする方法としています」
Q.国勢調査について、「何の役に立つのか分からない」という声が多く出ています。特に「勤め先の名称」については「業種でよいのでは?」という声が多く上がっています。また、「マンションの階数」も疑問を持つ人が多いようです。
担当者「社会一般で通用している業種名と行政上の産業分類が必ずしも一致していないことがあり、分類を正確に行うため『勤め先の名称』の回答をお願いしています。例えば、街の電気店さんが『電気業』と記入した場合でも、統計上は『小売業』になります。電気業というと、発電事業を行う『東京電力』などになります。『○○電気店』のように名称を記載してもらうことで、分類作業を正確に行うことができます。
『階数』については、例えば、マンションの高層階に多数の高齢世帯が住んでいる場合、災害発生時はエレベーターが止まってしまうため、高齢者の避難対策を定めておく必要があります。国や地方公共団体が防災計画を練る上で、マンションの高層階に住んでいる高齢の世帯がどこにいるかという情報は『どのように避難誘導するか』などの重要な資料となるのです」
Q.ほかに、身近なところで国勢調査の統計が役立っている事例を教えてください。
担当者「日本に住むすべての人と世帯を調査する国勢調査では、都道府県・市区町村別の人口に加え、『●●町●丁目の人口』など詳細な地域別のデータが得られます。国や地方公共団体における行政の運営をはじめ、企業活動などにも幅広く活用されています。次のような例があります」
【防災対策・災害対策】
避難所の設置、災害時の物資の備蓄、土砂災害・河川対策などの防災・災害に関する計画に、国勢調査から得られる人口や世帯数が利用されています。
【少子高齢化対策】
保育施設の拡充などの子育て支援の計画や、医療や住宅などの高齢者福祉の計画に、国勢調査から得られる人口や世帯数が利用されています。
【企業の出店計画や需要予測】
詳細な地域別の人口が分かるため、コンビニなど小売店の出店計画に用いられています。また、企業の製品・サービスの開発や需要予測に活用されています。
【地方交付税交付額の算定】
地方交付税は皆さんがお住まいの地域の行政のため、国から地方公共団体へお渡しする財源のことです。この交付額の算定には、国勢調査から得られる人口や世帯数を用いるよう、法律(地方交付税法)で定められています。
Q.現状では法律の壁があるかもしれませんが、法改正をすれば、住民基本台帳やマイナンバーと税務資料などを連携することによって、調査をせずとも統計を得られる可能性はあるのではないでしょうか。
担当者「マイナンバーは住民基本台帳(住民票)のデータに番号が割り振られることから、限られた調査項目しか得られません。地域の振興計画や街づくり、福祉対策などの各種の行政施策の基礎資料としては、男女・年齢別といった基本事項と組み合わせた就業や住居の状況のほか、市区町村の昼間人口を把握するための従業地・通学地の状況など、さまざまな調査項目を必要とするため、国勢調査を行う必要があります。
確かに、税務資料で勤務先は分かるかもしれませんが、正社員か派遣社員かパートかといったことや、ご本人が実際に行っている業務は分かりません。また、2種類以上仕事をしている人はどちらが主な仕事かなども行政情報だけからでは分からない可能性があります。働いている人の情報を正確に把握するためには、国勢調査の回答が役立ちます。
また、国勢調査は今年で100年となりますが、新たな調査方法にする場合、調査の継続性、連続性という問題もあります。仮に新しい方法を導入するのであれば、継続性や連続性の面も考えて、慎重に検討する必要があります」
コメント