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子どもが好きじゃないの? 「1人の時間が欲しい」親への心ない言葉、対処法は?

子育て中の親が「1人の時間が欲しい」と口にすると、周囲から苦言を呈されることがあります。言ってはだめなことなのでしょうか。

「1人の時間が欲しい」と言ってはだめ?
「1人の時間が欲しい」と言ってはだめ?

 子育てをする親の多くが「1人の時間が欲しい」と感じた経験があると思います。しかし、親の中には、その言葉を口にしたとき、「子どもがかわいくないの?」「何で生んだの?」などの言葉を周囲から言われた経験がある人も少なくないようです。

 親からすれば、「子どもに何かあったら、今一緒にいる自分の責任」という緊張状態から一時でも解放されたいという思いがあるにもかかわらず、「息抜きをしたい=子どもを愛していない」と誤認識されることについて、ネット上では「子どもと少し離れて1人になりたいという気持ちは別におかしいことではない」「休息が欲しいと思うのはそんなにだめなこと?」「弱音すら吐きづらくて苦しい」などの声が上がっています。

 1人の時間を求める親に向けられる心ない言葉や考え方には、どのような背景があるのでしょうか。子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんに聞きました。

人としての自然な欲求

Q.子育て中の親が「1人の時間が欲しい」と思うことについて、どう思われますか。

佐藤さん「人としての自然な欲求だと思います。どんな仕事でも『休憩』『休日』があり、その時間には基本的に好きなことをして構わないのに、子育てについては、それが許されない空気があります。

私の育児相談に持ち込まれる悩みは大きく分けて2つあり、一つはお子さんに関する悩み、もう一つは親御さん自身の悩みですが、その中で『1人の時間が欲しい』という声もたくさんあります。忙し過ぎて、1人の時間をつくること自体が難しいと感じている親御さんもいますが、1人の時間を取ることに罪悪感を持たせる空気が世の中にあり、それに苦しんでいる人も多いように思います。

『子どもをほったらかしにしよう』とか『面倒を見ない』とか言っているわけではないのに、『ほんの少し休憩したい』と思うことの何がいけないのでしょうか。会社勤めの人が平日働けるのは、土日でバランスを取っているからこそです。そのような均衡を保つチャンスを持てない日常では、息が詰まるのも当然だと思います」

Q.「1人の時間が欲しい」親に対して、周囲から「子どもを大事に思っていないの?」「どうして生んだの?」などの言葉を掛けるケースは実際にあるのでしょうか。

佐藤さん「あります。子育てが現在進行中の人同士でも、育児の方針や子どもとの向き合い方は人それぞれですので、その違いから、このような発言につながるケースはあるものです。子どもに100パーセントを注ぐことをよしとする人もいれば、適宜リセットをしながら、子どもと真摯(しんし)に向き合おうとする人もいます。『自分のスタイルが他の人にとっては正解ではないかもしれない』とお互いに理解することが大切なのだと思います。

また、子育てには実際にやってみて初めて分かる大変さがあるので、現在関わっていない人から、心ない一言として出やすいのではないでしょうか。経験者であっても、既に子育てが終了した親世代から、『昔はもっと○○だった』と過去を持ち出して比較されるケースもあるように思います。現代には現代なりの育児の大変さがあります。それを理解していないと、こうした言葉が思わず出てしまうのかもしれません」

Q.「1人の時間が欲しい=子どもを愛していない」という考え方についてどう思われますか。また、この考え方の背景にあるものとは。

佐藤さん「これに関しては『3歳児神話』の縛りが関係しているように思います。3歳児神話とは『子どもが3歳になるまでは母親は子育てに専念すべきであり、さもないと成長に悪影響を及ぼす』という考え方のことです。1998年、厚生省(現・厚生労働省)の『厚生白書』が3歳児神話について『合理的な根拠は認められない』と明記しているのですが、今もなお世相として残り、影響を与えているように思います。

先日、ネット上を中心に話題になった“ポテサラ論争”もそうでしたが、日本では母親に求められる役割が非常に多く、世の中の目が厳しいため、それらが育児をやりづらくしています。子どもには愛情が必要ですし、精神的な絆を意味する『アタッチメント』も必須です。しかし、それを母親一人に背負わせてしまう3歳児神話は視野も心も狭い考え方であり、もっと、社会全体で子育てを捉えていかないと、核家族社会では母親を追い込むことになってしまいます。

アフリカのことわざに『It takes a village to raise a child(子どもを1人育てるには、村が1つ必要)』というものがあります。このような認識を社会が持つことで、『ほんの少しでも1人の時間が持てたら』という母親の切なる思いが罪悪感につながらなくなっていくのだと思います」

Q.もし、「子どもを大事に思っていないの?」「どうして生んだの?」といった言葉を掛けられた際、どのように対応すればよいでしょうか。

佐藤さん「先述の通り、たとえ同世代の親同士であっても、育児に対する考え方は違うものです。子どもと常に一緒にいることを心底楽しんでいる人もいますし、日曜の朝にご主人とバトンタッチし、コーヒータイムを設けて、リセットしている人もいます。どちらが正解というものではなく、その人それぞれのやり方です。

もし、こういう言葉を掛けられたら、『もちろん大事に思っているよ。だからこそ、週1回の1人の時間はすごく大切なの』と捉えるのが、心に波を立てない対処なのではないでしょうか」

Q.「1人の時間が欲しい」と思ったり、実際にそう言ったりしている子育て中の人に対し、周囲の人が取るべき接し方やコミュニケーションとは。

佐藤さん「育児放棄など児童虐待の報道を見ていると、親が『1人の時間が欲しかったから』と供述することがありますが、それと今回の相談のケースは似て非なるものです。今回の訴えは『1人の時間が欲しい』と感じているけれど、実際には1人になるチャンスがほとんどない親御さんです。皆さん、30分や1時間でさえも1人の時間を持てていないのです。そういう人が身近にいたら、できる工夫をぜひしていってほしいと思います。

夫婦間であれば“同じ船”に乗っている者同士協力して、そうした時間をつくり合うのが筋ですし、友達同士の場合、時間を決めて子どもの預かり合いをしてもよいでしょう。実際に預かり合いをしているケースも結構あります。

また、両親や義両親の場合、ご近所であれば夫婦間・友人間と同様に、1人の時間をつくることに協力してあげてほしいと思います。遠方の場合は、物理的な協力は無理でも、せめて、追い込むような発言でプレッシャーを与えることだけはやめてほしいです。

コロナ禍での生活が続く昨今、これまで以上に子育て世代は圧迫を感じています。自分にとってはささいな言葉でも、相手にとってはそうではないかもしれません。今こそ、思いやりの心が大事なのではないでしょうか」

(オトナンサー編集部)

佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)

公認心理師(児童心理専門)

ポジティブ育児研究所代表。育児相談室「ポジカフェ」主宰。英レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。現在は、ポジティブ育児研究所でのママ向けの心理学講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポートする活動をしている。著書に「子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣」(あさ出版)など。All About「子育て」ガイド(https://allabout.co.jp/gm/gp/1109/)を務めている。公式サイト(https://megumi-sato.com/)。

コメント

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1件のコメント

  1. ひとりになりたいっての痛いほどわかるし、当時のこと思い出すと何だか苦しいような気分になる。
    これって、奥さんに子供のこと丸投げしてたおっさんとか、小梨とか、姑がずっと世話してた(育児権奪われたと思い込んでる人のやっかみ)とか、ワンオペ育児したことない人ほど、「愛情がない」だの「なら産むな」的なこと言いがちだよな。
    大人よりずっと高音域のキンキン声日がな一日聞いてたらわが子でも正直疲れる。それも複数人数いたひにゃ、ただでさえ、宇宙語状態なのに口々に言うからもう、脳みそ溶けて耳から流れそうって感じだもん。