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メールの返信なくストレス…過激な督促「メルハラ」に陥らないためには?

仕事で大事な要件をメールで送ったにもかかわらず、相手から返信が来ないことがあります。「忙しいからだろう」と思いがちですが、本当にそうなのでしょうか。

メールの返信が来ないときは?
メールの返信が来ないときは?

 筆者は、ビジネススキルをその場で向上させる演習プログラムをリモートなどで実施していますが、最近よく受けるようになった質問に「メールを出しても、返信がなくて困っている」というものがあります。

 仕事の依頼や確認のメールを出しても返信がないので、仕事がはかどらないばかりか、「依頼されたことを実行しているのか、していないのか、確認をしているのか、していないのか」「内容について理解しているのか、していないのか」、ひいては「読んでいるのか、いないのか」と心配になり、ストレスがたまります。

督促がエスカレートして…

 毎日、会社で会える相手や状況であれば、「メールした件はどうですか?」と気軽に状況を確認できるのですが、社外の人であればそうもいきません。また、在宅勤務が常態化し、対面でのコミュニケーションが限られるようになったこともあり、こうした相談が増えているように思います。

 督促がエスカレートして、メールのタイトルに「返信してください」「リマインド」と記載するだけでなく、【要返信】と強調したタイトルや、中には、メールの注目度を高めるために「■■■必ず返信してください■■■」と、これでもかというくらいに飾り文字を連ねたタイトルも出現しました。

 そして、とうとう、「■■■○月○日23時59分59秒締め切り■■提出されない場合はこちらで勝手に設定します」というタイトルのメールも出ましたし、さらにエスカレートし、返信していない人を多数の人がCCに入ったメールの中でさらして、督促することまで起きました。ここまでくると、「メルハラ(メールハラスメント)」と言われても仕方ありません。

 これでは、メールの出し手のストレスだけでなく、依頼を受ける側のストレスも増幅させてしまうことになります。SNSの既読スルーはプライベートな人間関係を壊してしまいますが、業務メールに返信がない問題は仕事や組織全体に悪影響を及ぼしてしまいます。

侮れない信頼構築の機会

 20年来、ビジネススキル演習を実施してきて、年を経るたびに、メールの返信がないことに対する問題は大きくなっているように感じています。一見、「(相手が)忙しいだろう」「職位が上の人だから、メールの返信をしてこないのは普通」と思うかもしれませんが、忙しく、職位が上で、それも組織の中核にいて、業績伸展を実現している人からは返信があると思う演習参加者が多いのです。

 しっかり、メールの返信をしているので、他のメンバーとの信頼関係が構築され、職位が上がるのでしょう。むしろ、職位が上がり、組織全体への責任を担っているので、メールの返信をおろそかにしないという側面もあるように思います。

 督促メールのタイトルを過激にしても、相手は反発するだけかもしれません。相手の行動を変えるよりも、自分のやり方を変える方が簡単なケースも多々ありますので、メールを返信してこない人には「依頼を受けてくれるようでしたら(受けられないようでしたら)、○日までに返信いただけますか」「この案で問題があるようでしたら、○日までにご連絡いただけますか」と、返信がない場合でも仕事が進むように依頼することも一つの方法です。

 確実に、それも早期にメールを返信している企業幹部に聞いてみたところ、受信ボックスのメールタイトルの一覧に、返信したかどうか、転送したかどうかのアイコンを表示させて、毎日、漏れがないことを確認しているという人もいました。依頼や確認メールではないメールにも「情報提供ありがとう」「CCに入れてくれて感謝。気にしておきます」などと、小まめに返信している人もいました。

 たかがメール一つですが、例えば、1日50通のメールを受信して50通に返信する人は1カ月に20日間働くとして1000回、信頼を構築する機会を得ています。一方、返信を怠っている人は同じ回数だけ、信頼を損なう機会を発生させていることになるのです。

(モチベーションファクター代表取締役 山口博)

山口博(やまぐち・ひろし)

モチベーションファクター代表取締役

長野県上田市出身。慶応義塾大学法学部卒業。国内外金融・IT・製造企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て現職。モチベーションファクター(R)(意欲を高める要素)をてこにした分解スキル反復演習(R)型能力開発プログラムを開発、展開しているグローバルトレーニングトレーナー。横浜国立大学大学院非常勤講師。主な著書に「ビジネススキル急上昇日めくりドリル」(http://amzn.asia/d/cwWsVkE)、「チームを動かすファシリテーションのドリル」(単行本=http://amzn.asia/d/6ZPWVaC、新書=http://amzn.asia/d/hRTRrvn)、「99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100」(http://amzn.asia/d/8z6NmSl)。

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