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同じ読み方だけど…? 「懐石料理」と「会席料理」は何が違うのか

同じ読み方をする「懐石料理」と「会席料理」――。いずれも、かしこまったイメージのある日本料理の形式ですが、その違いとはどのようなものでしょうか。料理研究家に取材しました。

日本料理の形式の一つ「会席料理」

 皆さんは「かいせきりょうり」と聞くと、どんな漢字が頭に思い浮かぶでしょうか。即座に「懐石料理」「会席料理」の2つが出てきた人はお見事。というわけで今回は、読みが同じであることから混同されがちな日本料理の異なる形式、懐石料理と会席料理の違いについて、日本の伝統食に詳しい料理研究家の麻生怜菜さんに聞きました。

俳人が食べるものだった「会席料理」

 まず、懐石料理は安土桃山時代に茶人の千利休によって完成された「茶の湯」において、濃茶(こいちゃ)をすすめる前に出す簡単な料理のことです。「懐石とは、寒い時期に軽石などを火で熱して懐に入れ、体を温めることで空腹をしのぐという意味。茶事に組み込まれていた食事であることから『茶懐石』とも呼ばれます」(麻生さん)。

 古くは茶の湯の主催者が自ら作ってもてなすものでしたが、茶懐石を専門とする仕出し屋が登場し、やがて一般の料理屋でも提供されるようになりました。現在では茶会の席で、空腹のまま刺激の強い茶を飲むことを避けるために食べる、茶を味わう上で差しつかえない程度の軽食を指します。

 流派によって違いはありますが、現代の懐石料理はご飯、吸い物、向付(むこうづけ)の後、煮物、焼き物、預け鉢、吸い物、八寸(はっすん)、湯桶、香の物、菓子の順に、ひと皿(ひと鉢)ずつ出されます。

 一方、会席料理は多数が集まる宴席で提供される料理のこと。現在では酒宴の席における上等なもてなし料理を指します。「会席は本来、歌や俳諧の席のことで、そこでは俳人のための料理が出されていました。江戸時代以降、会席が料理茶屋で行われるようになり、懐石の作法にアレンジを加えた料理が提供され始めたのです」。

 会席料理はお酒を楽しむための料理であり、前菜、吸い物、刺し身、焼き物、煮物、蒸し物、酢の物などを含む一汁三菜を基本に、お通し、揚げ物、蒸し物、和え物、酢の物などの肴(さかな)が加わり、最後にご飯とみそ汁、香の物、水菓子が出されます。

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麻生怜菜(あそう・れいな)

精進料理研究家、フードアナリスト

全国を転々とする幼少時代を過ごし、旅行好きの両親の影響で、47都道府県の地域食材や郷土料理を食べて育つ。結婚後、夫の実家がお寺であったことをきっかけにお寺の行事食に関わるように。日本の伝統食(特に精進料理)の考え方や調理法、食材などに感銘を受け、現代のトレンドと融合した食文化を発信する場として2011年から「あそれい精進料理教室」を主宰。2015年から、全国の厳選したオススメ料理教室を紹介するサイト「#FunCookingLab in the Kitchen」代表。現在、日本大学生物資源科学部非常勤講師(日本食文化史/おいしさの科学)、フードアナリスト1級認定講師。講演活動も行う。著書に「寺嫁ごはん 心と体がホッとする“ゆる精進料理”」。公式ブログ(http://ameblo.jp/reina-a/)。

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