窪田正孝“カメレオン俳優”と称されるゆえん、ピュアな心で役と向き合う驚異の共感力
約2カ月半ぶりに本編の放送がスタートする連続テレビ小説「エール」。その主演を務める窪田正孝さんの魅力に筆者が迫ります。
9月11日まで再放送されていた連続テレビ小説「エール」(NHK総合)。4月1日以降休止となっていた収録が6月16日から再開し、9月14日より約2カ月半ぶりに本編の放送がスタートします。本作は「船頭可愛や」「イマヨンテの夜」などの流行歌や、早稲田大学第一応援歌「紺碧の空」「阪神タイガースの歌(通称:六甲おろし)」に代表される応援歌を生み出した名作曲家・古関裕而(こせき・ゆうじ)をモデルとした作品。福島の老舗呉服屋に生まれ、後に妻となる関内音と共に音楽に生きた古山裕一の人生を描いています。
主演を務めるのは、近年、ドラマや映画に引っ張りだこの俳優・窪田正孝さん。シリアスな役柄が多いイメージですが、「楽して生きたい」をモットーに女性の家に転がり込むヒモ男を演じたドラマ「ヒモメン」(テレビ朝日系)や今回の「エール」の中でも、ふとしたときに発揮するコメディーセンスが話題を呼んでいます。
三池崇史監督絶賛“役柄に溶け込む力”
例えば、「エール」第4週「君はるか」では、裕一が作曲のスランプに陥るときや、二階堂ふみさん演じる思い人・音との連絡が途絶えたときなどに「ああぁ~~!!」という雄たけびを上げる場面がありました。窪田さんは幅広い役柄をこなせることから“カメレオン俳優”と称されることも。TVログが発表した「300人に聞いた!演技がすごい・カメレオン俳優ランキングベスト10!」では、松山ケンイチさんや小栗旬さんなどのそうそうたるメンバーを抑えて第4位に選ばれました。
俳優歴14年というキャリアの中で、彼の転機となった作品は、2008年に放送され、主演を務めたドラマ「ケータイ捜査官7」(テレビ東京系)。当時、芝居を続けるかどうか迷っていたという窪田さんは、同作でメガホンを取った三池崇史監督から、「10年後に答えが分かる」と言われ、俳優として生きる覚悟を決めます。
三池監督と窪田さんはそれから約10年の時を経て、映画「初恋」(2020年)で再びタッグを組むことに。バイオレンスと純愛要素が融合した同作の中で、窪田さんは孤高のプロボクサー・葛城レオ役を務めます。余命いくばくもない病におかされていることを知り、感情を失ったレオが、ヤクザに追われているヒロイン・モニカ(小西桜子さん)に出会ったことで生きる糧を見つける心の動きを繊細に表現しました。
感情を失った瞳や、モニカだけに見せる温かなまなざし――その演技は高く評価され、各界から絶賛の声が寄せられています。三池監督は窪田さんの魅力について、「NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 エール Part1」の中で以下のように語りました。
「彼はその病気を経験しているわけではありませんが、人の話を聞き、他人のいろいろな表情を観察して貯蓄してきたこと、あるいはDNAの奥深くにある何かを無意識のうちに引き出して演じられる能力を感じます」
三池監督が絶賛する、窪田さんの役柄に溶け込む力。確かに、彼は「東京喰種トーキョーグール」(2017年・2019年)や「Diner ダイナー」(2019年)において、人間でありながら「人肉を食べたい」という欲求に駆られる“半喰種”から猟奇的な殺人鬼まで、常軌を逸した役柄を見事に自分のモノにしています。なぜ、彼は現実世界で決して出会うことのない役に入り込むことができるのでしょうか。
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