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「どうぶつの森」でローン理解 子どもに「お金」のこと、いつ、どう教える?

ゲームを通じて、「お金」の稼ぎ方や使い方を自然と学ぶ子どもも多いようですが、そもそも、親はどのようにお金のことを子どもに教えればよいのでしょうか。

子どもにお金のこと、どう教える?
子どもにお金のこと、どう教える?

 任天堂の人気ゲームシリーズ「どうぶつの森」。今年3月に最新作「あつまれ どうぶつの森」が発売されると、コロナ禍によるステイホームの追い風も受けて、子どもから大人まで夢中になり、大ヒットとなりました。

「どうぶつの森」シリーズといえば、果物や化石を売ってお金を稼ぎ、道具や服、価格が変動する「カブ」を買ったり、ローンを組んで家を建てたりしながら、村や島を自分好みに開拓していくゲームシステムが特徴ですが、ゲームを通じて、お金の稼ぎ方や使い方、ローンや預金、株取引の仕組みなどを自然と学んでいる子どもは多いようで、ネット上では「小学生の娘がローンの概念を理解していて驚いた」「息子が『カブ』の値動きに一喜一憂している」という声や、「教え方が難しい」とお金の教育について悩む声もあります。

 わが子に対して、親はどのように「お金のこと」を教えればよいのでしょうか。子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんに聞きました。

小学校入学時が好機

Q.ゲームを通じて、お金の動きや仕組みを自然と学んでいる子どもたちが多いようですが、これについてどう思われますか。

佐藤さん「お金という難しいテーマに入り込むきっかけとして、有効な方法だと思います。かつては『モノポリー』や『人生ゲーム』などのボードゲームが同様に、遊びながらお金の動きや仕組みを学ぶものでした。それが今はオンライン化されたというだけで、遊びながら学ぶ方法は変わっていないように思います。

今も昔もこのような方法が人気なのは、子どもが大好きなゲームという形に落とし込まれて、学びやすくなっていることが大きいでしょう。また、現実問題、実際に子どもが手にできるお金は限られていますから、ゲーム上での疑似体験の方がより複雑なことを学ぶには向いているのだと思います」

Q.そもそも、子どもの頃に「お金の教育」は必要だと思われますか。

佐藤さん「必要だと思います。親が日々、仕事をして稼いだお金を家計の切り盛りで適切に使っていく。このサイクルを理解することは親への尊敬にもつながりますし、『お金は有限』と教えられるからです」

Q.お金のことについて、子どもは何歳ごろ、誰からどのように、どんな内容を教わるのがよいと思いますか。

佐藤さん「小学校に上がった頃、親から教わるのが自然な流れでしょう。親がまず、子どもに期待するのは、自分が持っているお金の中でやりくりすることだと思います。自分のお金で、何がどれだけ買えるかを把握するには、足し算や引き算のスキルが必要です。小学1~2年の算数は足し算と引き算がメインですから、その点から見ても始め時だと思います。

日本では、小学校入学を機にお小遣いをスタートする家庭が多いようで、2015年度に金融広報中央委員会が行った『子どものくらしとお金に関する調査』によると、小学校低学年では約7割の子が『お小遣いをもらっている』と回答しています。親が子どもに金銭感覚を身に付けてほしいと考え、その手段としてお小遣いをあげることは、お金について実体験で学ぶよい機会になると思います」

Q.幼少期にお金の教育を受けることは、子どもにどのような影響を与えると思われますか。

佐藤さん「まず、メリットとしては『お金には限りがあり、何でも買えるわけではない』という経験を通じて、我慢することを覚えられることです。ゲームを用いた場合、遊びながら繰り返すことで、計算力の向上につながっているお子さんもいます。人生ゲームには『約束手形』というものがありますが、これはいわば『借金』です。その計算にはマイナス算が伴いますが、ゲームだとあっさり理解できるという話も聞きます。

一方、デメリットというよりは誤用してしまうとよくないのが、お駄賃で学ばせる方法です。『お手伝いをしたら、100円もらえる』といった報酬制は『アンダーマイニング効果』という現象を引き起こすことがあります。これは、内発的に動機付けられた行動に対し、報酬を与えるなどの外的な動機付けをすることによって、やる気が低減する現象のことです。

好きでやっていたパパの靴磨きが、お駄賃をもらえるようになった途端に『お金のためにやる』『お金をもらえないならやらない』という気持ちに変わってしまってはもったいないですよね。その点からも、誤用してデメリットを生まない工夫は大事といえます」

Q.家庭でのお金の教育について、親はどのような方法で行うのがよいでしょうか。

佐藤さん「お小遣いやお年玉の一部など、使える金額を明確にして使っていくのがおすすめです。お小遣いのあげ方は週1回や月1回、中には毎日少しずつという場合もあるようです。小さい子ほど長いスパンで計画するのは苦手なので、月1回だと月初めに使い切ってしまうような場合は『小1の間は月曜日に○円』のように、週単位にするのもよいかもしれません。

先述の調査によれば、『低学年の子は月に500円前後のお小遣い』が相場のようなので、お小遣いの合計金額を決めておき、それを週単位に分割したり、月1回にしたりするなど、その子に合ったリズムであげるのが望ましいでしょう。また、お子さんが買いがちな物はある程度決まっていると思われるので、そのイラストと値段を書き、500円だと、それがいくつ買えるのかなど可視化してみるのもおすすめです」

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佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)

公認心理師(児童心理専門)

ポジティブ育児研究所代表。育児相談室「ポジカフェ」主宰。英レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。現在は、ポジティブ育児研究所でのママ向けの心理学講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポートする活動をしている。著書に「子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣」(あさ出版)など。All About「子育て」ガイド(https://allabout.co.jp/gm/gp/1109/)を務めている。公式サイト(https://megumi-sato.com/)。

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