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感染者増で在宅長期化 自分が「テレワークうつ」かと思ったら…原因・対策を解説

在宅勤務などのテレワークを継続する企業が多い中、「テレワークうつ」になる人が増えているようです。原因や対処法を精神科医に聞きました。

「テレワークうつ」が増えている?
「テレワークうつ」が増えている?

 新型コロナウイルスの感染者が首都圏を中心に再び増加し、在宅勤務の再開や延長を決める企業が出てきています。在宅勤務などのテレワークが長期化する中、精神面に不調が出る「テレワークうつ」になる人が増えているようです。その原因や症状、対処法について、精神科専門医の田中伸一郎さんに聞きました。

本格的なうつ病につながる恐れも

Q.「テレワークうつ」とは、どのようなものでしょうか。うつ病の一種なのでしょうか。

田中さん「新型コロナウイルスの感染拡大防止策として企業が社員に在宅勤務を指示し、オンライン会議などのいわゆるテレワークが行われる中で、社員の心身に不調が生じた状態が『テレワークうつ』です。広く見れば、『コロナうつ』や『自粛うつ』とも関連するものと考えられますが、いずれも学会で使用が認められている用語ではありません。

テレワークうつは抑うつ、不安、睡眠障害、頭痛、肩こり、眼精疲労、腹部症状(腹痛、下痢など)、腰痛、疲れっぽさなど、さまざまな症状が見られますが、うつ病の発症まではいっていない『適応障害』の段階にとどまります。しかし、人によっては、テレワークうつから本格的なうつ病を発症しないとも限りませんので、十分注意が必要です」

Q.テレワークうつは増えているのでしょうか。テレワーク自体は新型コロナの流行以前から一部企業で実施されていましたが、その頃から同様の患者はいたのですか。

田中さん「テレワークうつが増えているのかどうか、実数は不明です。ただ、一部のクリニックでそうした患者が増えていることは確かでしょう。

実は1980年代から、職場でコンピューター技術に適応できない人の『テクノストレス症候群』の存在が知られていました。抑うつ状態がみられ、心身症を発症する人がいるため、当時はメンタルヘルスの領域でも注目されたようですが、数年であっという間にコンピューターが普及し、『テクノストレス』という言葉は死語になりました。

しかし、テレワークうつが登場する前にも、電子メールを使ったコミュニケーションがストレスになって、心身の不調を生じた患者さんが少なからずおられました。逆に、電子メールを使わず、電話で話すことがストレスになって職場に行けなくなったという患者さんもいました」

Q.原因として考えられるものを教えてください。

田中さん「テレワークうつの原因としては、職場環境の変化や業務内容の変化が第1に挙げられます。第2の原因としては、在宅勤務となり、しかも『ステイホーム』の呼び掛けで外出機会が極端に減少したことによる、日常生活リズムの変化が挙げられます。第3の原因としては、対人接触の機会の減少です。

オンライン会議はどうしてもぎこちない雰囲気が残り、誰でも、いくばくかのストレスを受けますが、それ自体ではテレワークうつの原因にはならないと思います。もちろん、1日に10件もオンライン会議をこなすとなると大変でしょうが、問題なのは、オンライン会議以外の対話が減った状況が、何日も何週間も続いてしまうことです。

人それぞれのところがあって一概にこうだとは言えませんが、ある一定の時間は、ある一定数の人と直接顔を合わせて、多少なりとも言葉を交わすことが、人として生きる上で大切なことです。家族・仲間を大事にする動物である人間は、長期間にわたって孤独に耐えることはできないのかもしれません」

Q.満員電車のプレッシャーから解放されたり、(1人暮らし以外の場合)家族と過ごす時間が増えたりするなど、テレワークには精神面でのメリットもありそうですが、デメリットの方が上回ってしまうのでしょうか。

田中さん「確かに満員電車からの解放、家族と過ごす時間の増加などの環境変化はテレワークのメリットです。しかし、職場環境や業務内容の変化によるストレスが大きく、十分に対処できなかった場合は、テレワークうつを発症してしまうことがあります」

Q.受診した方がいい目安はありますか。

田中さん「先述のように、多くのテレワークうつは適応障害です。例えば、心身の不調が1週間以上続くようなら、精神科・心療内科クリニックの受診を検討してもよいと思います。頭痛・肩こり・眼精疲労がひどい、眠れない、熟睡できないという場合は、ぜひ受診してください」

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田中伸一郎(たなか・しんいちろう)

医師(精神科専門医)・公認心理師

1974年生まれ。東京大学医学部医学科卒業。赤光会斎藤病院、東京大学医学部付属病院精神神経科、杏林大学医学部精神神経科学教室などを経て、現在は、獨協医科大学埼玉医療センターこころの診療科准教授。「誰もがこころの問題を理解し、互いに助け合うことのできる社会づくり」を目指し、精神医療の最前線で老若男女の患者を日々診療しながら、メディアを通じて正しい知識を普及すべく活動の場を広げている。

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