政党のお墨付き「公認」「推薦」「支持」「支援」は、それぞれどう違う?
選挙の候補者紹介で、政党のお墨付きとして「公認」「推薦」「支持」「支援」という言葉をよく聞きます。それぞれの言葉の意味や違いは何でしょうか。

7月5日の投開票日へ向けて、東京都知事選挙の選挙戦が繰り広げられています。今回の選挙に限らず、国政選挙も含めて多くの選挙では、自民党や立憲民主党などの政党が特定の候補者を応援するために、何らかのお墨付きを与えることがよくあります。お墨付きには「公認」「推薦」「支持」「支援」がありますが、それぞれの意味や違いが分からないまま、何となく聞き流している人も多いのではないでしょうか。
選挙のときによく聞く、「公認」「推薦」「支持」「支援」の違いは何でしょうか。選挙コンサルティング事業などを展開するジャッグジャパン(東京都渋谷区)社長で、選挙コンサルタントの大浜崎卓真さんに聞きました。
優劣は、公認>推薦>支持>支援
Q.選挙時の候補者に対する「公認」「推薦」「支持」「支援」とは、それぞれどのような意味でしょうか。
大浜崎さん「公認とは、選挙に立候補した候補者の所属している政党(法律の要件を満たした政治団体)が、その候補者を“政党所属”として公式に認定することです。ほとんどの場合、候補者から政党に『公認申請』が出され、審査などが行われて決定します。公認後、政党が発行した『所属党派証明書』を添えて選挙管理委員会に立候補を届け出れば、公認候補となります。
推薦とは、立候補した候補者を政党として推薦することです。ほとんどの場合、候補者からの『推薦申請』が出されてから、審査などが行われて決定します。一般的には、推薦された後、政党から『推薦状』や『推薦決定書』と呼ばれるものが候補者に交付されます。
支持とは、政党が特定の候補者を支持していることを明らかにする態度表明のことです。政党から候補者に書類などが交付されることは一般的に行われず、政党の役職者などがコメントとして、政党としての支持を表明した場合に使う表現です。
最後に、支援とは、政党が特定の候補者を選挙において支援する場合に使う表現です。政党から候補者に書類などが交付されることは一般的になく、選挙運動を政党として助けるといった支援が行われる場合に使われる表現です。なお、政党以外の政治団体も、政党と同様に公認や推薦をする場合があります」
Q.これらの4つの言葉に、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
大浜崎さん「公認の場合、ほとんど全ての政党では複数の政党への重複した所属を認めておらず、原則として、所属している1政党から公認が出されます。一方、推薦では必ずしも、候補者が推薦してもらう政党に所属している必要はありません。そのため、該当する選挙で、その政党と理念や政策が近しい候補者が複数いた場合、定数以下であれば複数の候補者に推薦を出すことがあります。
支持は、推薦のレベルまで至らない場合に使われます。例えば、特定の政党の“党派色”が付くことを嫌い、(1)候補者が推薦依頼を政党に出さなかった場合(2)候補者が特定の政党からの推薦を辞退した場合――などが挙げられます。推薦と同じく、態度表明のみの色彩があります。
一方、支援の場合は、政党が候補者の選挙運動(政治運動)を実質的に支援する場合が多いです。例えば、(1)選挙対策のための人員の供出(2)議員などの公職者による街頭演説の実施(3)支持を訴える電話かけボランティアスタッフの供出――などが挙げられます」
Q.これらの4つの言葉に“優劣”はあるのでしょうか。
大浜崎さん「優劣については一般的には、公認>推薦>支持>支援となります。しかし、例外もあり、態度表明だけの支持よりも、具体的な選挙運動への協力が発生する支援の方が重要視されるケースもあります」
Q.候補者にとって、この4つのいずれかのお墨付きをもらうことは、どのようなメリットがあるのでしょうか。
大浜崎さん「公認を得るメリットは特定の政党からの、しっかりとまとまった票が期待できます。政党によっては『公認料』として金銭の寄付が発生するケースもあります。推薦は公認ほどではないものの、特定の政党からの、ある程度まとまった票が期待できます。支持は推薦ほどではないものの、特定の政党からのまとまった票、支援は特定の政党からの選挙運動における具体的な支援を期待できます」
Q.自分が支持する政党が特定の候補者に、公認、推薦、支持、支援のいずれかのお墨付きを出していた場合、投票行動はどの程度束縛されるものなのでしょうか。党員の場合はどうですか。
大浜崎さん「一般的に、公認と推薦の2つについては、政党は政党機関誌などで党員などに周知徹底を行います。該当する選挙で公認や推薦をしたことは、全ての党員に周知されるはずです。公認や推薦された候補者を応援する、道義上の義務が発生するものと考えられます。もし、対立する候補者を応援すると反党行為とみなされます。
しかし、選挙での投票は法的に拘束することもできませんし、誰に投票したかを明らかにする必要のない秘密投票ですから、党員であろうとなかろうと確実な拘束はできないものです。党の方針(公認、推薦)がそのまま選挙結果(投票行動)に直結できるかどうかは、まさに政党の力(動員力、集票力)ともいえます」
(オトナンサー編集部)
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