年収1200万で貯蓄わずか200万 “理想の家族”を支配する高給取り意識の弊害
世間的に高収入であるにもかかわらず、貯蓄ができない人は意外と多くいます。なぜなのでしょうか。
これまで、高年収家庭のマネー相談に数多く応じてきましたが、年収が高いのにほとんど貯蓄ができていないというケースは少なくありません。なぜ、年収が高いのに貯蓄ができないのでしょうか。
年収1200万円でも5.1%が貯蓄ゼロ
会社員の平均年収が400万円程度の今の時代、年収1000万円と聞くと、世間的にはかなりの高収入というイメージがあるでしょう。加えて、「そんなに収入があるなら、さぞかし、貯蓄もたくさんあるんだろうな」と思います。
ところが、金融・経済団体などでつくる「金融広報中央委員会」が発表した「家計の金融行動に関する世論調査[2人以上世帯調査](2019年)」によると、年収1000万円から1200万円の2人以上世帯で貯蓄ゼロという家庭は10.3%、年収1200万円以上でも5.1%、つまり、年収1000万円以上でも貯蓄ゼロの家庭が、ある程度存在するということです。
筆者は、年収1000万円を超えているご家庭のマネー相談にも数多く応じていますが、貯蓄ゼロとまではいかなくても、年収の割にはあまり貯蓄がないというケースは少なくありません。
以前、マネー相談にいらっしゃったAさん一家の例をお話しましょう。ご主人のAさんは30代で大手IT企業に勤務、年収1200万円のいわゆるエリートサラリーマンでした。専業主婦の奥さまと10歳になる娘さんとの3人暮らしで、絵に描いたようなすてきなご一家でしたが、貯蓄は200万円程度でした。
なぜ、1200万円も年収があるのに、あまり貯蓄ができないのでしょうか。
ブランド志向が家計を圧迫
Aさんご一家は都心部のブランドマンションに住み、高級車を所有。お子さんの教育にも熱心で、中学から私立を希望しており、娘さんは都内の有名進学塾に通っています。
高収入の人の家計に見られる傾向として、都内にマンション、子どもは私立、高級車を所有…というように「高給取り」という意識が働き、家も教育も車も全て上位ランクのものを好む、このようないわゆるブランド志向があります。
また、日常の生活費にもこの「高給取り」意識が反映されています。例えば、日常の買い物は高級スーパー、衣類・バッグ・靴は百貨店で調達(ファミリーセールは活用せず)、飲料水用にウオーターサーバーを設置し、こだわりの電化製品を活用するなど、平均年収の人たちの家計に比べると、全体的にワンランク上の買い物をする傾向にあります。
買い物すべてにおいて単価が高いので、結果的に金額がかさんでしまうというわけです。年収が高い割に貯蓄がないという人の多くは、ここに原因があるケースが多いようです。
とはいえ、年収が1000万円もあるのだから、一見問題ないように見えますが、今は一昔前と違い、給料は右肩上がりにはならず、社会保険料や税金の負担が重くなっていく時代です。そんな時代に、すべてにおいてワンランク上のものを求めると、家計にまったく余裕がなくなります。
場合によっては、貯蓄ができないだけでなく、「高給取り」意識が命取りになり、赤字家計を引き起こしてしまいます。
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