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コロナが生んだ「採用直結インターンシップ」という果実、メリットは3つ【就活・転職の常識を疑え】

就活や転職のさまざまな「常識」について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

インターンシップからの採用直結が解禁?(2018年11月、時事)
インターンシップからの採用直結が解禁?(2018年11月、時事)

 学生が自らの専攻や将来の希望進路と関連した仕事を体験する「インターンシップ(就業体験)」の位置付けが、大きく変わるかもしれません。企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた筆者が解説します。

国内大手も採用直結インターン?

 これまで、文部科学省などはインターンシップについて、「教育目的に限る」ことを原則としており、「採用活動には直結させない」ということになっていましたが、現在のコロナ禍を受けて、公にも一部容認する動きが出ています。

 2020年4月23日の日経新聞の記事によると、コロナ禍によって採用・就職活動の機会が減少していることから、経団連と文科省で、選考や採用の時期の通年化を目指すことと、インターンシップを柔軟に運用する方向性で一致したとのことです。これまで、外資系やベンチャー企業は採用直結インターンシップをしていましたが、いよいよ国内大手企業にも波及しそうです。

メリット1「ミスマッチが減る」

 筆者は、この動きはとてもよいことだと思います。米国などからやってきたインターンシップはそもそも、採用のミスマッチを減らすことを目的としていました。実際、服部泰宏・神戸大学准教授の著書「採用学」によると、フリートークの面接の精度が低いことが指摘される一方で、ワークサンプル(実際の仕事の疑似体験をさせてみる≒インターンシップ)による選考の精度は、他の手法と比較しても高いとされています。

 採用直結のインターンシップが広がれば、企業と学生のマッチングがよりうまくいき、早期退職やメンタルヘルス、ローパフォーマンスの問題などの解決に貢献するのではないでしょうか。

メリット2「就職活動期間が短縮される」

 2つ目は、就職・採用活動の社会的コストが減るのではないかということです。これまで、筆者は就職・採用活動の「時期制限」は、守る企業と守らない企業に分かれるため、結局は意図に反して「長期化」すると指摘してきましたし、実際そうなっていました。

 逆説的ですが、今回「通年採用化」することで「いつでも採用する」となれば、適切な時期に採用活動を集中させることになり、結局は「短期化」すると推測しています。外資系やメガベンチャーが採用競合であれば、彼らの採用期間である3年生の夏インターンシップから年度末にかけて、自社の活動期間を合わせてくる企業が増えるはずです。

メリット3「ウソがなくなる」

 このように十分メリットがある、採用直結インターンシップの解禁ですが、筆者が最大のメリットだと思っているのは、就職/採用活動から「ウソ」がなくなることです。これまで、各社は「インターンシップは採用には関係ありません」と言ってきましたが、本当に全く関係がない会社は、一部ではなかったでしょうか。

 営利企業がコストをかけてインターンシップをする以上、自社採用へのメリットを考えるのは、ある意味当然です。むしろ、守れないルールを設定することが間違いであったと考えます。

 社会への入り口である就職で、ウソが横行するのはそれこそ、教育的に問題であったと思います。レベルの低い情けない話ではありますが、正々堂々と「採用直結」と言えるようになるのはよいことでしょう。

コロナ禍は就職・採用改革を進めた

 このコロナ禍は、大変不幸な出来事ではありますが、採用のオンライン化など効率化が進み、今回取り上げたような採用の通年化や採用直結インターンシップの解禁が行われるのであれば、就職・採用活動の改革を進め、本来あるべき姿に近づけたと思います。

 このような非常事態がなければ、改革できないというのは残念ですが、結局、世の中は余裕があるうちは本質的でないムダなことをしてしまうが、切羽詰まってくると本質的な効果的なことだけを行うということなのでしょう。

 景気の減退は避けられないでしょうし、求人は減ることが予想されます。これから就活する人にとっては不安だと思いますが、就活の効率化は進みそうなのですから、減った求人の中から自分にフィットする会社を、ぜひ頑張って見つけてください。

(人材研究所代表 曽和利光)

曽和利光(そわ・としみつ)

人材研究所代表

1971年、愛知県豊田市出身。灘高校を経て1990年、京都大学教育学部に入学し、1995年に同学部教育心理学科を卒業。リクルートで人事採用部門を担当し、最終的にはゼネラルマネジャーとして活動した後、オープンハウス、ライフネット生命保険など多様な業界で人事を担当。「組織」「人事」と「心理学」をクロスさせた独特の手法を特徴としている。2011年、「人材研究所」を設立し、代表取締役社長に就任。企業の人事部(採用する側)への指南を行うと同時に、これまで2万人を超える就職希望者の面接を行った経験から、新卒および中途採用の就職活動者(採用される側)への活動指南を各種メディアのコラムなどで展開している。著書に「定着と離職のマネジメント『自ら変わり続ける組織』を実現する人材流動性とは」(ソシム)など。

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