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がんを告知され、絶望と孤独から抜け出せない人を救うのは“先輩”?

消化器内科・腫瘍内科医師の押川勝太郎さんに、がん治療における患者と家族のあり方を聞きました。

もしも、がん告知を受けたら…
もしも、がん告知を受けたら…

「がんに立ち向かうには、どうすればいいでしょうか」。健康なときにはなかなか意識しないこの問題は、がん告知を受けたとき、また、がん治療がスタートしてからも、患者やその家族を大いに悩ませます。そして、悩み抜いた末に「孤独」に陥ってしまう人も少なくないのです。

今回は、消化器内科・腫瘍内科医師の押川勝太郎さんに、がん治療における患者と家族のあり方について伺います。押川さんは抗がん剤治療と緩和療法が専門で、2002年、宮崎大学付属病院第一内科で消化器がん抗がん剤治療部門を立ち上げ、2009年、宮崎県全体を対象とした患者会を設立。現在、NPO法人宮崎がん共同勉強会理事長の職責にあります。

悩みを抱え込まずに共有することが大切

 押川さんによると、がん告知を受けた方々の多くは「否定→怒り→落胆→回復」の心理状態をたどるといいます。がんは死の告知ではありませんが、葛藤する人が多いということです。事実、筆者の周りにも、怪しげな民間療法に手を出して不幸な結果になってしまう人もいました。がんを正しく知り、正しく恐れ、限界に制限をかけないことが必要なのだと理解しました。

「しかし、中には『落胆』したまま『回復』できない方もいらっしゃいます。『落胆』と『回復』は言い換えれば、『絶望』と『希望』です。同じ病に苦しむ方々の心理状態が、なぜこのように二極化してしまうのでしょうか。その原因は、もともとの性格にあります。生来、ポジティブな性格の方は立ち直りやすいですが、1人で悩みを抱えがちな方はふさぎ込み、生きる気力を失ってしまうのです。悩み抜いた結果、抑うつ状態に移行するケースも珍しくありません」(押川さん)

「そういう患者さんに私はこう伝えます。『自分一人ではどうにもならないときは、仲間のところに行きましょう』。孤独に悩んでいては、どんどん世界が狭まってしまいます。そもそも、個人の発想の範囲はかなり狭いものです。それでは、いつまでたっても現状から抜け出すことはできないでしょう。そんなときは、外の世界の人たちに会うのが一番です」

 では、どのような人に会えばいいのでしょうか。がん患者にとって心強い仲間とは、どのような相手なのでしょうか。

「相手は誰でもいいわけではありません。がん患者の方々にとって最も心強い味方は、がんの苦しみを分かち合える存在。いわゆる『がんサバイバー』の方々です。がんの経験者である彼らは、いわば『先輩』といえます。過去には、絶望の淵に立たされていた方も少なくありません。健康な家族や友人には理解してもらえない悩みも、彼らは深く共感し、よき相談相手となってくれるでしょう」

「がんサバイバーと知り合えるのは、全国各地に存在する『がん患者会』です。患者会を紹介してもらえる場所として、『がん相談支援センター』があります。がんに関する相談窓口として全国427施設に設置されており(2016年6月現在)、多くの施設には、患者さんやそのご家族の交流の場『がんサロン』が設けられています」

 1人で悩みを抱え込んでしまっている方は、がん患者会やがんサロンを訪れてみるといいと押川さんは言います。きっと、心優しいがんサバイバーの方々があなたを迎えてくれるはずだと。彼らとの交流は、生きる気力を取り戻させてくれるでしょう。

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尾藤克之(びとう・かつゆき)

コラムニスト、著述家、明治大学サービス創新研究所客員研究員 尾藤克之

東京都出身。代議士秘書、大手コンサルティングファームにて、経営・事業開発支援、組織人事問題に関する業務に従事、IT系上場企業などの役員を経て現職。現在は障害者支援団体のアスカ王国(橋本久美子会長/橋本龍太郎首相夫人)をライフワークとしている。NHKや民放各社のテレビ出演や、経済誌などからの取材・掲載多数。著書も多く、近著に「頭がいい人の読書術」(すばる舎)がある。埼玉大学大学院経済学研究博士課程前期(経済学修士、経営学修士)。

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