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黒川弘務氏に5900万円 なぜ不祥事を起こしても「退職金」が支払われる?

賭けマージャンをして東京高検検事長を辞職した黒川弘務氏に、約5900万円の退職金が支給されました。不祥事を起こしたにもかかわらず、なぜ、高額の退職金がもらえるのでしょうか。

黒川弘務氏(2019年1月、時事)
黒川弘務氏(2019年1月、時事)

 新聞記者らと賭けマージャンを行っていたことが週刊誌の報道で発覚した、東京高等検察庁の黒川弘務検事長が5月に辞職しました。その際、黒川氏は訓告処分となりましたが、約5900万円の退職金が6月19日に支給され、ネット上では「納得いかない」「民間企業では考えられない」「給付金はまだ振り込まれないのに」など批判の声が上がっています。

 退職金は、不祥事を起こした人にも支給されるものなのでしょうか。黒川氏に退職金が支給された理由などについて、社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。

懲戒解雇なら減額や不支給

Q.そもそも、企業や役所は労働者に退職金を支給しなければならないのでしょうか。

木村さん「退職金とは、従業員が会社や役所を退職するときに支払われる金銭のことで、企業や所属団体によって『退職手当』『退職功労金』などと呼ばれます。退職金の支給方法は、退職時に一時金として支払われる『退職一時金』、企業年金として支払われる『退職年金』の2種類があります。

退職金は賞与と同様、法律上の支給義務はないため、退職金制度を設けなくても違法にはなりません。ただし、就業規則などに退職金を支給する旨の規定がある場合は、退職金を支給する義務が発生します。従業員側からすると、退職金を受給する権利があるため、本来支払われるはずの退職金が未払いになったり減額されたりした場合、請求することが可能です」

Q.一般的に、退職金が支給される条件とは、どのように決められるのでしょうか。

木村さん「退職金支給に関する内容は、企業が独自に決めても構いません。ただ、『適用される労働者の範囲』『退職手当の決定』『計算および支払い方法や支払い時期』といった基準は、就業規則などへの記載が必要です。

従業員が退職金を計算する際、特に注意したいのが勤続年数と退職理由の項目です。勤続年数によって計算方法が違うほか(一般的には、勤続年数が長いほど有利に計算される)、会社によっては勤続年数が短いと支給されない場合があります。

退職理由については、『会社都合退職』か『自己都合退職』かで計算方法を変えていることが多いです。一般的に、自己都合退職は会社都合退職に比べ金額が低くなる傾向にあります。いずれにせよ、就業規則などでよく確認することが大切です」

Q.退職金が減額されたり、支給されなかったりすることはあるのでしょうか。

木村さん「就業規則などに退職金を支給する旨の定めがあっても、退職金の減額や不支給が発生することはあります。その理由の一つに、懲戒解雇や諭旨解雇(会社から従業員に対して退職を促し、退職届を提出させた上で解雇する扱いのこと。応じない場合は懲戒解雇となる)などの懲戒処分を受けた場合があります。

企業が定めた就業規則などには『退職金の減額および不支給』に関する項目があり、具体的には『就業規則の条文の定めにより、懲戒解雇または諭旨解雇されたとき』『不法行為により退職するとき』『退職後、支給日までの間において懲戒処分に相当する事由が発見されたとき(退職後に不祥事が露見した場合)』などが定められている場合、退職金の不支給や減額がありうるとされています。

また、企業の業績が悪化することによる退職金の不支給や減額もあります。このケースによる退職金の不支給や減額は、従業員にとっての不利益変更となるため、労使の話し合いによって妥協点を見つけることになります。また、過去に不祥事を起こして何らかの処分を受けた場合、退職金の減額や不支給は就業規則などに照らし合わせて判断されると考えられます」

Q.企業や役所は退職金の減額や不支給について、自由に決められるのでしょうか。減額の理由や支給しない理由が恣意(しい)的な場合、法律違反となる可能性はあるのですか。

木村さん「退職金の支給額はその都度、勝手に決められるものではなく、就業規則などで計算方法が定められている場合には、その方法にのっとって計算します。先述した『退職金の減額および不支給』の項目に該当しなければ、退職金は計算額で支給されます。

退職金は『賃金の後払い的性質』『功労報償的な性質』という2つの性質がありますが、退職金の減額や不支給の理由が恣意的な場合、賃金の後払い的性質の側面から見て、就業規則などで支給条件の明確な定めがあれば、退職金は労働基準法11条の『労働の対償』としての賃金に該当することになるため、法律違反に当たると考えられます。

また、就業規則などの定めにより、減額や不支給を行うことが可能だとしても、『従業員が在職中の功績を失わせるほどの重大な背信行為がある場合』に該当しない限り、退職金は賃金の後払い的性格、および功労報償的性格があることを考慮した上で支給されます」

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木村政美(きむら・まさみ)

行政書士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

1963年生まれ。専門学校卒業後、旅行会社、セミナー運営会社、生命保険会社営業職などを経て、2004年に「きむらオフィス」開業。近年は特にコンサルティング、講師、執筆活動に力を入れており、講師実績は延べ700件以上(2019年現在)。演題は労務管理全般、「士業のための講師術」など。きむらオフィス(http://kimura-office.p-kit.com/)。

コメント

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1件のコメント

  1. ビーチ前川ですら、退職金もらえているんだよな。
    でも、ビーチはそれほど叩かれなかった。
    その差がメディアの考え方を表していると思う。