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「報ステ」「ニュース7」も視聴率ダウンで進む報道番組離れ コロナ慣れか不信感か

新型コロナウイルスの脅威がいまだ根強く残る中、「NHKニュース7」「報道ステーション」など報道・情報番組の視聴率が低下しています。どのような背景があるのでしょうか。

テレビ朝日(2020年4月、時事)
テレビ朝日(2020年4月、時事)

 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が解除されてから約20日が過ぎ、6月12日には、東京都が休業要請などの緩和段階を「ステップ3」に進めるなど、少しずつ、日常が取り戻されつつあります。

 世の中に動きが見られる中、テレビ業界で一つの現象として見られるのが、報道・情報番組の明らかな視聴率ダウン。一時は世帯視聴率20%を超えることもあった「NHKニュース7」もこの1週間は15~17%、「報道ステーション」(テレビ朝日系)も12~14%にとどまり、各時間帯のトップを走っていた朝の「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)や夕方の「news every.」(日本テレビ系)などにも減少傾向が見られます。

 第2波の不安が大きいなど新型コロナウイルスの脅威がいまだ収まっていない中、なぜ、報道・情報番組を見る人が減っているのでしょうか。

コロナの話題は土日に見るだけで十分

 まだまだ安心できる状況ではないだけに、新型コロナウイルスに対する関心が下がったわけではないでしょう。しかし、ここ3カ月あまり、朝から深夜までその話題ばかりで、「関心はあるけどさすがに飽きた」「一通りのことは分かったから、新しい動きがあったときだけ見ればいい」という人が増えたようなのです。

 それを裏付けるのが、土日に放送されている報道・情報番組の存在。「サタデーステーション」(テレビ朝日系)、「新・情報7daysニュースキャスター」(TBS系)、「シューイチ」(日本テレビ系)、「サンデーモーニング」(TBS系)、「Mr.サンデー」(フジテレビ系)などの世帯視聴率はほとんど下がらず、2桁以上をキープしています。

 また、土日にも放送されている「NHKニュース7」を見ても、平日のような世帯視聴率の低下は見られません。つまり、「新型コロナウイルスの情報は土日にまとめて見るだけで十分」と思っている人が増えているのでしょう。

 視聴者心理の変化で、もう一つ挙げておきたいのは、報道・情報番組に対する不信感。ここで具体的な番組名は挙げませんが、映像や編集のミスなどが相次ぎ、「印象操作しているのでは?」などの疑念を抱く人が増えました。

 さらに「『批判ありき』『不安をあおる』という構成・演出の番組が多い」と不満を抱いている人も多いようで、ネット上には否定的なコメントとともに、穏やかな番組を望む声が上がっています。

「批判ありき」の番組を変えられるか

 緊急事態宣言の解除後も、感染リスクを踏まえて外出を控える人も多く、「ごくせん」(日本テレビ系)、「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS系)、「99.9-刑事専門弁護士-」(同)などの再放送ドラマが2桁の視聴率を記録しているように、テレビを見る人そのものが減ったわけではないでしょう。

 だからこそ、今後の報道・情報番組では、「過剰」と言われる新型コロナウイルス関連報道を吟味して量を減らし、関心の高いその他のニュースを報じることが求められています。

 また、もともと、報道・情報番組はドラマやバラエティーのように録画視聴する人が極端に少なく、リアルタイムで見てもらうしかないため、世帯視聴率の低下を止めるためにさまざまな手段を考えるでしょう。しかし、それが「批判ありき」「不安をあおる」構成・演出を強めるというものであれば、視聴者の反感を買いかねません。その意味で、番組プロデューサーたちのスキルと人間性が試されている状況とも言えます。

 最後に、話をネットメディアに移すと、テレビの報道・情報番組と同様に新型コロナウイルスの関連記事を量産してきましたが、ページビューが下がり始めたことで徐々に減らしているそうです。テレビの報道・情報番組も、ネットメディアと同じことができるのか。「テレビはスピードと臨機応変さでネットに勝てない」と言われがちなだけに、殻を破ろうという姿勢を見せてもらいたいところです。

(コラムニスト、テレビ解説者 木村隆志)

木村隆志(きむら・たかし)

コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者

雑誌やウェブに月間30本前後のコラムを寄稿するほか、「週刊フジテレビ批評」などに出演し、各局のスタッフに情報提供も行っている。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアー、人間関係のコンサルタントとしても活動中。著書に「トップ・インタビュアーの『聴き技』84」「話しかけなくていい!会話術」など。

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