「カメラを止めるな!」最新作はテーマも撮影も“リモート” 上田慎一郎監督の思い
映画「カメラを止めるな! リモート大作戦」で“リモート映画製作”を実施している上田慎一郎監督に、作品のアイデアや見どころを聞きました。
映画「カメラを止めるな! リモート大作戦」で“リモート映画製作”を実施している上田慎一郎監督。同作は、日本が新型ウイルスの感染拡大で外出自粛を余儀なくされている中、自宅待機中の映像ディレクター・日暮(濱津隆之さん)は笹原(どんぐりさん)、古沢(大沢真一郎さん)の両プロデューサーから再現ドラマを依頼されます。
撮影ができる状況ではないと渋る日暮に、「スタッフキャスト全員、一度も会わずに作ります」と提案され、完全リモートでの映像製作が始まる…映画「カメラを止めるな!」のチームが完全リモートで映像製作に挑戦するコメディー映画です。
オトナンサー編集部では、上田監督に単独インタビューを実施。作品のアイデアや見どころ、YouTubeで配信する理由などを聞きました。
明るいエンターテインメントを届ける
Q.4月3日にアイデアを思いついたとツイートされていましたが、リモート作戦は今の状況だからこそ生まれたアイデアでしょうか。
上田監督(以下敬称略)「4月3日にリモート映画を作ろうと思い立ちました。きっかけは、コロナの影響で毎日暗いニュースが流れる中で、周りのクリエーターも仕事が延期になったり、なくなったりしていると聞こえてきて。
『今、自分に何ができるのか?』と自問自答していました。やはり、自分ができるのは、明るいエンターテインメントを届けて楽しんでもらうことだと思いました。少しでも気分が明るくなるようなものを作ることだと思って、企画しました」
Q.約1週間で脚本を完成させていますね。
上田「4月3日に思いつき、4日に『カメ止め』を題材にしてあらすじや企画書、プロットを書き、各所に連絡し了解を頂いてスタートしました。誰が出られるか確認が必要だったので、プロットの段階でいったん止めて、出演オファーを進めました。その後、出演者がおおむね決まった段階で脚本を一晩で書き上げました」
Q.今回は、キャストさんたちが自撮りをする際に要望を出されましたか。
上田「大きく分けて撮影方法は2つあります。一つはビデオ会議を録画しての撮影。もう一つは、キャストにスマホを使って自撮りしてもらうというものです。数日前に打ち合わせと本読みをしてイメージを伝えました。キャストが撮ったものをLINEで送ってもらい、NGがあれば電話やLINEをして修正してもらいます」
Q.キャストさんも、自撮りでの演技は経験がないと思います。不安要素はありましたか。
上田「そんなにないですね。リモートで劇場映画と同じようなクオリティーを目指すことは考えていなくて。『リモートで映像作品を作ったやつらの話』を、僕ら作り手が実際にリモートで作るというものです。うまくいかなかったところも含めて面白さになります。実際、うまくいかなかったところも含めて本編に取り込んでいくイメージですね」
Q.今作での“アツアツ”ポイントを教えてください。
上田「本作は『リモート映像作品を作ろうとするやつらの話』を実際にリモートで作ります。『カメ止め』本編は『37分ワンカットで撮ったやつらの話』ですが、作り手自身も、実際に37分ワンカットに挑戦して撮りました。フィクションとリアルがない交ぜになっているということが、『カメ止め』を『カメ止め』たらしめている一つだと思っています。今回もフィクションなんですが、同時に作り手の戦いのドキュメントでもあるんです」
Q.配信をYouTubeにする理由を教えてください。
上田「世界中の人がアクセスできるスクリーンだからです。世界中の人がいつでも時間を選ばずにアクセスできます。できるだけ多くの人に見てもらうには、YouTubeだと思いました。最初は有料プラットフォームで課金制にして、ミニシアターを救うためのクラウドファンディング『ミニシアター・エイド』と連携することなども検討したのですが、そうすると、どうしても視聴者は限られてしまいます。
映画ファンだけでなく、いろいろな人に見てもらうことで多くの人に元気を届けたいんですよ。本作の本編はYouTubeで配信しますが、YouTubeでは見られない本作の特典映像を、『ミニシアター・エイド』の支援者の方へのリターンとして提供しています。本作をミニシアターを救う一助にしたいという点では、できるだけ多くの人に広げ、そこから、ミニシアターの置かれている状況を知ってもらおうという方法を採りました」
Q.今の状況で、映画業界で「こうしていきたい」という思いはありますか。
上田「公開延期。撮影中止。コロナの影響で映画業界も大変な状況になっています。そんな中で、僕だけではなく、いろいろなクリエーターがリモートで作品を作るなど、今できることを始めています。リモート製作で新たな手法も学んでいます。
日常が戻って現場で撮影できるようになったとき、ここで学んだ手法も組み合わせて使っていけます。大変な状況ですが、こんな中で、どんな行動を取り、何を学んでいくのかが大事なのかなと思っています」
短編映画「カメラを止めるな! リモート大作戦」は4月下旬にYouTubeで配信予定。
(オトナンサー編集部)
コメント