「離婚」で悩んでいませんか? よくある質問に弁護士がアンサー
2.よくある養育費の疑問
Q.そもそも養育費って何ですか?
A.民法760条1項は「父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父または母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と定めています。
養育費は上記のうち、「子の監護に要する費用の分担」に相当する部分のことです。離婚をして夫婦関係は解消されても、親子関係は変わらないことから、引き続き親の義務として、未成年の子を扶養するために養育費を支払わなければなりません。
ちなみに、法律上の離婚は成立していないものの、夫婦が別居している場合は、夫婦間の扶養義務を定めた民法752条により、収入の多い配偶者が、他方の配偶者に対する扶養義務も負うことになります。
この場合は養育費ではなく「婚姻費用」といいます。離婚している場合と異なり、子どもに加えて配偶者も扶養しなければならないため、婚姻費用は養育費より高額になります。
Q.養育費の額はどうやって決まるのですか?
A.養育費は一般に、養育費を支払う親(子どもと別居している親、義務者)が、自分と同程度の生活を子どもにさせる義務(=生活保持義務)の範囲内で支払うことを求められます。つまり、支払う側の親と同程度の生活水準を維持するために必要な金額が、養育費の適正な金額ということになります。
実際の養育費は、支払う側の親ともらう側の親(子どもと同居している親、権利者)の収入を比較して決定することになりますが、実務上は、裁判所のホームページに掲載されている「養育費・婚姻費用算定表」に基づいて決まるのが一般的です。
(裁判所HP:http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/)
ただし、算定表によって自動的に金額が決まるというわけではなく、義務者と権利者の双方に何か特別な事情がある場合、算定表の金額は変更されます(子どもの病気や進学などで増額、別居の親に扶養者が増えるなどで減額)。
Q.養育費の支払い期間はどれくらいですか?
A.養育費の支払い期間には法律上、明確な規定はありませんが、一般には子どもが成人するまでとされています。ただし、大学進学率が高まっていることもあり、大学卒業までとするケースも多くなっています。
Q.過去の未払い養育費は請求できますか?
A.過去に支払われなかった養育費については、当事者間で合意すれば支払ってもらえます。ただし、当事者間で合意できなかった場合は、家庭裁判所に支払い請求の調停や審判の申し立てをし、養育費を支払う側の親が応じれば、支払われることになります。
Q.養育費の金額は変更できますか?
A.養育費の金額は変更可能です。実際、子どもが小さい頃に離婚した場合など、離婚後に状況が変わることの方が多いはずです。会社の倒産や就職で親の収入が増減するケース、再婚に伴い扶養者が増えるケースなどもあります。
金額の変更については、まず当事者同士で事情を伝えた上で話し合うべきでしょう。当事者間で話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に養育費の増減額請求の調停や審判を申し立てることになります。
Q.養育費をもらうためにどんな手続きが必要ですか?
A.離婚する際に、当事者間で養育費について取り決めがあれば、その内容を「離婚協議書」に明記しておくとよいでしょう。離婚協議書を公正証書で作成して、滞納があった場合の「強制執行認諾条項」を盛り込むことで、支払う親の給与や預金口座、不動産を差し押さえることができます。
当事者間の取り決めがない場合、裁判所に養育費支払い請求の調停や審判を申し立てることになります。裁判所の調停や審判で養育費が決定した場合は、家庭裁判所に「履行勧告」を申し立てることができます。これは、裁判所が支払い者に対して督促を行う制度です。ただし、強制力はないため、督促に応じない場合は強制執行に移行します。


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