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麻布「関心の追究を」 コロナ禍で発せられる私立中高一貫校の言葉に耳を!

新型コロナウイルスの感染拡大で、入学式などのイベント中止が相次ぐ中、私立中高一貫各校の「校風」が鮮明になっています。

東京都豊島区にある立教池袋中学校・高等学校
東京都豊島区にある立教池袋中学校・高等学校

 緊急事態宣言が発令され、新型コロナウイルスによる脅威が切迫してきました。さまざまな自粛が迫られる中、多くの学校でイベントや学校行事の中止が相次いでいます。

 このような状況で、厳しい中学受験を乗り越え、ようやく志望校での学校生活を始めようとしていた新入生にとっては、イレギュラーなことばかりでしょう。

入学式実施の私立中高も、その思いとは?

 春の学校行事といえば入学式ですが、緊急事態宣言により、首都圏のほとんどの学校が入学式の中止や延期を表明しました。それは、主な私立中高一貫校でも同様です。

 例えば、男子校の“御三家”と称される麻布、開成、武蔵では、各校の公式ホームページで次の通りに発表しています。

【麻布】

4月4日時点では、時間短縮などの対策を講じ、実施に向けて調整していましたが、入学式予定日の4月7日、校長のメッセージとともに入学式の延期が発表。式典は学校再開後に行われる予定。

【開成】

4月1日時点で、4月6日に予定していた入学式の中止を発表。ホームページに「学園長祝辞」「校長式辞」などを掲載。

【武蔵】

4月6日時点で、4月8日に予定されていた入学式の中止を発表。

 その一方で、生徒を通学させて通常の入学式を行った私立中高一貫校もあります。

 予定通り4月6日に入学式が行われた都内のある学校では、その1週間ほど前に、入学式に向けたオリエンテーションを実施し、対面授業が始まるまでのインターネットを介した学習の仕方などのレクチャーがありました。

 もちろん、学校側は新型コロナウイルスに対する万全の対策や工夫をした上で、実施を決定しています。ほとんどの学校が中止や延期を決定する中での決断とあって、細心の注意で準備に臨んだことでしょう。

 ただ、保護者としては「この時期に本当に実施するのか」という戸惑いがあったことも事実です。ある保護者に聞くと「前日や当日になって中止や延期になるのではないか」と、毎日のようにホームページに掲示される情報をチェックしていたそうです。

 しかし、「プログラムの内容を変更して予定通り行います。ぜひ参加してください」というブレない学校の方針を目にすると、だんだんと共感するようになったといいます。

 この家庭のお子さんが通う学校は私学らしい校風で、独自の教育方針を持ち、近年では、多方面で成果を出しています。1学年の人数が少ないため、一人一人に目の行き届いた指導ができ、また、生徒同士の教え合いにより、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)することに重きを置いています。

 入学式開催にあたり、学校から出たメッセージには、「不安や心細さは計り知れないと思います。しかし、新しいことに挑戦するのは私たち教職員も一緒です。未曽有の状況だからこそ、本校ができる本校らしい教育活動を新しい本校の子どもたちと一緒に創りあげていきます」と書かれていました。揺るがない校風と熱い思いが感じられます。

 緊急事態宣言が出されれば、入学式は自粛せざるをえず、最短でもゴールデンウイーク明けまで、新入生が仲間や先生と出会う場を設けることはできません。新入生たちに、学校が大切にする「一人一人」「教え合い」の校風を感じてもらう機会はほかにないと、厳しい状況下での入学式を実行したのではないでしょうか。

 小規模の学校が全てそうであるとは言いませんが、このケースは、生徒数が比較的少ない学校だからこそ実現できたものだと考えられます。

 例えば、2020年の新入生の数を見ると、開成の303人に比べ、その学校は150人ほど。集まる人が多くなればなるほど、ウイルス対策は難しくなります。

 つまり、入学式の対応一つを取っても、その学校の教育方針や校風などを感じ取ることができるのです。

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笠原紗由香(かさはら・さゆか)

「親子のための中等教育研究所」所員

中学受験情報誌「私立中高進学通信」編集部を経て独立。編集者・ライターとして、中学受験情報誌の企画・編集・取材・執筆などを担当。首都圏の私立中高一貫校を中心に、高校・大学などに日々足を運ぶ。「親子のための中等教育研究所」所員。

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