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子どもの「高い所に上る」「物を散らかす」行為、すぐやめさせるべき?

子どもが本格的に歩くようになると、高い所に上ったり、物を散らかしたりするようになります。厳しくしつけてやめさせた方がいいのでしょうか。

子どもは高い所に上りたがるが…
子どもは高い所に上りたがるが…

 それまで、つかまり立ちをしていた子どもが本格的に歩くようになると、高い所に上ったり、部屋の物を散らかしたりするなど、危険な行為やいたずらを繰り返すようになります。やめさせようとすれば、激しく泣く一方、放っておくと行為がエスカレートして事故の原因にもなりかねません。

 こうした子どもの行為は、無理やりにでもやめさせた方がいいのでしょうか。子育てアドバイザーの佐藤めぐみさんに聞きました。

「歩くこと」はとてつもない力

Q.そもそもなぜ、子どもは高い場所に上ったり、物を散らかしたりするのでしょうか。

佐藤さん「大人目線で見ると、子どもの取る行動に『どうしてそんなことするの?』と感じることはとても多いです。ただ、子どもからすれば、この世の中は不思議なこと、知らないことばかりで、それを試したい、確かめたいと思うのは至極当然な流れです。

寝返りができるようになった赤ちゃんは、部屋の広範囲を見届けることができますが、それでもまだ、自分の視線の先までたどり着くことはできません。

そのため、赤ちゃんにとって、ハイハイをしたり、つかまり歩きをしたりすることで得る可動性はとても大きな収穫で、ましてや『歩くこと』ができるようになることは、とてつもない力を得ていることになります。

1歳半くらいになると多くの子が歩き始めますが、やはり、自分の力試しに、高い所に上れるのなら上ってみたいですし、棚の上に何があるのか確認したくなるものです。子どもの成長は『○○したい』という好奇心から生まれているといえます」

Q.歩き始めたばかりの子どもが高い場所に上ろうとしていた場合、見かけた時点で無理やりやめさせた方がいいのでしょうか。それとも、様子を見た方がいいのでしょうか。

佐藤さん「家にいるときは親もやることがたくさんあり、つい、子どもから目を離しがちですが、家庭内で起こる事故は多いです。そのため、見かけた時点ですぐにやめさせるのが望ましいです。

また、普段から、家の中はできる限り危険のない状態にしておくことが大事です。例えば、棚を固定したり、脚が折り畳み可能な低いテーブルは使用後、その都度しまったりするなどの対策を行ってください。

それでも、少し目を離した隙にどこかに上っているケースは多々考えられますので、注意してください。室内で安全に遊べる場所を作っておくと、子どもが上りたい気持ちを発散できて理想的です」

Q.対策を行っても子どもが高い所に頻繁に上ろうとする場合、どうすればいいのでしょうか。

佐藤さん「大人だけでなく、子どもも他人から『ダメ』と言われると余計にやりたくなります。これをカリギュラ効果といいます。反対に、自由に上らせてある程度満足させてしまうと、飽きてしまうこともよくあります。

高い所に上るのを一切禁止するよりは、公園の遊具などをうまく活用することで、上りたい気持ちを満たしてあげるのが望ましいでしょう。

一般的に、親は子どもと一緒に外出したとき、家にいるよりも子どもの行動を注意深く見る傾向にあります。公園に行った際、常に子どものそばにいれば、遊具に上らせても問題ないと思います」

Q.「本棚の本を床にたたきつける」「テーブルの上にある物をぐちゃぐちゃにする」など部屋にある物を散らかす場合、子どもに注意した方がいいのでしょうか。それとも、すぐには口を出さずに、見守った方がいいのでしょうか。

佐藤さん「言って分かる年齢であれば、言葉で注意することはもちろん有効なのですが、まだ1歳くらいの時期は、言っても伝わらないことが多いのが現実です。それを『何回言っても聞かない』『いくら注意しても繰り返す』と親が感じてしまうと、イライラしてしまうことになるので、言葉だけに頼らない工夫を取り入れることが大事です。

これらに共通するのは、子どもが手に届く物をいたずらしてしまうということです。『物がそこにある状態』は子どもにとって魅力的ですので、大切な本は上に置く、テーブルの上には食事中以外は何も置かない、冷蔵庫は開けられないよう工夫するなど、物理的に届かない状態をつくるのが有効な対応策と言えるでしょう」

Q.その他、良い方法があれば教えてください。

佐藤さん「出し入れして、いい本をあえて本棚の下の段に置き、子どもに自由にやらせることで気持ちを満たすのも有効でしょう。この他、子どもはキッチングッズなど大人が使う物にも興味を持つため、例えば、キッチングッズ(割れない物や子どもが飲み込めない物)を材料に、自由なスペースを作ってあげるのもおすすめです」

Q.子どもの危険な行為やいたずらについて、しつけをする際の注意点は。

佐藤さん「しつけをしようとするときに心掛けたいのは、すぐに正すべきことなのか、育んでいくものなのかを見分けることです。よくあるのが、何でも一律に『ダメダメ』と連呼してしまい、『ダメ』の効果が薄れてしまっているケースです。包丁に対し『ダメ』と言うのと、片付けができないことに対し『ダメ』というのでは、その重みが違います。

一般的に、生活習慣や礼儀作法に関するしつけは徐々に育んでいくタイプのしつけですので、身の危険を伴うことに関するしつけとは分けて考え、まずは『自分を守ること』『相手を守ること』に関するしつけを伝えていくのが望ましいです。

また、先述しましたが、工夫次第で防げるいたずらは意外と多いものです。子どもがいたずらをしにくくなる状態を親が工夫してつくり出すことは、この年代の子どもをしつける上で大事な方法の一つと言えるでしょう」

(オトナンサー編集部)

佐藤めぐみ(さとう・めぐみ)

公認心理師(児童心理専門)

ポジティブ育児研究所代表。育児相談室「ポジカフェ」主宰。英レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。現在は、ポジティブ育児研究所でのママ向けの心理学講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポートする活動をしている。著書に「子育て心理学のプロが教える 輝くママの習慣」(あさ出版)など。All About「子育て」ガイド(https://allabout.co.jp/gm/gp/1109/)を務めている。公式サイト(https://megumi-sato.com/)。

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