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トイレ紙品薄に…職員のデマ投稿を生協謝罪、業務外で「組織」が謝る必要はある?

日本では、業務外の不適切な行為であっても、企業や団体など「組織」が謝罪することが多いです。個人の問題行動でも、組織が謝罪する必要はあるのでしょうか。

個人の業務外の問題、組織が謝罪する意味は?
個人の業務外の問題、組織が謝罪する意味は?

 米子医療生活協同組合(鳥取県米子市)は3月3日、職員が「新型コロナウイルスにかかわりトイレットペーパーが品薄になる」というデマのSNSへの、投稿者の一人だったとして公式サイトで謝罪しました。

 今回に限らず日本では、企業や団体の所属者が社会に迷惑をかける行為をした場合、業務とは関係のないことでも企業や団体が謝罪することが多いように思います。未成年者や学生がこうした行為をした場合、親や教育機関が謝罪するのは理解できますが、社会人の場合は、業務については組織の監督責任が伴いますが、業務外のことについては伴わないようにも思われます。

 たとえ業務外の行為であったとしても、「組織」は謝罪する必要があるのでしょうか。社会保険労務士の木村政美さんに聞きました。

企業は親で、従業員は子ども?

Q.ある企業や団体の所属者が、業務外での不適切な行為で社会に迷惑をかけたとします。企業や団体は謝罪する必要があるのでしょうか。

木村さん「謝罪する必要はありません。日本では、テレビなどのメディアで、所属従業員の不祥事を企業が謝罪する光景をよく目にします。皆さんは、従業員に不適切な行為があった場合、原因にかかわらず、企業はその責任として謝罪をするのは当たり前だと思うかもしれません。

しかし、従業員の起こした不適切な行為が業務上の話であれば別ですが、業務外で行われた場合は本来、企業が謝罪をする義務はありません。例えば、従業員が個人的に窃盗を働いて逮捕された場合、企業が被害者や世間に対して謝罪をする義務がないのと同じです。企業人としての行為と個人の行為は別だからです」

Q.日本中に大きな影響を与えたデマの場合、デマの投稿者は法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。

木村さん「企業や個人がデマによる損害を明確に被ったと判断できる場合は、偽計業務妨害罪(3年以下の懲役または50万円以下の罰金、刑法233条)で刑法上の責任を問われたり、民事上の責任を負ったりする場合があります。しかし、今回のデマでは、投稿者の法的責任を追及するのは難しいかもしれません。

なぜなら(1)業務妨害の被害者(企業や個人)が特定されていない(2)『トイレットペーパーが品薄になった』という抽象的な表現では、悪意でデマを流し、故意に業務妨害や社会的混乱を目的としたものであるかどうかの立証が難しいからです」

Q.デマの投稿者が所属する組織の法的責任はどうでしょうか。

木村さん「例えば、A社が営業上のライバル会社であるB社を陥れる内容のデマを流すなど、投稿者である従業員に、企業(A社)が業務命令としてデマを流すよう指示したり、直接指示がなくてもデマ行為と仕事が連動したりしていた場合、投稿者だけでなく企業も、名誉毀損(きそん)罪、偽計業務妨害罪など刑事上の責任、および、民事上(損害賠償)の責任を問われる可能性があります。

しかし、デマの投稿が業務に全く関係なく、あくまでもプライベートで行われた場合、企業の法的責任は問われないでしょう」

Q.デマの投稿者が所属する米子医療生活協同組合は、投稿者の投稿内容まで責任を持つことはできないと思います。なぜ、組織として謝罪したと考えられますか。

木村さん「日本国民の気質の一つとして『謝罪文化』があります。それは、ある困った物事が起きたとき、『自分がよいのか悪いか分からないけれどひとまず謝っておこう』という行為で、頭を下げ、おわびの言葉を口にします。そして、世間一般では、この謝罪で物事の対処における誠意の有無を判断する傾向があります。

謝罪がないと『従業員が世間に迷惑をかけたのに、会社(団体)が知らんぷりとはけしからん』と考えるようになります。今回の件で生協が行った謝罪の意味は(1)従業員が起こした不祥事で、世間を騒がせたことへのおわび(2)組織として謝罪することで、世間の感情が組織への批判に向かうことを避ける、という2つの理由が考えられます」

Q.米子医療生協以外でも、企業や団体の所属者が業務外での不適切な行為で社会に迷惑をかけたとき、組織として謝罪する傾向があります。これは海外でも同様ですか。

木村さん「日本の社会では、自分の組織に所属する従業員を『企業(団体)で働く人』であると同時に『企業(団体)という家の中の家族』として捉えている面があります。企業は“親”であり、従業員は“子ども”と考えるならば、理由は何であれ、『子どもが不祥事を起こしたのだから親が謝る』のは、ある意味自然な行為なのかもしれません。

加えて、先述したこととも関連しますが、不祥事に関する投稿者個人への批判が所属している企業(団体)に飛び火、大炎上することを阻止する意味で、パフォーマンスとして謝罪をすることもあるでしょう。

外国企業の場合は、従業員と契約を結ぶ際に責任範囲を明確にしているため、不祥事の原因が本人のみにある場合は企業の責任の範囲外ということで、日本で行われているような、企業幹部が頭を深々と下げ、『申し訳ございませんでした』と謝るような謝罪はしないと思われます」

(オトナンサー編集部)

木村政美(きむら・まさみ)

行政書士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

1963年生まれ。専門学校卒業後、旅行会社、セミナー運営会社、生命保険会社営業職などを経て、2004年に「きむらオフィス」開業。近年は特にコンサルティング、講師、執筆活動に力を入れており、講師実績は延べ700件以上(2019年現在)。演題は労務管理全般、「士業のための講師術」など。きむらオフィス(http://kimura-office.p-kit.com/)。

コメント

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2件のコメント

  1. とりあえず、本人が、反省してるかどうか、わからないあたりどうしようもない。
    反省する気があるなら、1年間杉林の清掃ボランティアしろ。
    鼻ずびずびなのにティッシュが手に入らなかった恨みは根深いぞ。

  2. 鼻ずびずびなのにティッシュが手に入らなかった恨みは根深いぞ。
    本人が何か贖罪のためにボランティアにいそしんでるならいざ知らず、関係のない上司に謝罪までさせてホント人として終わってる。