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なぜ特化?と不満も コロナ対策で小中高生の利用制限する施設、法的に問題ない?

新型コロナウイルスの感染拡大で、公共施設や商業施設の中には、小中高生の利用を制限する施設もあります。特定世代の人の利用を制限する行為は、法的に問題とならないのでしょうか。

臨時休校となり、小学校で自習する子どもたち(2020年3月、時事)
臨時休校となり、小学校で自習する子どもたち(2020年3月、時事)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国の小中高校などが休校となりました。そんな中、図書館や美術館、博物館などの公共施設やゲームセンター、カラオケルーム、映画館といった施設の中には、小中高生の利用を制限する施設もあります。

 施設側のこうした取り組みに対し、ネット上では「本を読む絶好の機会なのに」「重症化しやすい高齢者の利用を制限しないのはおかしい」「なぜ、小中高生に特化する?」「大人だって我慢しなければならないのでは」といった意見が寄せられています。

 感染拡大を防ぐ目的や、子どもの過度な遊びを防ぐ目的としてはやむを得ない対応にも見えますが、特定世代の人の利用を制限する行為は法的に問題ないのでしょうか。グラディアトル法律事務所の伊藤翔太弁護士に聞きました。

憲法上、問題となることも?

Q.図書館などの公共施設の中には、「臨時休校で子どもが集まると、教室同様に感染リスクが高まる」として、高校生以下の利用を制限する施設もあります。法的に問題はないのでしょうか。

伊藤さん「公共施設(図書館など)が利用を制限する行為について、次の3点を考える必要があります。

(1)公共施設の性質
公共施設が利用を拒否するためには、正当な理由が必要となります。合理的な理由なく拒否すると、憲法14条(法の下の平等)、地方自治法244条などに違反する可能性あります。合理的な理由は、公共施設の設立趣旨、目的、運用、規制の態様などを考慮して判断されます。

(2)図書館の性質
公立図書館は住民に対して、思想、意見、その他の情報を含む図書館資料を提供し、教養を高めることなどを目的とする公的な場です。図書館の設置は、民主的で文化的な国家をさらに発展させる精神に基づいています。また、図書館の利用は国民の知る権利にも関わってきます。そのため、正当な理由があるといえる場合でも、制限の方法や理由によっては、憲法上、問題となる場合もあります。

(3)法令など
新型インフルエンザ等対策特別措置法(改正案が3月13日に成立、新型コロナウイルスも適用対象に)は、国民の権利を制限する場合でも、その制限を最小限にするよう定めています。新型コロナウイルスは人から人に感染するウイルスのため、人と人との接触を避けることによって感染を防止する目的で、公共施設でのサービスを制限することに一定の合理性はあるでしょう。

ただし、コロナウイルスに関しては、小中高生が特別に多く感染しているわけではありません。公共施設がこの年代の人たちだけを利用禁止にする行為は、感染を防ぐ上で合理的な対応とはいえず、微妙なところではありますが、憲法や地方自治法などに触れる可能性もあり得るでしょう」

Q.では、商業施設や娯楽施設が特定世代の人の利用を制限する行為は、法的に問題ないのでしょうか。

伊藤さん「商業施設や娯楽施設は私人が運営しています。私人間では契約自由の原則があるので、法律などで制限がない限り、利用者を選別するのは自由です。ただし、社会的に許容しうる限度を超えていると評価される場合は違法となります。新型コロナウイルス対策として、小中高生の利用を制限することは、多少の合理性はあるため問題はないと思われます」

Q.未成年が夜間に娯楽施設を利用することを条例で禁止する自治体もあります。もし、条例で禁止されているにもかかわらず、未成年が夜間に娯楽施設を利用した場合、利用者と施設関係者は罰せられるのでしょうか。

伊藤さん「ゲームセンターやネットカフェなど指定された場所では、深夜に青少年(一般的には18歳未満)を立ち入らせてはいけない規定があります。これに違反した場合、施設の運営者が30万円以下の罰金刑になるパターンが多いです。なお、利用者は補導の対象にはなるかもしれませんが、基本的には罰せられることはないと思われます」

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伊藤翔太(いとう・しょうた)

弁護士

弁護士法人グラディアトル法律事務所所属。国学院大学法学部卒業後、学習院大学専門職大学院法務研究科修了。「労働」「ネットトラブル」「詐欺被害・債権回収」「遺言・相続」などを得意分野とする。誹謗中傷削除・発信者情報開示サイト(https://defamation.gladiator.jp/)。

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