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新型コロナでトラブル増…「キャンセル料」無料を強要する行為、法的問題は?

新型コロナウイルスの影響で自粛ムードが広がる中、結婚披露宴のキャンセルを巡るトラブルも発生しているようです。キャンセル料を巡る悪質な強要の法的問題を、弁護士に聞きました。

結婚披露宴のキャンセル料無料を強要したら…?
結婚披露宴のキャンセル料無料を強要したら…?

 新型コロナウイルスの感染拡大による自粛ムードが広がる中、結婚式や披露宴などを予定していた人たちから「決行してもいいのか」「やはり延期すべきか」といった困惑の声が多く上がっています。

 こうした事態を受け、ブライダル業界では「やむを得ない事情なので、キャンセル料を無料にする」などの対応を決定した企業もありますが、一部には、キャンセル料を無料にするよう式場側をどう喝する人や、「この状況でキャンセル料を取るなんて」とクレームを入れる人もいるといい、ネット上では「気持ちは分かるけど、脅迫まがいのことをしたらだめ」「式場の人も大変なのに」「コロナよりも人間が怖い」など、さまざまな意見があります。

 キャンセル料を巡る悪質な強要の法的問題について、グラディアトル法律事務所の磯田直也弁護士に聞きました。

不可抗力条項の有無が重要

Q.ホテルや結婚式場側に対し、式場の予約などの「キャンセル料無料」を強要する行為について、何らかの法的問題はありますか。また、それは今回のコロナのように「やむを得ない事情」である場合にも該当しますか。

磯田さん「キャンセル料の有無や金額については、式場側の取り扱いや契約内容次第のため、個別に決定されることになります。結婚式や披露宴が迫っている場合、式場側としても業者の手配などの準備を進めていることから、一定のキャンセル料が定められていることが多いでしょう。

今回の新型コロナウイルスのような事情がない場合でも、キャンセル料が、事業者が受ける『平均的な損害』の額を超えるときは消費者契約法9条1号により、キャンセル料のうち超過部分を無効とできる可能性がありますが、実際に無効とできるかどうかは個別の事案ごとの判断になります。

また、契約書に『伝染病流行の場合には、お互いに責任を負わない』とするような不可抗力条項が定められている場合には、キャンセル料の支払い義務が免除される可能性もあります。今回のケースにおいても、不可抗力条項の定めの有無は重要となるところです。

そのような事情がなく、法的にキャンセル料を支払わないといけないにもかかわらず、キャンセル料を無料とするよう式場側に強要する行為は、その態様によっては刑事罰の対象となる可能性があります」

Q.「刑事罰の対象となる可能性」について、詳しく教えてください。また、キャンセル料を無料にしてもらうために、客が式場側にどう喝まがいの言葉を浴びせたり、無料にならなかったことに対して悪質なクレームを入れたりした場合ではどうでしょうか。

磯田さん「刑法には、恐喝罪(刑法249条)が定められています。『恐喝』とは、害悪が及ぶことを告知して、相手に恐怖心を抱かせることをいいます。どう喝まがいの言葉を浴びせてキャンセル料を無料にするよう迫り、請求を断念させたということになると、恐喝によって財産上不法の利益を得たことになるため、10年以下の懲役に該当する可能性があります。

他方、無料にならなかったことに対して悪質なクレームを入れ、式場側の業務を妨害した場合、偽計業務妨害罪(刑法233条)や威力業務妨害罪(同234条)により、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が成立する場合もあるでしょう。

その他、ツイッターなどに書き込みを行ったような場合でも、内容によっては、名誉権や業務遂行権の侵害として民事上の損害賠償請求の対象となることも考えられます」

Q.キャンセル料を巡るトラブルが起こった場合、どのような解決策が考えられますか。

磯田さん「まずは、式場との間で締結している契約書の文言をもとに、双方でキャンセル料の支払いについて協議することが解決に向けた第一歩となるでしょう。話し合いで解決せず、過大・不当なキャンセル料を請求されている場合、最寄りの消費生活センターが相談窓口となっている他、消費者被害を専門に扱っている弁護士もいるので、一度相談に行くのもよいと思います」

Q.新型コロナの影響が続けば、今後もキャンセル料に関するトラブルは発生し得ると思われます。このようなトラブルを防ぐために、企業側と利用者側の双方が意識すべきことは何だと思われますか。

磯田さん「通常の契約でも同様ですが、事業者側はキャンセル料が『いつから』『いくら』発生することになるのかを事前に契約書に明記し、口頭でも十分説明しておくことが必要です。

また、利用者側も契約前に、いつから契約が成立するのか、そしてキャンセルした場合のキャンセル料が『いつの時点で』『どのくらい』かかるのかについて、契約書の記載をしっかり確認し、担当者にも直接確認すべきです。事業者と利用者の意思疎通が十分でないまま、契約を急がせたり、雰囲気に流されてしまったりすれば、後のトラブルの原因にもなります。

新型コロナウイルスの影響を巡っては、式場側も利用者側も困難な状況にあると思いますが、打ち合わせなどを通じて培ってきた信頼関係をもとに、解決に向けてお互いによく話し合うことが重要です」

(オトナンサー編集部)

磯田直也(いそだ・なおや)

弁護士

弁護士法人グラディアトル法律事務所所属。広島大学法学部卒業後、大阪大学大学院高等司法研究科修了。「交通事故」「労働」「離婚」「遺言・相続」「インターネットトラブル」などを得意分野とする。

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