マナー講師が解説! 見知らぬ人が来社、「どちらさまですか?」は正解か
近著に「さりげないのに品がある気くばり美人のきほん」があるマナー講師の西出ひろ子さんに、見知らぬ人が来社した際のマナーについて聞きます。
あと数カ月もすれば、新人が入社してきます。新人教育でまず必要なことは「マナー」と考えている人も多いのではないでしょうか。では、次のシチュエーションを提示します。会社に見知らぬ人が来社しました。ビジネスマナーとして、どのように声を掛けるのがベターでしょうか。
今回は、マナー講師の西出ひろ子さんに解説してもらいます。西出さんは、NHK大河ドラマ「龍馬伝」でマナー指導を担当するなど活動は幅広く、日本でもトップクラスのマナー講師として知られています。近著に「さりげないのに品がある気くばり美人のきほん」(かんき出版)があります。
まずは相手目線で考えることが大切
見知らぬ人を見掛けたとき、「どちらさまでしょうか?」「お名前をお聞かせいただけますでしょうか?」など、声の掛け方はさまざまです。マナーとして考えた場合の留意点は何でしょうか。
「マナーで大切なことは、常に『相手中心』、すなわち、主語は相手であるということ。『私が』『自分が』どう思う、どう感じるではなく、『相手が』どう思う、どう感じる、という相手目線で物事を見ていきます。そのように考えると『どちらさまでしょうか?』と言われると少し冷たい印象を受けませんか」(西出さん)
「こうした言い方をされたら何となく、『不審者だと思われているのではないか』など、不安な気持ちになる人もいるでしょう。『お名前をお聞かせいただけますでしょうか?』はまだ丁寧に接してくれているという印象を受けます」
実際に、見知らぬ人には「不審者」という先入観を持ってしまいがちです。さらに丁寧さと謙虚さが求められる場合は、どうすることが望ましいのでしょうか。
「『お名前を伺ってもよろしいでしょうか?』になります。『お聞かせ』を『伺っても』、『いただけますでしょうか?』を『よろしいでしょうか?』に言い換えます。そして、相手を不快にさせない思いやりの気持ちを『言葉』『行動』で表現することが大事です」
「短いフレーズよりも、『お名前をお聞かせいただけますでしょうか?』『お名前を伺ってもよろしいでしょうか?』など、長いフレーズで応対する方が丁寧な印象になります。短いフレーズだと、早く話を終わらせたいという印象を与えてしまいます」
来客応対時は、相手を不快にさせないことが大切です。相手に不快感を与えず、丁寧に接することが正解といえるでしょう。マナーの型はあまり堅苦しく考えないことも必要です。
クッション言葉の効果を理解しよう
言葉を多く用いる方が丁寧な印象になることが分かりました。西出さんは、「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」という聞き方をワンランクアップさせることも可能だと指摘します。
「直接聞く前に、クッション言葉をトッピングすればいいのです。クッション言葉とは、相手の立場に立ち、相手の気持ちを考えたときに自然に出る言葉です。相手の気持ちに寄り添う言葉ですから、相手にプラスの感情を持ってもらえます」
「『コピーを取ってください』を『お手数ですが、コピーを取ってくださいますか?』としたら印象が変わりませんか。相手の立場に立てば、コピーを取ることは『お手数なこと』です。クッション言葉をひと言入れるかどうかで、相手の感じ方が変わってきます」
そう考えれば、冒頭の「どちらさまでしょうか?」もクッション言葉を使って、「失礼ですが、どちらさまでしょうか?」とすれば丁寧な言葉に変換できます。「失礼ですが」「恐れ入りますが」とひと言、クッション言葉をトッピングすると印象はプラスに変換できます。魔法の言葉と言えるでしょう。
できる人は「クッション言葉」一つでコミュニケーションを潤滑にします。残念な人は「どちらさまですか?」で相手を不快にします。基本マナーとワンランク上のマナーの違いとは。自分のレベルを確かめながら、ワンランク上の所作を身につけましょう。
(コラムニスト、著述家 尾藤克之)
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