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女性従業員の不満も…「男女別トイレ」のないコンビニや飲食店、法的問題は?

コンビニや飲食店で、男女共用トイレしか設置されていないことがあります。男女別にトイレを設けないことについて、法律上問題はないのでしょうか。

男女共用トイレしかない店、法的問題は?
男女共用トイレしかない店、法的問題は?

 コンビニや飲食店では、男女共用トイレしか設置されていないことも珍しくありません。こうした店の中には、設備の関係で客用トイレを従業員が使用するケースもあり、来店客が不便なのはもちろん、女性従業員の中には不満を持つ人も多いようです。そもそも、人が多く集まる店舗で男女別のトイレを設置しないのは、法律上問題ないのでしょうか。グラディアトル法律事務所の武内俊輔弁護士に聞きました。

客用トイレであれば問題ないが…

Q.コンビニや飲食店では男女共用トイレしか設置していない店舗が多いですが、法律上問題はないのでしょうか。

武内さん「客用のトイレが男女共用であること自体は、法律上問題はありません。しかし、従業員用に男女別のトイレを設置していないことは、オーナー1人だけで店を運営するなど例外的な場合を除き、法令違反に該当します。

労働安全衛生法23条で、事業者は労働者を就業させる建設物その他の作業場について『清潔に必要な措置』を講じなければならないとされており、この『清潔に必要な措置』のうち、トイレについては『男性用と女性用に区別すること』とされているからです(労働安全衛生規則628条1項1号)。

なお、労働安全衛生法23条違反には、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則規定まで設けられています(同法119条1号)」

Q.法令違反であるにもかかわらず、なぜ、男女共用トイレしかない店舗がある状況が放置されているのでしょうか。

武内さん「あくまで私見ですが、そもそも、従業員も経営者も労働安全衛生法について知らないということが考えられます。また、仮に知っていたとしても、従業員にとっては雇われている立場上、その旨を経営者に言いづらいと思われます。また、経営者にとっては、店のスペースや費用などの観点から見過ごさざるを得ないと思っているのかもしれません。

さらに、行政側としても、労働者(従業員)からの申告(労働安全衛生法97条1項)がない限り、違反しているかどうかの把握が難しいと思われます」

Q.店舗以外でも、会社や事業所などでトイレを男女別に設置しないことは法律違反となるのでしょうか。

武内さん「会社や事業所においても、トイレを男女別に設置しないことは法律違反になります(労働安全衛生法23条、事務所衛生基準規則17条1項1号)」

Q.店舗の規模や会社、事業所の従業員数によって設置しなければならないトイレの数は、法律などで決まっているのでしょうか。

武内さん「労働安全衛生規則(628条1項2号から4号)や事務所衛生基準規則(17条1項2号から4号)では次の通りに定められています。

(1)同時に就業する男性労働者60人以内ごとに、男性用大便器1個以上
(2)同時に就業する男性労働者30人以内ごとに、小便器1個以上
(3)同時に就業する女性労働者20人以内ごとに、女性用便所1個以上

例えば、同時に就業する男性労働者が100人、女性労働者が50人の事業所の場合は、男性用大便器2個、男性用小便器4個、女性用便器3個が最低必要となってきます」

Q.トイレ以外で、例えば更衣室など男女別に設置しなければ違法となる設備はあるのでしょうか。

武内さん「例えば、仮眠室は事業内容によって男女別に設置しなければならない場合があります。法律上、夜間に睡眠を与える必要があったり、就業途中に仮眠の機会を取らせたりする事業の場合、適当な睡眠や仮眠ができる場所を男性用と女性用に区別して設けなければならないとされているからです(労働安全衛生規則616条1項、事務所衛生基準規則20条1項)。

また、休養室や休養所は労働者の人数によって男女別に設置しなければならない場合があります。法律上、常時50人以上の労働者、または女性が常時30人以上の女性労働者がいる場合、労働者が寝ることができる休養室や休養所を男女別に区別して設けなければならないとされているからです(労働安全衛生規則618条、事務所衛生基準規則21条)」

Q.男女共用トイレに関して問題となった事例や、トラブルが裁判となった事例はあるでしょうか。

武内さん「男女共用トイレを直接の問題として取り上げた事例はありませんでした。ただ、女性社員が『会社の配転命令は違法』として不法行為に基づく損害賠償請求をした事案の中で、女性が配転命令を違法とする理由の一つとして、男女共用トイレがなかったことを挙げたことに関する判例はあります。

判例では、トイレは事務所内に設けられていて男女別に分けられていなかったものの、他の男性従業員は日中外出しているため、トイレの使用がはばかられる状況にあったとはいえないとして、社会通念上許される範囲を超えて不利益が生じたと認めることはできないとされました。

もっとも、この判例は25年以上前のものであり、男性従業員が日中外出しているという特殊事情もありました。現在では、違った結果になることも十分考えられるでしょう」

(オトナンサー編集部)

武内俊輔(たけうち・しゅんすけ)

弁護士

弁護士法人グラディアトル法律事務所所属。同志社大学卒業後、同大法科大学院修了。インターネットトラブル、男女トラブル、労働事件などが得意分野。

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