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歩道橋で首つり、死亡した男性の画像拡散…令和に求められる「ITモラル」とは

事件事故の現場をスマホで撮影し、SNSに投稿する人がいます。令和の時代に問われる「ITのモラル」について、専門家に聞きました。

令和時代に問われる「ITのモラル」とは?
令和時代に問われる「ITのモラル」とは?

 JR新宿駅の南口側にかかる歩道橋で1月6日午後、30代の男性がマフラーで首をつり、その後、死亡が確認されたことが報じられました。男性は直前まで一緒にいた知人に「これから死ぬ」などと話していたといい、警察は自殺を図ったとみて調べているということです。

 当日は「仕事始め」の日だったこと、また、お昼時であったことから多くの人が現場を目撃していたようですが、男性の姿をスマートフォンで撮影していた人や写真をツイッター上に投稿した人もいて、思いがけずショッキングな画像を閲覧してしまった人もいたようです。

 こうした状況について、ネット上では、「事故現場をスマホで撮影する人の神経を疑う」「モラルの欠如がひどい」といった批判の一方で、「正直、ついカメラを向けてしまう気持ちも分からなくはない」「悪意はないと信じたい」などの意見もあり、議論となっています。

 令和の時代に問われる「ITのモラル」について、ITジャーナリストの久原健司さんに聞きました。

拡散すれば「二次的な加害者」に

Q.今回、新宿で起きたこと(撮影、投稿、拡散)について、どのように思われますか。

久原さん「このニュースを見て、『もしその場にいたら、自分には何ができただろう』と考えた人も多いと思います。しかし、少なくとも、ほとんどの人はこのような凄惨(せいさん)な現場にスマホのカメラを向けるようなことはしないでしょう。

こうした状況下で撮影をすること自体が信じ難い行為ですし、ましてや、画像をSNSに投稿し、多くの人の目に触れさせるような行動を取るのは理解に苦しみます。実際、このような批判の声はネット上でも非常に多く見られました」

Q.事件・事故の現場を無断で撮影する行為、また、その写真をSNSに投稿する行為は近年、話題になることが多く、「モラルの低下・欠如」が危惧されています。

久原さん「利用者のITリテラシーが低いまま、スマートフォンやそれを使ったサービスが生活に必要不可欠なものとなってしまったため、今までは発生しなかった新しい問題がニュースで取り上げられることが多くなってきたと感じています。

これまで、情報はテレビや新聞など特定のメディアから発信されるものでした。こうした情報は人々に大きな影響を与えることから、テレビ局や新聞社内でのチェックなど、一定のフィルターを通して発信されてきました。

情報発信の代表格であるテレビがつまらなくなったといわれる一つの原因として、度重なる視聴者からのクレームによって規制が厳しくなったことも挙げられますが、これは『ペンは剣よりも強し』とも言われる通り、直接的な力よりも言葉などによる情報伝達の力の方が人々に大きな影響を与えることを認識し、メディアが自主規制しているからです。

現在はスマホの普及により、特定のメディアだけでなく一般の人々が誰でも気軽に情報発信できるようになりました。テレビや新聞では自主規制がかかるような情報も個人の裁量によって発信されてしまうため、今回のケースのような事態が目立ってきているのではないでしょうか」

Q.SNS上でこのような投稿を思いがけず見てしまった場合、どうすべきでしょうか。

久原さん「思いがけず見てしまったときは、批判的なコメントやリツイートなどの拡散行為をしない方がよいでしょう。画像を見てしまった人が騒ぐことにより、騒いだ人が二次的な加害者になる可能性もあります。実際、今回のようにニュースで取り上げられることになれば、画像を目にする人がさらに増えてしまうことも考えられるでしょう。

また、ツイッターには『通報』の機能があります。こうした投稿を見かけたときは通報を行ってもよいと思いますが、通報したことをツイートする必要はありません」

Q.スマホが必需品となった現代、今後も同様の事象は起こり得ると考えられます。令和の時代に求められる「ITのモラル」とはどのようなものでしょうか。

久原さん「今後、5Gの環境整備やサービスの充実が進むことで、スマホを持っていれば誰でも簡単に画像や動画をアップロードして情報を発信できる世の中が、今以上に当たり前になると思います。いわば、一人一人がテレビ局のチャンネルを持つような状態になるので、情報を発信することで嫌な気持ちになる他人がいること、そして、発信した情報について責任を取らなければいけない可能性があることを十分理解しておくべきだと思います。

また、電話に『逆探知』という方法があるように、匿名性の高いサービスを利用した投稿について、誰が所有するスマホで投稿されたかを特定して法的措置を取る事例が増えています。そうしたリスクが投稿者にあることを一人でも多くの人が知っていれば、今よりも少しはITのモラルが高まると思います。

IT業界に限らず、新しい技術やサービスが世の中に出ると、それに伴って、今までになかった問題が発生するのは仕方のないことだと思います。ただ、サービス提供側は問題に対して対策を行い、利用者側もルールやマナー、モラルを守ることで、皆で便利な世の中を作り上げることに協力し合っていければと思います」

(オトナンサー編集部)

久原健司(くはら・けんじ)

株式会社プロイノベーション代表取締役、ITジャーナリスト

1978年生まれ。2001年に東海大学工学部通信工学科を卒業後、ITの人材派遣会社に入社。大手コンビニエンスストアのPOSシステム保守運用業務を担当する。2003年からソフトウエア開発会社で、システムエンジニアとして、大手通信会社のWebアプリケーションシステム開発など多くの業務に携わるも、2006年、小さな頃からの夢であった独立を決意。2007年(29歳)に株式会社プロイノベーション(http://proinnv.com/)を設立し、当時としては珍しいオブジェクト指向によるモデリング開発でのサービス提供を始める。2018年「振り向くホームページ」サービスを開始(http://furimuku.com/)。プロのフリーランスを集めて企業の成長をサポートすることで、フリーランスとしての働き方を応援する傍ら、日本一背の高いITジャーナリストとして、さまざまなウェブメディアでも活躍中。

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