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娘が進学校をやむなく退学、43歳女性に立ちはだかった養育費2万円の壁

同級生は全員、大学受験用の塾に通っており…

 桃さんは、守銭奴の夫が途中で難癖をつけて養育費の支払いをやめることが予想できたので、養育費の約束を公正証書に残したのですが、離婚1カ月目から振り込まれていないのは予想外でした。

 公正証書があれば、元夫の給与を差し押さえるための申し立てをすることが可能です。差し押さえが成功すれば、職場は元夫へ給与を支払う前に直接、桃さん(または娘さん)の口座に養育費の未払い分を振り込んでくれます。いわゆる給与天引きが可能で、しかも、一度手続きを踏めば、最終回(今回は20歳)まで自動的に天引きされるので便利です。

 桃さんは、元夫の給与を差し押さえることで安定的に養育費を手に入れることができたのですが、今度は養育費が足りないという別の問題が発生したのです。

 学歴が「専門学校卒」の桃さんは知らなかったのです。娘さんの高校は進学校とはいえ、大学受験対策は高校の授業だけでは不十分だということを。同級生は1年生のときから受験用の塾へ通っており、娘さんも同じように通いたかったのですが授業料は少なくとも毎月3万円。桃さんの収入と元夫からの養育費では無理な金額でした。

 しかも、所得制限を超えており、児童扶養手当(一人親家庭に支給される手当)が望めないのでなおさらです。もちろん、中学入学時のように桃さんが週末に副業をするという選択肢もありますが、桃さんは長年の過労がたたり、肝機能障害を患っていました。少しでも無理をすると倒れて寝込んでしまうありさまで、自力で何とかするのは不可能でした。あとは、元夫に養育費を増額してもらうしかありません。

 本来は親権者である桃さんが直接、元夫を説得すべきですが、結婚生活の出来事がトラウマになっており、元夫の存在を思い出すだけで頭は真っ白になり、手は震え、汗ばんでくるので、LINEを一通書くのも無理な状況でした。

 そこで、娘さんが桃さんになりかわって夫にLINEを送ったのですが…いまだに給与差し押さえの件を根に持っているようで、「お前らのせいでクビになりそうだぞ! 話は天引きをやめてからだ!!」と逆上したり、受験事情には無知なのに、「東大受けるんだろ? そうじゃなきゃ○○高校に行った意味がない!」とまくし立てたり、「そんなことより俺とデートしようぜ!」と酔っぱらった感じで思春期の娘さんへセクハラまがいの暴言を吐いたり…。

 娘さんは、ただでさえ情緒が不安定で他の子より傷つきやすいのに、実の父親から罵声を浴びせられたら平静を保つのは無理です。結局、元夫を説得できず、養育費の増額が実現できないどころか、娘さんの心に永遠に消えないだろう傷が残る結果に。同じクラスで塾に通っていない生徒が娘さんだけという状況で、娘さんは次第に学校から足が遠のいたのです。

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

行政書士(露木行政書士事務所代表)

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

注)離婚手続きに関して、個別事情を踏まえた離婚手続きや離婚条件に関する法的観点からの助言が必要な場合は弁護士に依頼してください。

各都道府県の弁護士会
https://www.nichibenren.or.jp/jfba_info/bar_association/whole_country.html

法テラス
https://www.houterasu.or.jp/

コメント

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2件のコメント

  1. 金銭は母子家庭だけではない。両親揃っていても困窮している家庭はある。
    進学も出来ない家庭も見てきた。
    自分は祖父が費用を出してくれたので恵まれていたとは思う。
    しかし、本気なら奨学金制度もある。
    甘えるなと言いたい。
    税金は裕福でない人間も払っている。
    手取り金額見たときの悔しさ。
    こんなコラム見ているとしみじみ思う。
    投稿している人間のつまらないエゴだな。

  2. 父親はひどいと思うけど、もう2万円あればうまくいくとは思えない。
    高校進学できないほどの金欠ならともかく、周りがみんな塾に行ってるからやる気なくして中退って、、、
    甘ったれてると言えるかどうかは分からないけど、それが幼少時からの家庭環境に一因があるとすれば、少なくともお金の問題じゃないよね。