「布団はたたいてはいけない」ネット情報は本当? 布団たたきは、なぜ存在?
さまざまな家事情報サイトに、「布団はたたいてはいけない」という情報があります。これが本当ならば、なぜ「布団たたき」は存在するのでしょうか。
天気のよい日に「パン! パン!」と布団をたたく音が聞こえてくることがあります。天日干ししている布団を、布団たたきでたたく音ですが、ネット上のさまざまな家事情報サイトには「布団はたたいてはいけない」「たたくのは逆効果」という情報もあります。
布団は本当にたたいてはいけないのでしょうか。そうであれば、なぜ「布団たたき」が存在するのでしょうか。ハウスクリーニングアドバイザーの有賀照枝さんに聞きました。
生地や綿が傷んでちぎれる可能性
Q.本当に、天日干ししている布団をたたいてはいけないのでしょうか。
有賀さん「天日干しした布団を布団たたきで『パン! パン!』とたたいて、布団についたホコリや汚れをすっきり落としたい気持ちも分かりますが、どちらかというと布団はたたかない方が無難です。
一番の理由は、布団の生地や中の綿が傷んでちぎれたり、ダメージを受けたりして、よい状態を長く保つことができない可能性があるからです。人生の3分の1もの時間を共にする布団ですから、優しく扱ってあげたいものです。
また、布団たたきの騒音を巡る隣人トラブルで裁判にまで発展したケースも実際にあります。ご近所トラブルに発展する可能性も捨てきれないので、おすすめできません」
Q.「布団をたたくことでダニの死骸が細かく砕かれ、かえって有害」というネット情報もあるのですが、事実でしょうか。
有賀さん「布団をたたいた衝撃でダニの死骸が細かく砕かれることもあるとは思いますが、それ以上に懸念されるのは、たたくことでダニの死骸やフンが、布団から出る繊維やホコリなどとともに空気中に大量に飛散してしまい、それらを吸い込んでしまうことです。特に、アレルギーのある人にはいい状況ではないといえるでしょう。
マンションなどの集合住宅では、風向きで隣人や下の階の居住者に迷惑がかかることも考えられます。また、たたいたことで、奥の方にあったダニの死骸やフンが布団表面近くに出てきて、寝ている間にそれらを吸い込みやすくなる可能性もあります」
Q.布団をたたいたとき、ホコリが出ているように見えるものの正体は何でしょうか。
有賀さん「ちぎれた布団のわたの繊維はもちろん、その布団で寝ている人のパジャマなどから出た細かな繊維、皮膚の一部やフケなども考えられます。ダニのエサとなる皮膚やフケがあるということは、ダニが繁殖していても不思議ではないので、その死骸やフンが混じっている可能性も十分に考えられます」
Q.結局、布団をたたくべきではないということでしょうか。
有賀さん「『絶対にたたいてはいけない』のではなく、『たたく必要があまりない』といった方がよいのではないかと思います。マンションなどで布団を干せないため、布団たたきが現実的でなかったり、ダニを死滅させたり繁殖しにくくできたりする乾燥機などの便利な家電やサービスを使えば、わざわざ、布団を傷つける、たたくという行為をしなくてもよいのです」
Q.たたく必要がないのになぜ、布団をたたく人がいるのでしょうか。
有賀さん「『布団はたたくもの』という昔からの風習や習慣をそのまま受け継いでいるからだと思います。今のように布団の素材も種類が多くなかったので、昔、古くなった布団は中綿を『打ち直し』をして風合いを取り戻していました。
そのため、たたくことで布団の風合いが戻ると考えられていたのかもしれません。また、昔は『布はたき』を使って屋内のホコリやすすを払っていたので、たたく行為が掃除や家事で一般的な常識だったのではないでしょうか」
Q.布団をたたく必要がないのに、なぜ「布団たたき」が存在するのでしょうか。
有賀さん「古くから行われてきた『畳たたき』が転じて、『布団たたき』という名前になったのではないかと推測されます。京都の東・西本願寺の『お煤(すす)払い』は、堂内の畳を竹の棒でたたく年末の恒例行事ですが、室町時代後期に始まったとされます。そこから、日本では古くから、畳をたたいてホコリを落とす風習があったのだと思います。
昔は、よく晴れた日に畳を上げて、たたいてホコリを落とした後に畳を干す『畳干し』がよく見られました。布団も直接畳の上に敷いていたので、畳干しと同時に布団も干して、ホコリを落としていたのではないかと思います」
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