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「何でも一人で」じゃなくていい 子どもの誰かに“頼る力”を育てよう!

子育てに関して「何でも一人でできるように」と言い過ぎると、「困ったときに助けを求められない人」になってしまうかもしれません。

一人でできることは大切だが…
一人でできることは大切だが…

「あなたの家庭の子育て方針は?」と質問すると、「何でも一人でできるようになるように」「自立」「人に迷惑をかけない子になるように」といった答えが多く返ってきます。しかし、「何でも一人でできるように」と言い過ぎると、「困ったときに助けを求められない人」になってしまうかもしれません。

計算ができなくても買い物はできる

「ここからお金を取ってください」と店の人に言う(立石美津子さん提供)
「ここからお金を取ってください」と店の人に言う(立石美津子さん提供)

 私の息子は知的障害を伴う自閉症児です。息子が中学生のとき、「一人で買い物ができるようにお金の計算をマスターさせよう」と親として必死になっていました。そんなとき、特別支援学級の担任から次のように言われました。

「大切なのは、誰かに助けを求められること。何でも自分一人の力でできるようにならなくてもいいです。財布を広げて『僕はお金が分からないので取ってください』と言えば、店の人が助けてくれる。できる人に頼ることも自立の形です」

 息子は現在19歳ですが、計算はできません。しかし、一人で買い物をし、切符を買い、外食をすることもできます。なぜそれができるのかというと「僕は計算ができないので、このお財布から取ってください」とお店の人にお願いしているからです。親亡き後のことを考えると、誰かにSOSを出せる勇気を持たせたいので、これを続けさせています。

 障害がなくても、人には得意/不得意があります。何でも満遍なくオールマイティーな子に育てようとせず、できないときは誰かに頼る力を育てることが大切だと思います。

弱音を吐いてもいい

 いじめられたとき、先生に言いつけたり、親に訴えたりできる子どもは、周りの大人もそのSOSに気付くことができます。子どもの間でも、「あいつに言うと大人にチクられる(告げ口される)」となり、その後もいじめのターゲットになることは少ないといわれています。

 しかし、親から、「他人に頼ることや弱音を吐くことは悪いこと」とインプットされ過ぎている子どもは自分で抱え込み、親にも相談できず、悩み、苦しみ、周囲の子どもにも「あいつにやっても他言しない」と思われ、いじめがエスカレートしていくこともあります。

「訴えられない」子どもの中には、幼い頃から過度に、「人に迷惑をかけてはいけない」「弱音を吐いてはいけない」「誰かに頼ってはいけない」とインプットされ、「いじめを受けている自分をさらけ出すのは、恥ずかしいことだ」「親を落胆させてはならない」「心配をかけてはならない」と極端に思い込んでしまい、誰にも助けを求められずにいるケースもあるのです。

相手の「貢献意欲」満たすことも

 何でも自分一人の力でやり遂げるように育てられた子どもは「人に頼ることは恥ずかしい」と思うようになってしまうかもしれません。「できないことは誰かに助けてもらって生きる」、これも自立の形です。親はいつか、子どもとお別れする日がやってきます。いつまでも世話をしてやれないのですから、「他人に頼ること」は必要な力です。

 人には、誰しも貢献意欲があります。頼られた相手も、誰かの役に立つことで自身の承認欲求や自己肯定感を満たすことができます。そういう意味では、息子は“貢献”しているのかもしれません。そして、自身もこの経験を通して、人を助けてあげられる人になるかもしれません。

 助けてもらったときは「ありがとう」、迷惑をかけたときは「ごめんなさい」と言えればよいのです。過度な子育てポリシー、少し緩めてみませんか。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。著書は「1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ」「はずれ先生にあたったとき読む本」「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」など多数。ノンフィクション「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)。

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