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最多1万人の年末の風物詩 ベートーベン「第9」はなぜ大人数で合唱するのか

ベートーベンの「交響曲第9番」は年末の風物詩ですが、かなりの大人数で合唱します。なぜ、これほどの大人数で合唱するのでしょうか。

第9の演奏会(2016年1月、時事)
第9の演奏会(2016年1月、時事)

 年末になると、ベートーベンの「交響曲第9番」(第9)を耳にすることが多くなります。大人数で合唱する光景は圧巻ですが、合唱者は最も多いものだと1万人、その他にも、数千人、数百人単位で第9が歌われます。それにしてもなぜ、第9はこれほどの大人数で合唱するのでしょうか。公益社団法人日本オーケストラ連盟専務理事の吉井実行(さねゆき)さんに聞きました。

NHK交響楽団の演奏がきっかけ

Q.第9はいつから、年末の風物詩になったのですか。

吉井さん「第9が年末の風物詩になったのは、1950(昭和25)年ごろ、NHK交響楽団が演奏したのがきっかけです。第9の演奏会にお客が集まることが分かったことから、1955年ごろには、さまざまな楽団が演奏し始めました」

Q.なぜ、年末の風物詩になったのでしょうか。

吉井さん「第9の歌詞が『歓喜の歌』と呼ばれ、年末に歌うことがふさわしいとされたことや、曲調がにぎやかであったことが影響しています。また、楽団の収益的な事情も関係していたようです」

Q.収益的な事情とは、どういうことですか。

吉井さん「合唱団が第9を歌うようになると、楽団の演奏をバックに合唱したいという要望が増えます。合唱団はアマチュアの人が中心で、晴れの舞台を見ようと、合唱者の家族や友人も演奏を見に来ることから、入場券がよく売れます。

また、楽団は合唱団から出演料を得られることから、楽団員のボーナスを確保するためにも、年末に第9を数多く演奏するようになったようです。12月に何十回と第9を演奏する楽団もあります」

Q.なぜ、第9を大人数で合唱するのでしょうか。

吉井さん「第9は当初、50人くらいで合唱することが多かったようです。しかし、日本では、第9の演奏会場が大きくなるにつれ合唱者の数も増えました。声量をカバーするためです。プロの合唱者が100人で第9を歌う場合、アマチュアでは200人いないと同じ声量になりません」

Q.第9の合唱者の人数で最も多いのは何人ですか。

吉井さん「毎年、大阪城ホールで開かれる1万人の第九コンサートが、日本では最も多い人数だとされています。次に多いのが、両国国技館で行われる5000人です。これだけ多くの人に歌ってもらうのは、華やかさやイベント性を演出するためにほかなりません」

Q.大人数で第9を歌うのは、海外でも同様でしょうか。

吉井さん「第9を年末に歌うのは、基本的に日本だけの風習でした。海外では、第9は神聖な曲として認識されており、ほとんど歌われません。歌われる場合は、特別に喜ばしい出来事があったときだけです。例えば、ベルリンの壁が崩壊した年にドイツで歌われました。しかし、最近では、日本で年末に歌われるということが知られ、海外でも年末に歌う風潮が広がりつつあるそうです」

Q.大人数であればあるほど、合唱を合わせるのが大変ですね。

吉井さん「大変です。本番のかなり前から練習を行っています。本番までの流れは、まず、アマチュアを中心とした専門合唱団が組織されます。募集は夏になる前から始め、結団式を行い、8月くらいから合唱の練習を開始します。歌詞はドイツ語なので、振り仮名を打って覚えます。4カ月近い練習を行い、12月の本番で合唱を行った後、解団式を行って終了するという流れです」

Q.これから年末にかけて、第9を耳にする機会も増えそうです。どのような点を意識すると、これまでと違った第9を味わうことができますか。

吉井さん「第9は指揮者により演奏時間に多少の差がありますが、平均70分ぐらい楽曲です。そのうち、歌詞があり合唱する部分は、4楽章の10分だけなのです。よくテレビでは、合唱している部分のみが報道されるため、曲の最初から最後まで歌詞があると思われがちですが、実は違います。演奏会やテレビなどで第9を耳にする機会があれば、最初の合奏だけの部分を含め聴いてもらい、第9そのものを味わってほしいです」

(オトナンサー編集部)

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