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太っている女性は妊娠しにくい? 妊娠中のリスクやダイエットの可否は? 専門家に聞く

妊娠を望む女性の中には、自身の体重や体形を気にする人も少なくありません。妊娠と肥満の関係について、産婦人科医に聞きました。

妊娠と肥満の関係は?
妊娠と肥満の関係は?

「肥満体形だが妊活を始めたい」「妊娠する前にダイエットした方がよいのか悩む」。妊娠を望む女性の中には、自身の体重や体形について気にする人も少なくありません。肥満による母体や胎児への影響に不安の声がある一方、妊娠前は平均的な体重であっても、妊娠後の「食べづわり」によって大幅に体重が増え、妊婦健診時に指摘されるケースもあるようです。

 ネット上では「肥満体形だと、赤ちゃんも太りやすくなるのかな」「肥満と不妊の関係が知りたい」「妊活前のダイエットはむしろ体によくないのでは」など、さまざまな疑問の声があります。妊娠と肥満の関係について、産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

肥満だと妊娠糖尿病や妊娠高血圧のリスク

Q.肥満体形の女性が妊娠した場合、どのような影響やリスクが考えられますか。

尾西さん「妊娠前の時点から肥満体形の女性(BMI25以上)が妊娠した場合、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症、巨大児、また出産時に帝王切開になる確率が高くなることが分かっています。こうしたリスクは、妊娠中の体重増加よりも妊娠前の体重の方が強く影響するともいわれています」

Q.妊娠後の「食べづわり」によって大幅に体重が増えるケースではどうでしょうか。

尾西さん「妊娠中、何か口や胃に物が入っていないと吐き気が出てしまう状態を一般的に『食べづわり』と呼びます。つわりの時期には限りがあるので、食べづわりによって食べ過ぎてもそこまで心配する必要はありませんが、時期が終わっても妊娠中はおなかがすきがちです。その食欲に任せて食べていると体重が増加し続けることになるので、食べづわりの“その後”に注意しましょう」

Q.「太り過ぎていると妊娠しにくい」のは事実でしょうか。

尾西さん「事実です。標準体重の1.2倍以上になると、不妊症のリスクが2.1倍になるという報告があります。原因はさまざまですが、肥満の人は脂質代謝異常や糖代謝異常をきたし、排卵しにくくなることや、肥満の人の中には『多嚢胞(たのうほう)性卵巣』という排卵しにくい体質を合併しているケースがあること、また、肥満細胞から出るエストロゲンが過剰になることなどが挙げられます」

Q.肥満体形の女性が妊娠を望む際、妊娠前にダイエットを行った方がよいのでしょうか。それとも、肥満体形のままで妊活をスタートしてもよいでしょうか。

尾西さん「肥満の程度にもよりますが、やはり肥満の場合は妊娠中、さまざまな母児のリスクが上がるため、基本的に妊娠前のダイエットをおすすめします。肥満の人の中でも運動習慣のない人や、もともと食べ過ぎてしまう傾向の人の場合、妊娠中の休職やホルモンの関係で、おなかがすくとつい食べてしまい、気が付くと体重が増加しているということになりやすいです。そうした意味でも、妊娠前に正しい生活習慣を身に付けておくとよいと思います」

Q.妊娠前のダイエットにリスクはないのでしょうか。

尾西さん「標準体重の85%以下となった場合、不妊のリスクは4.7倍になるともいわれており、痩せ過ぎもまた不妊のリスクが大きいので、ダイエットをする場合も要注意です。まずは自分の適正体重を知り、その範囲に入るように心掛けましょう。また、急激なダイエットによって一時的に排卵が止まってしまうこともあるので、急な減量はNGです。1カ月の減量は3キロ未満にとどめましょう。理想は1~2キロのペースです」

Q.肥満体形の女性が妊娠・出産した場合、生まれた赤ちゃんは太りやすい体質になるのでしょうか。

尾西さん「遺伝的な要因や体質は親から受け継ぐものなので、太りやすい体質になる場合もありますが、例えば、ご主人が痩せている場合はそちらに似ることもあるため、必ずしもというわけではありません。むしろ、最近、妊娠前に痩せ過ぎていた女性から生まれた赤ちゃんが将来、肥満や糖尿病などの生活習慣病の発症リスクが高くなることが分かってきており、産婦人科学会の中でも注目されています」

Q.妊活中や妊娠中の体重管理に悩む女性へ、アドバイスをお願いします。

尾西さん「妊活・妊娠中の体重管理は思ったより大変に思う人もいると思います。ただ、これは自分と赤ちゃんの健康のためです。肥満と痩せ過ぎはどちらも、妊娠しづらかったり、赤ちゃんに問題が出たりする場合があるので、妊活を始める際はまず適正体重になるよう心掛けましょう。食習慣と運動習慣を見直すことが基本ですが妊活・妊娠中の場合、偏った食事制限は禁物です。バランスのよい食事を意識しましょう。

また、毎日体重計に乗ると一喜一憂し、ストレスで余計に食べてしまう…といったこともあるので、1週間に1~2回のペースで量りながら無理なく行っていきましょう」

(オトナンサー編集部)

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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