道端アンジェリカさん夫逮捕…犯罪現場への「同席」は罪に問われうる? 共犯の要件とは?
家族や知人の犯行現場に同席してしまった場合、たとえ犯罪の意図がなかったとしても、それだけで罪に問われてしまうのでしょうか。
先日、モデルの道端アンジェリカさんの夫が道端さんの知人男性に対し、「おまえの家族をめちゃくちゃにしてやる。うそをついたら鉛筆で目を刺す」などと脅し、現金35万円を口座に振り込ませた疑いで逮捕されたとの報道がありました。事件当時、道端さんも同席していたということですが、家族や知人の犯罪現場に同席した場合、何らかの罪に問われる可能性はあるのでしょうか。グラディアトル法律事務所の北川雄士弁護士に聞きました。
「共犯」の3類型とは?
Q.家族や知人が罪を犯したときにその場に同席していた場合、それだけで何らかの罪に問われることはあるのでしょうか。「共犯」と見なされる基準は。
北川さん「『共犯』とは、基本的に『共同正犯(刑法60条)』『教唆犯(刑法61条1項)』『ほう助犯(刑法62条1項)』の3種類からなります。共同正犯は『犯罪を一緒にする』、教唆犯は『犯罪をそそのかす』、ほう助犯は『犯罪を手助けする』とそれぞれイメージしていただければと思います。すると、単に同席していたというだけでは3種類のいずれかに当たるとはとは考えづらく、何らかの罪に問われる可能性は低いと思われます」
Q.道端さんは「私が知人の男性と体を密着させ飲酒していたことを夫が疑い、そのことで夫がお相手の方を責めた結果、なされたものでした」「私が夫の発言の現場に居合わせねばならないような状況をつくり出してしまったことに対しても、深く反省しております」などとコメントを発表しています。あくまで想像ですが、もし夫に脅されて被害者の職場に一緒に押し掛けた場合、あるいは夫を止めようと現場に同席した場合、それぞれ罪に問われるのでしょうか。
北川さん「夫に脅されて一緒に押しかけた場合も、夫の犯行を手助けしたなどと判断されるような、いずれかの類型にあたる行為がある場合、共犯として処罰される可能性があります。ただし、夫の脅しの具体的態様などから、自らの身を守るためにやむを得ない行為であったと認められるならば、緊急避難(刑法37条1項)などにより処罰を免れる可能性があります。
一方で、夫を止めようとしていた場合については、先ほど述べた3種類のいずれにもあたらないと思われますので、何らかの罪に問われる可能性はほとんどないと思います」
Q.今後も、道端さんが罪に問われる可能性はないということでしょうか。
北川さん「もし、道端さんが夫の逮捕容疑事実について事前に夫と共謀を行っていた、もしくは、犯行時に一緒になって相手を脅していたなどの新事実が出てくるならばともかく、現時点で報道されている内容からは、何かしらの罪に問われる可能性は低いと思われます」
Q.犯罪を意図していないにもかかわらず、警察から加害者側と見なされた場合、どのように対応すればいいのでしょうか。
北川さん「事実と違う部分については絶対に認めないでください。現在でも時々耳にしますが、警察官が『初犯だし、素直に認めれば不起訴にしてやるぞ』などと言い、事実と違う調書に署名押印を求めてくることがあります。しかし、起訴をして刑事裁判にするか、不起訴にするかを決定できるのは検察官だけであり、警察官には一切その権限がありません。
そのため、いくら『警察官に不起訴にすると言われた』と言っても、検察官が起訴をすると決めてしまえば警察官にその判断を覆す権限は一切なく、結果として、ただ犯行を認めた調書だけが残り、裁判となってしまいます。この場合、警察の違法な取り調べによって事実と違う調書が作成されたなどと裁判で争うことになりますが、すでに犯行を認めた調書があるとその後、実際には違うと主張しても覆すのは非常に大変です」
Q.調書に署名押印をすることは、法律で義務付けられているのでしょうか。
北川さん「そもそも、義務ではありません。何を言われても、事実と違う調書にサインをしないようにしましょう。そして、逮捕された場合は『当番弁護士』制度という、1回だけ無料で弁護士を呼べる制度もありますので、警察官に当番弁護士を呼んでほしいと早急に伝えてください」
(オトナンサー編集部)
コメント