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オダギリジョー、長編映画初監督に「大きな責任」 続けるなら「オリジナルにこだわる」

「ある船頭の話」で長編映画初監督を務めたオダギリジョーさんに、船頭をテーマに選んだ理由や完成したときの感想、監督への再挑戦について聞きました。

オダギリジョーさん
オダギリジョーさん

 俳優・オダギリジョーさんの長編映画初監督作品となる「ある船頭の話」。同作は、村と町をつなぐため船頭を続けるトイチ(柄本明さん)は、村人の源三(村上虹郎さん)が遊びに来る以外は黙々と渡し舟をこぐ毎日を送っています。ある日、トイチの前に1人の少女(川島鈴遥さん)が現れたことでトイチの人生が大きく変わっていく…オダギリさんが脚本を書き下ろしたオリジナルストーリーです。

 オトナンサー編集部では、オダギリさんにインタビューを実施。船頭をテーマに選んだ理由や完成したときの感想、監督への再挑戦について聞きました。

効率重視の現代社会で消えゆくもの

Q.映画の題材に船頭を選んだ理由は。

オダギリさん(以下敬称略)「便利さや効率ばかりが重視される今の社会の仕組みの中では、価値がないと判断されてしまうとそれが美しい文化であっても消されていく、その一つの例が船頭でした。伝統芸能もそうだし、文明の発展の陰で自然も破壊され、いろいろなものが消えていったんだろうと思います。その消えゆくものの象徴として船頭を選びました」

Q.船頭さんとお話をされる機会はありましたか。

オダギリ「船頭の方に取材をお願いして2週間くらい生活を共にしました。舟に乗るお客さんには必ず理由があるんだろうし、船頭とお客さんの間で生まれるコミュニケーションを考えると、ものすごくミニマムなところにもドラマがあるんだろうなと思いました。そこに目を向けると、エンターテインメントとは違う、しっかりとした人間ドラマが描けるのではと思いました」

Q.船頭さんとの生活で引っかかったものはありましたか。

オダギリ「テレビで最初に船頭さんを見たのは、和服の女性を舟に乗せ送っている姿で、すごくきれいな印象を受けました。その方は一日中、お客さんを待っているんですが、本当に1日1人乗せるかどうかです。それでも、ひねくれることなくお客さんを送って、『誰かの役に立っていることがうれしい』と素朴に言えるところに何か引っかかるものがあり、そういった心情を脚本に反映しました」

Q.作品が完成したときの率直な感想は。

オダギリ「撮影現場では、自分の書いた脚本のイメージを映像化する難しさに日々追われていましたし、自然や動物など、こちらの思う通りにいかない相手にストレスを抱えていく日々でした。そして、撮影が終わると、その穴を埋めるように編集でどうにかしなければと思っていましたし、長い時間をかけて細かく編集で可能性を探り、ベストな形を模索していきました。

もちろん、最初に台本を書いていた時に思い描いた作品とは違うものが出来上がりましたが、その時にできることを精いっぱいやったつもりですし、逆に言うと、これ以上、手を尽くすことはなかったとも言えると思います。編集しながら100回以上見ているので、正直見飽きている部分もありますし、何が正解なのかも分からなくなる瞬間もあります。

ただ、映画づくりとは、そんな終わりのない作業なんだと思います。どこかで終止符を打たないと完成できないものなのでしょう」

Q.長編映画の監督をされてみて、新たな体験はありましたか。

オダギリ「どの職業も苦しいじゃないですか。楽しいことだけではありません。映画を背負うのはかなり大きな責任だと思います。監督という新しいものに飛び込みましたが、だからと言って、これから映画監督と名乗るつもりはありませんし、続けていくかどうかも分かりません。

自分が映画を作るなら、原作ものではなく、絶対的にオリジナルにこだわっていきたいですし、ゼロから作り上げる作業は時間がかかることなので、いつになるかも分かりません。その間に面白いことが見つかれば、そっちに行っちゃうこともあるでしょう(笑)」

Q.ちょっと苦しいのがお好きですよね。

オダギリ「ものづくりって、楽しく作ってもしょうがない部分があるんですよね。ハッピーな気持ちでものを作る人もいるだろうけど、僕はそのタイプじゃないです。苦しい中で見つかるちょっとした光の方が、楽しい中で生まれた大きく輝いているものよりもきれいに見えます」

Q.脚本がまだ残っているとのことですが、また監督に挑戦したいですか。

オダギリ「まずはじめに、映画には、エンターテインメントなものと作家性やアート性を追ったものの2種類があるとして、僕にはエンターテインメント映画を作る才能はないので、それは得意とする監督が作るべきなんだろうと思います。自分には自分にしかやれないことがあると信じているので、そういう方向を突き詰めるべきなのかなと思います。

自分が描きたものがないのに監督をすることは不可能だし、残っている脚本も10年前に書いたものなので、今これを撮りたいかと言われると疑問です。質問の答えとしては、いつか描きたいものが出てくれば、またやりたくなるんでしょうね」

Q.リフレッシュするためにしていることはありますか。

オダギリ「この作品を書いていた時、同時に2本の作品を書いていたんです。まったく違う作品を同時に進めていくことで、リフレッシュしながらお互いに良い刺激になっていたと思うので、そんな形のリフレッシュの仕方はありますね。役者の仕事でも複数本同時に撮影したりすることもあるんですが、いい切り替えになっていると思います」

 映画「ある船頭の話」は9月13日から全国公開。

(オトナンサー編集部)

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