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十五夜にお供えする「月見団子」、ピラミッド状に盛る意味は? お月見の正式な作法って?

十五夜に、月に向かってお供えする「月見団子」は一般的に、ピラミッド状に団子を盛ります。これには、どのような意味があるのでしょうか。

月見団子はなぜピラミッド状に?
月見団子はなぜピラミッド状に?

 きょう9月13日は十五夜。ススキと共にお月見に供える風習があるのが「月見団子」ですが、一般的にピラミッド状に盛り付け、月に向かってお供えします。お皿などに普通に盛ってお供えすればよいものを、わざわざひと手間かけてピラミッド状に団子を盛ることに、どのような意味があるのでしょうか。和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに聞きました。

秋の収穫に対する感謝

Q.十五夜にお月見をする風習は、いつごろから始まったのですか。

齊木さん「十五夜にお月見をする風習は、秋の満月を愛(め)でる中国のお祝い『中秋節』に由来し、日本には平安時代に伝わったとされています。貴族は、欠けても満ちる月を『生』『不死』の象徴として、月を見ながら酒を酌み交わし、詩歌や管弦に親しみました。

そして、江戸時代になると、秋の収穫に感謝する収穫祭として庶民にも親しまれるようになりました。欠けたところのない満月を豊穣(ほうじょう)の象徴とし、秋の収穫に感謝を込めてススキや月見団子を供え、月に向かって感謝の祈りをささげるようになったのです」

Q.十五夜の満月にススキや月見団子をお供えするのは、秋の収穫に感謝する意味だったのですね。

齊木さん「古くから、ススキは茎の内部が空洞であり、『神様の宿り場』と考えられていました。また、ススキの鋭い切り口は、魔よけになるとも考えられていました。ススキを供えることには、悪霊や災いなどから収穫物を守り、翌年の豊作を願う意味が込められています。

一方、月見団子は、十五夜の時期が穀物(お米)の収穫時期に重なるため、お米が無事収穫できたことに感謝するとともに、翌年の豊作を祈願する意味で、米粉で月に見立てた団子を作って供えたものです。月神である『月読命(つくよみのみこと)』が農耕の神でもあったため、月に向かってお供えをしたともいわれています」

Q.月見団子をピラミッド状に盛るのには、どのような意味があるのですか。

齊木さん「月見以外でも昔から、団子を空に向かってピラミッド状に高く積み上げたり、つるしたりすると、その先端から『霊界』に通ずると考えられてきました。十五夜では、月見団子を空に向かって高く積み上げることで、収穫の感謝や祈願の気持ちを月まで届かせようという意味が込められています」

Q.月見団子をピラミッド状に盛らない地域もあるのでしょうか。

齊木さん「関東では、一般的に丸形のお団子をピラミッド状にしてお供えします。しかし、地域によってはピラミッド状にしないところもあります。それは、お団子でも地域によってさまざまなお団子を供えるからです。

例えば、関西では細切りの餅に餡(あん)を巻いたものが用いられます。名古屋では『しずく形』で白色やピンク、茶色の団子を供えます。岡山では串に刺した『三色団子』や『きび団子』、高知県では『みたらし団子』を供え、これらの地域では一般的にピラミッド状にはしません」

Q.なぜ、ピラミッド状に盛らないのですか。

齊木さん「素材や形状によっては、物理的にピラミッドにできないからです。また、十五夜は別名『芋名月』と呼ばれることもあり、そのように呼ぶ地域では、収穫した芋に見立てて団子を供えるなど、地域によって感謝の表現が異なることが理由と考えられます」

Q.十五夜のお月見をするときに、何となくススキと月見団子を供え、月を見て終わるという人が多いと思います。十五夜のお月見の正式な作法はあるのでしょうか。

齊木さん「秋の収穫への祈りと感謝を込めて月を愛でるのが本来の主旨です。まず、縁側など、お月さまが見える所にススキや月見団子、収穫した野菜や果物といったお供えものを準備します。お月さまから見て、左側にススキ、右側に月見団子を並べます。お団子の台として三方(さんぼう)を使うときは、半紙を敷いて団子を盛り、穴の開いていない面をお月さまに向けます。三方がない場合は半紙を敷いた器に盛りましょう。

こうしてお供えものをした後は、下ろしてみんなで分け合って食べるのが正式な作法です。神様へのお供えものは御利益があるとされ、食べることで健康と幸せが得られるとされています。また、地域によっては団子を多く盗まれた方が縁起がいいとされ、縁側にお供えした月見団子を子どもたちが盗み食いをする風習がある地域もあります。

空気の澄んだ秋の夜に明るく照らす月は、昔の人にとっても、かけがえのない神秘的なものだったのかもしれません。先人が願った美しい風習に、今年の収穫を感謝しながら月を愛でてみてはいかがでしょうか」

(オトナンサー編集部)

齊木由香(さいき・ゆか)

日本礼法教授、和文化研究家、着付師

旧酒蔵家出身で、幼少期から「新年のあいさつ」などの年間行事で和装を着用し、着物に親しむ。大妻女子大学で着物を生地から製作するなど、日本文化における衣食住について研究。2002年に芸能プロダクションによる約4000人のオーディションを勝ち抜き、テレビドラマやCM、映画などに多数出演。ドラマで和装を着用した経験を生かし“魅せる着物”を提案する。保有資格は「民族衣装文化普及協会認定着物着付師範」「日本礼法教授」「食生活アドバイザー」「秘書検定1級」「英語検定2級」など。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yukasaiki)。

コメント

1件のコメント

  1. 皆さん十五夜に備えるのは月見団子と言いますが実は古事記を紐解きますとその正体がわかります。里芋を茹でて潰し丸く団子にして供えた物を月見団子と言います。供え終わったらこの団子に甘味噌をつけて下がりものとしていただくのです。現代の様に上新粉や餅粉で作る団子は宮中であっても高価で使いませんでした。現代人の食文化は古の人々が観たらびっくりする様な多彩で華美な食文化です。悪く言えば現代人は素材の本当の味覚を知らないという事です。月見は観月会と言います。京都の古刹の寺には観月台と言われる月見台を庭に造作してある寺院もあります。