「飼い主の自己満足」と批判も 犬のおしっこ後、電柱に水をかける行為に意味はある?
犬が電柱などにおしっこをした後、持参した水をかけている飼い主がいますが、これにネット上で批判の声が出ています。

住宅街で犬を散歩させている人の中で、片手でリードを持ち、もう一方の手にペットボトルを握っている人がいます。500ミリリットル入りサイズのペットボトルに水を入れ、犬が電柱などにおしっこをした後、その水をかけているようなのですが、これについてネット上では「ちょろっと水をかけて、掃除したつもり?」「飼い主の自己満足」といった批判の声も見られます。犬の尿については、「道路標識が倒れた原因とみられる」という報道もあります。
犬がおしっこをした後、電柱に水をかける行為に意味はあるのでしょうか。獣医師の増田国充さんに聞きました。
アンモニアは金属を腐敗させる
Q.そもそも、犬がおしっこをかける行為の意味は何でしょうか。「縄張りの主張」と聞いたことがありますが、違うという意見もあるようです。
増田さん「主に、オス犬がおしっこをかける行為をしていますが、この行為を『マーキング』といいます。マーキングとは、一種の縄張りのアピールとして行っているものといわれています。確かにこれが主な目的なのですが、それ以外の理由として、犬社会のコミュニケーションの一部、あいさつのような意味合いがあるともいわれます。
一方、未去勢のオスの場合、尿中に男性ホルモンが含まれることがあり、メス犬に対するアピールをしているという説や、犬自身の精神を落ち着かせる意味合いがあるという説など複数の要因があると考えられています」
Q.犬の尿の成分はオスとメスで違いますか。また、散歩中の回数に違いはあるのでしょうか。
増田さん「性別によって、尿そのものの成分が大きく変化することはあまりないと考えられます。差が出るとすると、未去勢あるいは未避妊の場合、オスでは男性ホルモンの混入、メスでは発情時に出血が混じることがあります。排尿回数に性別差はありませんが、膀胱(ぼうこう)炎をはじめとした泌尿器のトラブルが原因で、排尿の回数や尿の臭いに変化が出る場合があります」
Q.犬を散歩させている人が水を入れたペットボトルを持っている場合、何に使うのでしょうか。
増田さん「確かに、犬の散歩の際に水を持ち歩いている人は多いです。犬がおしっこをしたところに、水をかけることに使用しているようです」
Q.電柱や道路標識など、おしっこをしたところに水をかけることで、消臭などの効果はあるのでしょうか。「水をかけても広がるだけでは」との声もあります。
増田さん「飼い主としては、マナーやエチケットとして配慮して水をかけていると思われます。犬を飼っていない人からは、『尿を拡散しているだけなのでは?』と思われてしまっているようですが、尿の臭いは、人間の感じるレベルではかなり軽減できていると思います」
Q.道路標識の根元が腐食して倒れ、その原因が犬の尿とみられている事例があります。犬の尿の成分がどのように作用して、標識が倒れるのでしょうか。
増田さん「犬の尿には、アンモニアをはじめ、金属を腐食させる成分が含まれています。犬の習性として、同じ箇所に何度もおしっこをかけることがあり、標識の根元に尿の成分が集中して金属の腐食を招いたものと考えられます。複数の犬の尿に常時さらされたり、さらに尿の水分が蒸発し濃縮されたりした可能性もあります。
一方で、尿の酸とアルカリのバランスも関係しているといわれます。犬の尿はやや酸性傾向にあり、短期間では金属に大きな影響を与えなくとも、長期にわたる刺激で徐々に劣化していった可能性もあります。飼い主が水をかける意味として、先ほど述べた臭い消しなどに加え、尿の濃縮を防ぐ意味もあると思います」
Q.犬の散歩について、飼い主が注意すべきこと、心掛けるべきことを教えてください。
増田さん「世の中には犬が好きな人、そうでない人がいるということを双方がよく理解していくことが大事ではないかと思います。互いを思いやる心が一番重要ということをまず念頭におきましょう。
その上で、飼い主は必ずしも『散歩=トイレ』ではないことを踏まえて行動しましょう。普段生活している場で排せつがしっかり行える所を確保すること、屋外でやみくもにマーキングをさせないよう配慮をすること、マーキングをしたところはできるだけ臭いを防ぎ、尿が濃縮しないよう水で流すことを心掛けましょう」
(オトナンサー編集部)
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