隣家の「木の枝」が成長して越境…勝手に切ったら、法的責任を問われる?
木の枝で屋根や外壁が傷ついたら?
Q.入り込んできた木の枝に当たってけがをしたり、屋根や外壁が傷ついたりした場合、隣家に損害賠償を請求できるのでしょうか。
牧野さん「『土地の工作物等の占有者および所有者の責任』(民法717条)に基づき、隣家の瑕疵(かし)と損害の発生、それらの間の因果関係を証明できれば賠償を請求できます。特に、損害の可能性を伝えたにもかかわらず対応を怠っていた場合、請求できる可能性が高まるでしょう」
Q.枝についた虫が家に入り込んで不快な思いをした場合、慰謝料を請求できるでしょうか。
牧野さん「枝についた虫が、民法717条の『工作物等の瑕疵』といえて、かつ、損害の発生と、当該瑕疵と損害の間の因果関係を証明することができれば、損害賠償請求できる可能性があります。ただし、証明が難しい場合が多いので、現実には難しいケースが多いでしょう」
Q.話が変わりますが、市道や県道に枝がはみ出して車や歩行者の通行に差し支える場合、どう対応すればよいのでしょうか。
牧野さん「私有地からはみ出した木の枝の所有権は土地所有者にありますが、枝が通行の妨げになる場合、道路法43条(道路に関する禁止行為)2の『みだりに道路に土石、竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造または交通に支障を及ぼすおそれのある行為をすること』に当たる可能性があります。あまりに危険な場合は、市や県に通報して行政指導や命令を出してもらうことができるでしょう。
また、はみ出している枝などで事故やけがをした場合、被害者はその所有者・占有者(賃借人など)に損害賠償を請求できる可能性があります(民法717条)」
Q.木の枝を巡るトラブルについて、過去の事例・判例はありますか。
牧野さん「裁判例(新潟地裁判決1964年12月22日)では、枝の越境により枝の切除を請求できる要件として、単に枝が越境しているだけではなく、枝の越境により落葉被害が生じている、あるいは生じる恐れがあるなど、何らかの被害を被っていたり、被る恐れがあったりすることを求めています。木の枝を巡るトラブルは、まず話し合いですが、話し合いで解決できない場合、民事調停などの法的手続きを取ることになるでしょう」
(オトナンサー編集部)

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