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ファストフード店で見かける「外国人アルバイト」、カフェチェーンにはなぜいない?

大都市圏のファストフード店では、外国人アルバイト店員を必ずといってよいほど見かけますが、カフェチェーン店ではほとんど見かけません。なぜなのでしょうか。

カフェチェーン店のアルバイトに外国人が少ない理由は?
カフェチェーン店のアルバイトに外国人が少ない理由は?

 大都市圏のファストフード店に入ると、外国人のアルバイト店員を必ずといってよいほど見かけます。一方で、カフェチェーン店ではほとんど見かけません。「タリーズ」など複数のカフェチェーン店運営会社に聞くと、全アルバイトに占める外国人の割合はほとんどが10%未満でした。ファストフード、カフェチェーンとも人手不足で、適任なら国籍に関係なくアルバイト店員を採用したいはずですが、なぜ、カフェチェーンでは外国人が少ないのでしょうか。飲食店コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

大きな要因は「仕事内容」「福利厚生」

Q.現在、飲食店アルバイトの求人倍率はどれくらいですか。

成田さん「国の統計では、最新のアルバイト有効求人倍率は1.81倍です。特に大都市圏で、2.00~2.15倍と高くなっています。中でも飲食店は際立っており、ホールスタッフでは7.46倍でした。これは、1人の人材を7~8店舗で取り合っている数字です」

Q.ファストフード店では外国人アルバイトが多いですが、カフェチェーン店ではほとんど見かけません。カフェチェーン店を運営する各社は「日本人ではないから採用しないわけでは決してない」としていますが、この違いが生じる理由は。

成田さん「いくつかの要因が挙げられますが、大学生や外国人留学生が多いアルバイトに限れば、大きな要因は2つあると考えます。ずばり、仕事内容と福利厚生です。まず、飲食店の仕事は大きく分けて調理と接客になります。食事メニューが主体のファストフード店では、調理担当と接客・ドリンク担当に作業分担が可能ですが、ドリンクメニュー主体のカフェチェーン店では、基本的に同じ店員が全てを行わなければなりません。

私が担当している店舗の外国人の話でもそうでしたが、アルバイトを探す上で、カフェチェーン店の方が『仕事が大変』『個々の責任が重い』というイメージがあったそうです。日本語を日本人並みに使えないうちは、特に接客が不安だったそうです。また、福利厚生の賄い補助も大きな要因です。ドリンク補助ではなく、食事の補助がしっかりしていそうなファストフード店の求人は人気があります」

Q.確かに「タリーズ」の広報担当者によると、外国人の応募がそもそも少ないそうです。「店舗での作業は自動化が難しく複雑で、覚えるメニューも多いことから敬遠されているのかもしれない」と仮説を立てていました。

成田さん「やはり外国人、特に日本にまだなじみ切れていない外国人は、カフェチェーン店でのアルバイトはハードルが高いと感じるでしょう。タリーズさんもおっしゃる通り、複雑な仕事内容は敬遠材料になります。さらには、文化のギャップもあり、日本のマニュアル化された接客はハードルが高いと思います。

例えば、身だしなみや衛生に対する強い意識は、外国人には理解しにくいですし、外国人から見ると、日本の『おもてなし文化』は独特の文化だそうです。『スタッフと客は対等な立場』というスタンスの国も多く、笑顔でお客さまを迎えられない店員もよく見かけます」

Q.カフェでのアルバイトはおしゃれなイメージがあり、日本人の若者に人気があるように思います。相対的に日本人の若者の応募が多いことが、カフェの外国人アルバイト店員が少ない要因とはいえませんか。

成田さん「それもあると思います。今、飲食業は『仕事が大変』『給料が安い』などの理由で、日本人の若者から敬遠傾向にあります。特に、昨今のSNS投稿ブームで、『おしゃれであるか』『自慢できるか』『キラキラ感があるか』が、アルバイトを選ぶ基準になっています。そのため、カフェチェーン店に日本人大学生が多く集まることとなり、結果的にカフェチェーン店運営会社の外国人獲得に向けたアピールが、少なくなってしまっているような気がします」

Q.日本人が飲食業界のアルバイトを敬遠する傾向は、今後もますます強まりそうでしょうか。カフェチェーン店でも、外国人アルバイト店員が増える可能性がありますか。

成田さん「もうしばらくは、日本人が飲食業界のアルバイトを敬遠する傾向は続くと考えます。そして今後、飲食業界は人工知能(AI)によるオートマチック化も加速し、今よりもさらに人員の削減が行われると思います。

飲食店の本質は『食べる』だけではなく、『癒やし』や『元気』を提供する場所です。AIでは不可能なコミュニケーション力が必要な接客業は、最後まで生身の人の労働力を必要とする職業の一つだと考えます。その点では、外国人かどうかを問わず能力次第と考えます」

Q.外国人アルバイト店員は日本語能力もさまざまで、文化や風習、価値観も日本人とは異なります。そのため、注文時や提供時に違和感が生じることもあります。客側は、今後も増えるであろう外国人アルバイト店員に、どのようなことを心がけて接したらよいですか。

成田さん「文化の違いや慣習の違いはさまざまです。日本人店員とは少し異なる接客を受けたとき、『ここは日本だから日本の文化に従え』と言う人もいますが、もう時代遅れです。今後、日本人の労働力が減り、外国人労働者に頼らざるを得ない未来ももうすぐです。何事もグローバルな視野で、そして相手の気持ちになって接する心がけが必要と私は考えます」

(オトナンサー編集部)

成田良爾(なりた・りょうじ)

飲食店専門経営コンサルタント

ヴィガーコーポレーション代表取締役。厚生労働省公認レストランサービス技能士(国家資格)、文部科学省後援サービス接遇検定準1級、食生活アドバイザー2級、他。飲食業界25年以上。ミシュランガイド掲載の高級レストランから個人経営の小さな大衆店まで幅広いジャンルの飲食店に携わり、その経験に基づく統計解析および枠にとらわれないアイデアで多くの赤字店を黒字化させてきた実績を持つ。「100年続く店づくり」をモットーに、次世代育成や飲食業の働き方改革などにも力を入れており、食文化普及の他、職業訓練校講師(フードビジネス科)や子育て女性就職支援事業講師なども歴任。現在も多くの飲食店経営者のサポートを手掛ける。飲食店専門のコンサルティング「オフィスヴィガー」HP(http://with-vigor.com/)。

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