スマホで音楽は要注意! 適切な音量でもなる「ヘッドホン難聴」の症状と予防法
スマホにヘッドホンやイヤホンをつないで音楽を聴いている人を見かけますが、適切な音量でも、長時間継続すると難聴になるリスクがあります。

街中や電車内で、スマホにヘッドホンやイヤホンをつないで音楽を聴いている人をよく見かけます。周囲に音が漏れるような大音量で聴く人は、耳に悪影響がありそうだと容易に想像できますが、自分では適切な音量に調節したつもりでも、長時間継続して聴くことで難聴になる可能性があり、「ヘッドホン難聴」というそうです。どのような難聴なのか、耳鼻科医で川越耳科学クリニック院長の坂田英明さんに聞きました。
「騒音性難聴」の一種
Q.「ヘッドホン難聴」とは何ですか。
坂田さん「ヘッドホン難聴は、『騒音性難聴』あるいは『音響外傷』といわれるものの一種です。音響外傷でよく知られているのは、音楽のライブイベントなど密閉空間で突然大音量を聴くことで難聴になる『突発性難聴』ですが、ヘッドホンやイヤホンのように密閉された状態で長時間、音を聴くと難聴になることがあり、これがヘッドホン難聴です」
Q.症状を自覚しにくいそうですが、本当でしょうか。
坂田さん「本当です。ヘッドホン難聴では、高い声や電子音などの高周波の音が聴こえにくくなります。会話など日常生活で耳に入る音域は、中音域から低音域が中心のため、自分がヘッドホン難聴だと気付きにくいのです。
高い声や電子音などが聴きにくくなってきたら、難聴が始まっている可能性があり注意が必要です。本来、高周波の音が聴こえなくなるのは、60代から起こり始める『加齢性難聴』でよく見られる傾向ですが、ヘッドホンやイヤホンの影響で若者にも関係してきているのです」
Q.大音量でなく適切な音量であっても、ヘッドホンで継続して聴くことで難聴になるのはなぜですか。
坂田さん「音は空気中を振動という形で伝わり、障害物があると反射してさらに伝わります。トンネルの中で話したり大きな音を出したりすると、こだまして聞こえるのと同じ理屈です。イヤホンやヘッドホンで聞く場合、音の反射が多くなり、余計に内耳へ振動が伝わってしまいます。その結果、難聴を引き起こすことにつながるのです」
Q.どの程度の音量で、どのくらいの時間聴くと、ヘッドホン難聴になるのでしょうか。
坂田さん「それについては、明確なことは分かっていません。ただ、ヘッドホン難聴になりにくい音量は、一般的には機器の最大音量の60%以下といわれています」
Q.1日の合計では、どれくらいなら大丈夫ですか。
坂田さん「ヘッドホンで音楽を聴く時間は、1日で長くても1時間以内が理想です。50代以降の高年齢になるほど注意が必要ですが、若くても、カフェインの過剰摂取、有機溶剤を使用した毛染めの使用歴、喫煙、アレルギー体質、低血圧などの背景があると、ヘッドホン難聴になるリスクは高くなります」
Q.カフェインの過剰摂取や有機溶剤を使用した毛染め使用歴が、なぜヘッドホン難聴と関係するのですか。
坂田さん「カフェインを過剰摂取すると、神経の興奮を引き起こし、正常な細胞や遺伝子を攻撃する活性酸素が蓄積されます。そのため、ヘッドホンやイヤホンで音楽を聴いてダメージを受けた内耳の細胞の修復が遅くなり、結果的に聴力の回復が遅れるからです。また、有機溶剤は神経毒性がある物質が含まれており、難聴になるリスクが高まります」
Q.聴力が落ちると回復させるのは難しいと聞きます。予防するしかないようですが、どのような予防法がありますか。
坂田さん「加齢による聴力の低下はどうしようもありませんが、ヘッドホン難聴の予防は十分可能です。コーヒーや緑茶、紅茶などのカフェインを含む飲料は1日1杯程度にして過剰摂取しない、毛染めなどの有機溶剤は使わない、イヤホンやヘッドホンで音楽を聴くのを1日1時間以内にすることです。
また、顎関節が異常にガクガクする人、喫煙やアレルギー、メタボ、高血圧、低血圧がある人は、ヘッドホン難聴になる可能性が高まります。医師に相談し、十分コントロールするなどの注意が必要です」
(オトナンサー編集部)
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