「プロメア」脚本・中島かずきさんに聞く、松山ケンイチら俳優を起用した理由
「天元突破グレンラガン」などの脚本を手がけた中島かずきさんにインタビュー。最新作「プロメア」の企画の始まりなどを聞きました。

劇団☆新感線の座付き脚本家で、「天元突破グレンラガン」などのアニメ作品の脚本を手がけた中島かずきさんの最新作「プロメア」。同作は、突然変異で誕生した、炎を操る人種「バーニッシュ」の攻撃的なグループ「マッドバーニッシュ」のリーダー・リオ(早乙女太一さん)と対バーニッシュ用の高機動救命消防隊「バーニングレスキュー」の新人ガロ(松山ケンイチさん)がそれぞれの信念のためぶつかり合う、劇場オリジナルアニメ作品です。
オトナンサー編集部では、中島さんにインタビューを実施。同作の企画の始まりや俳優をメインキャストにした理由、脚本を書く際に重視していることなどを聞きました。
“炎”に対応するのは消防士という発想
Q.「プロメア」の企画は、いつから始まったのでしょうか。
中島さん(以下敬称略)「アニメ『キルラキル』が終わってからなので、もう4~5年前になります。『キルラキル』が終わった後、プロデューサーから『次もやりましょう。映画で』と言われ、今石洋之監督と映画で何ができるか相談しました」
Q.発火能力のアイデアは、どこから出てきたのでしょうか。
中島「元々のアイデアは炎生命体なんですよね。テッド・チャンの小説『あなたの人生の物語』を読んでいる時、コミュニケーションのやり方が違うと難しいよねと思っていて、もし炎が生きていたら、炎は燃やすことでコミュニケーションになるわけで、人間にしたら迷惑だよねという思いつきがスタートでした。
それまでも服に命があったんだから、次は炎か水じゃないかと(笑)そこから『バーニッシュ』というアイデアが生まれ、それに対応するのは消防士ということで今の形ができました」
Q.声優ではなく、松山ケンイチさん、早乙女太一さん、堺雅人さんを据えた理由は。
中島「映画なのでテレビシリーズとは違うことをやりたくて、書いている時からイメージがありました。松山くんと早乙女くんで書いていたドラマ『ふたがしら』が熱い男とクールな男なので、書きながらあの時のやり取りのようだと思いました。クレイに関しても、二面性を含めて堺さんでやったら面白いなと何となく思いました」
Q.松山さん、早乙女さん、堺さんに何か注文はされましたか。
中島「松山くんには、その前に新感線の『髑髏城の七人season風』で主役の捨之介をやってもらっていました。アフレコが始まる前に『べらんめえ調で、捨之介ですかね』と言われたので、『捨之介の名乗りの感じでやっていただければ』と話しました。
堺さんがどこまで張った声が出せるかなと思っていたら、予想の100倍上でした。舞台あいさつで、『声のレベル1~5まで用意していたら、収録の中盤で5を出せと言われ、そこから先は挑戦だと思いました』と言っていました(笑)クライマックスは3人でアフレコしていたので、新感線の舞台稽古みたいでした」
Q.今石監督との集大成のような作品でしょうか。
中島「集大成ですし、アニメ表現としては新しい一歩を踏み出していると思います。企画当初はジュブナイルをやろうと思っていました。その時は普段の手癖を抑えて、新しいものにチャレンジしようという思いが強かったのですが、行き詰まってしまって。そこで、リオとガロの年齢を上げて最初からぶつかり合う形に方向転換して。その時に、もう手癖は全部やろう、得意なものは全部盛り込んだ上で僕的な王道な話にしようと決めました。
その上で、今石監督がアニメ表現として新しいことにチャレンジするから、僕らのこれまでの作品の上を行く作品になっているだろうと感じています」
Q.物語を書く際に重視されているのは、熱でしょうか、疾走感でしょうか。
中島「よく熱いと言われるんですが、僕は熱いものを書こうと思ったことは一度もなくて。ただ、過剰が好きなんです。行き過ぎた人とか、極端な人が好きなんです。極端な人の行動や過剰なことを書いていると、熱さに見えるのかなと思います。自分としては、キャラクターの気持ちの流れと疾走感、セリフのテンポは気にします」
Q.お気に入りのシーンはどこでしょうか。
中島「リオが復活して向かっていく時、『許さん、許さんぞ、クレイ・フォーサイト』と言うシーンです。ずっと我慢してきた差別される側の人間が、大事なものを全部失って、反逆を開始するシチュエーションが子どもの頃から大好きだったので。あのシーン、脚本ではもう少し丁寧にじっくりやっていたんですね。破壊されたバーニッシュの村を歩きながら、リオはじわじわと怒りがこみ上げてくる。その怒りに呼応するように地下から炎が噴き出す。そのテンポのものも見てみたかった気がしますが、監督はちょっともたつくと判断したのかな。
さらに言えば、炎の龍と化したリオがクレイと正面対決しようとする時、横からバカが突っ込んできてチャラにする、そこまで含めて自分らしい展開で好きです」
映画「プロメア」は全国公開中。
(オトナンサー編集部)
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