「老後不安」でお金を使わない若者は人生で多くを失う、バランスを意識せよ
「将来が不安でお金を使うことができません」という若い女性からの相談が増えているようです。有意義にお金を使うコツを筆者が解説します。

「将来が不安でお金を使うことができません。貯蓄は増えているけれど、つまらない毎日で、このままでよいのでしょうか…」
給料が右肩上がりで伸びない中、税金や社会保険料の負担は増すばかり…加えて、少子高齢化も加速し、将来の年金に対する不安も強まっています。今のような先行き不透明な時代に生きているとつい「お金を使わずに少しでも貯蓄しよう」という思考になってしまう人も少なくないようで、実際、若い世代を中心にお金を使わない傾向にあるようです。貯蓄するのはよいことですが、同時に、お金をどう使うかを考えなければ人生を楽しめなくなってしまいます。不安を軽減し、有意義にお金を使うコツについて考えてみましょう。
お金を使えない原因は「老後不安」
ひと昔前に比べると、お金の相談にいらっしゃる人が増えましたが、特に最近増えてきたのが、20代女性からの相談です。20代というと、体力も気力も充実しているお年頃ですが、相談にいらっしゃる一番の理由が「老後不安」。「老後がとにかく不安、老後までにいくらためておけばよいか教えてほしい」と、切羽詰まった表情で聞いてくるのです。
そんな彼女たちの家計を見てみると、驚くほど無駄遣いがありません。食事は自炊と手作り弁当が基本。本も図書館でレンタルし、洋服や靴などは、フリーマーケットやネットオークションを上手に利用、買い物時に利用するとお得になるクーポンもフル活用し、堅実な生活を送っています。もちろん、毎月きちんと貯蓄している人がほとんどです。
これには、生きてきた時代背景も影響していると思います。現在の20代は生まれたときからデフレの状況にあり、景気の良い時期を知りません。少子高齢化が加速し、国も会社も余力が少なくなる中、将来に対しても明るいニュースがありません。この世代の人たちは総じて、「消費意欲が低い」「家計は堅実」「将来に対する不安が強い」という特徴があるのです。
不安は「見える化」によって解決できる
生きていく上で不安なことはいろいろありますが、その不安をきちんと「見える化」することができれば、多くの不安は和らぎます。前述のように、将来の老後不安からお金が使えなくなり、貯蓄に励んでいるという人は少なくありませんが、テレビや雑誌などのメディアが「老後は1億円必要!」などとあおることも、老後を極度に不安にしてしまっている要因でしょう。
確かに、1億円必要といわれれば、貯蓄が1000万円あっても不安でたまりませんよね。しかし、本当に老後1億円が必要なのでしょうか。現在の高齢者の収入と支出を参考に、老後までに必要なお金を計算してみましょう。今回は一生独身だと仮定して計算します。
総務省家計調査報告(2018年)によると、60歳以上の高齢単身無職世帯の収入は12万3000円。それに対して支出は16万2000円となっています。現在、女性の平均寿命は87.26歳。つまり、90歳まで生きることを仮定して計算しておく必要があります。これらを踏まえ、65歳までに備えておく老後のお金として、以下の計算式で算出します。
(毎月の生活費-もらえる年金)×12カ月×26年
(16万2000円-12万3000円)×12カ月×26年=約1217万円
また、高齢になると病気や介護が必要な状態になる可能性が高く、その準備資金として平均500万円程度必要なので、1217万円に500万円をプラスして「約1700万円程度」が必要ということに。ちなみに、この金額は持ち家を前提とした衣食住の基本生活にかかるお金です。
もちろん、少子高齢化の加速で将来の年金額が減額される可能性も大いにあります。準備しておきたい金額も今よりアップする可能性は高いのですが、それでも、1億円も必要ではないことが理解できたのではないでしょうか。
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